難しかった今回の話。正直に申しますと書かなければよかったと思っています。
ですが書いたのであれば、どういう捉え方をされようとも投稿しようと思った次第です。
番外編:大事な日
†††Sideフェイト†††
私たちが時空管理局本局へと来てから結構な時間が経った。
けどやることが多すぎて、時間はあっという間に過ぎ去ったと思う。
たった今も私とアルフは聴取を終えてルシルと合流するためにアースラのあるドックへと続く廊下を歩いてる最中で、私とアルフはルシルの姿を探す。
「お、ルシルを見つけたよフェイト」
「うん。ルシル」
「ああ、フェイト、アルフ、お疲れ様。聴取のほうはどうだった?
俺のほうとしてはなかなかの好感触だったけど」
ルシルは廊下に端に置かれてるベンチから立ち上がって、私たちのもとへと歩いてくる。
「うん、私たちのほうも、いいかな?って思うよ」
事情聴取の手応えとかの話をしながら歩き出してアースラへと向かう。
少ししてからアルフが私たちにある質問をしてきた。
「ねぇフェイト、ルシル。二人は裁判が終わったらどうするの?
やっぱりリンディの誘いを受けて管理局に入る?」
それは今後のこと。身寄りのない私とアルフは、生活する為にはそれも一つの選択肢だけど、将来のことなんてまだ分からない。
「そうだね、私はまだ決めてない、かな。しばらくは自由なままでいたいなと思うし、なのはたちにも会いに行きたいなとも思うし」
「俺もまだだな。けど、たぶん正式に入ることはないと思う。
ある程度は手伝うかもしれないが、完全には無理だろうな」
私は入るか入らないかはまだ決めてないと言ったけど、ルシルは正式な入局だけは無いって断言してしまった。
それはつまり、いつか離れ離れになる可能性もあるということ。
寂しいことだけど、いつまでもルシルに甘えるわけにはいかないから、無理に引きとめることは出来ない。
でもやっぱり悲しい。辛い。だからその辺りの話はまだ考えないでおくことにした。
†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††
アルフの質問に答えてからは会話も無く、俺とフェイトとアルフはアースラへと帰ってきた。
(正式な管理局員になる、か。それはまずありないことだ・・・)
いつ契約を終え、消えるかもしれないこの身体では組織に入ることは無理だろう。
「お、フェイトちゃん、ルシル君、アルフ。帰ってきたね」
アースラの通路を歩いて食堂前を通りかかった時、食堂からエプロン姿のエイミィが声をかけてきた。
俺たちは「ただいま」と告げ、エイミィも「おかえりー♪」と返してくれる。
エイミィの様子からして、どうやらこれから夕食の準備に入るようだ。
俺は「手伝おうか?」と言ってみたが、笑顔で休んでいるようにと返される。
「あ、そうそう。艦長がフェイトちゃんとルシル君にお話があるから、よかったら艦長室に来て、だってさ」
俺とフェイトに話? 今後のことについてだろうか?
それならフェイトだけでも・・・・とはいかないか。
俺も身寄りのない身だから、その辺の話をされそうだ。
「本当? じゃあこれから向かうよ。お茶淹れて持っていったほうがいいかな?」
「うん、ありがとう。給湯室にコーヒー淹れてあるから、持って行ってね」
「ああそれなら俺が持っていくから、先に行っていてくれるかフェイト」
「え、私も手伝うよ。だから一緒に行こう?」
そして俺たちはエイミィと散歩に行くと言うアルフと別れて、リンディ艦長の待つ艦長室へと向かう。
†††Sideルシリオン⇒フェイト†††
私とルシルはコーヒーを運びながら艦長室へと入る。
そこには椅子に座って何らかのデータを処理しているリンディ提督がいた。
「リンディ提督、失礼します」
「失礼します。お待たせしてすいませんでしたリンディ艦長」
私たちはそう声をかける。
私たちに気付いたリンディ提督は椅子から立ち上がって、私たちに来てくれたことやお茶を持ってきてくれたことへの感謝を告げる。
「ありがとう、フェイトさん、ルシリオン君。これね、なのはさん家のお店で出してるコーヒーなんですって。
なのはさんのお母さんから貰ったの」
「そうなんですか」
私はそう相槌をうって、私たちが持ってきたコーヒーに目を向ける。
そっか、なのはのお母さんが。
私も今までに何度か飲んだことがあるけど、すごく美味しいものだとは思っていたし、ルシルもそれを初めて飲んだとき「うまっ!!」って驚いていた。
リンディ提督に座るように勧められたから、ルシルと二人で「失礼します」と言って、対面式のソファに先に座ったリンディ提督と向かい合うように座った。
「それでリンディ艦長。俺たちに話しとは何でしょうか?」
ルシルがそう切り出したことでリンディ提督のお話が始まった。
まずはこの頃きちんとリンディ提督とお話が出来ないことへの謝罪。
けどそれは、あの事件の事後処理の所為だってわかっているから文句はない。
そしてなのはたちとのビデオメールの件。それもまた仕方がないこと。
私たちはあの事件の関係者だから、リアルタイムでの通信はできないことになっている。
それなのにリンディ提督はビデオメールという形で、なのはたちとやり取りができるようにしてくれた。
なのはの友達――アリサとすずかとも友達になれたし、だから不満なんて全然ないし、逆に感謝してもしきれない。
そしてリンディ提督は神妙な顔をして、
「管理局の人間としての質問じゃないから、無理に答える必要はないから」
たぶん今回の本題を切り出してきた。
「お母さんのこと、今はどう思ってる?」
そのストレートな質問に戸惑うけど、今の自分の気持ちを伝える。
「そうですね、少し時間が経って色々気持ちも落ち着いてきました。
裁判の最中、母さんの過去のことも色々分かってきましたし。
初めは、やっぱり混乱しましたけど、今はもう自分でも不思議なくらい恨む気持ちとか裏切られてたんだなって気持ちはなくって、あの母にとっては、最初から最後まで私は単に実験の失敗結果で、使えないお人形だったんだなって」
「っ! フェイト! それは自虐――」
「待ってルシル!」
「――フェイト・・・?」
「ううん。これは違うよルシル。今のは自虐的な意味じゃないから」
私のその言葉に、リンディ提督が止めに入る前にルシルが怒鳴って止めてきた。
けど私は本当に自虐的な意味じゃないと思ってる。
「リンディ提督、ルシル、今のはその厳然たる事実というか、言葉通りの意味としてのことだから」
ルシルは座りなおして溜息をついた。
「あの母は自分の大切な子に、アリシアに戻ってほしかっただけで、本当にただそれだけで、だからこそ分かってたんだと思います。
作り物じゃ代わりにはならないって。アリシアにそっくりなのに、ちっともアリシアじゃない私。
アリシアが失くしてしまった命を生きている私。母さんはきっと思ってた。
どうしてアリシアが戻ってこなくて、失敗作の私が生きているのって」
「酷い、話ね」
リンディ提督はそう返してくれたけど、ルシルは全然喋らなくなってしまった。
ずっと俯いたままで何かを考えているような、何かを耐えているようなそんな感じだった。
「私は母さんが好きだったし尊敬もしてたけど、それはアリシアの記憶を頼りに私が思いこん――」
「違う」
「――・・・ルシル?」
「違う、そうじゃない。確かにアリシアの記憶に因るかもしれないけど、その思いだけはフェイトの心だと俺は思ってる。
前にも言ったかもしれないけど、フェイトはアリシアの代替物じゃないよ。
君は確かにプレシアの娘で、アリシアの妹だ。だからもうそんなことを考えないでくれ、頼む」
「ルシル、でも私は・・・」
「そうね、私もルシリオン君と同じ意見だわ。
あなたは決して人形じゃなくて、今を生きる一人の女の子よ」
ルシルの意見にリンディ提督も賛同してきた。
私は二人のその言葉をきちんと受け入れて、私の話をここで終わらせようとした。
けどリンディ提督はもう一つお話があるみたいで、私に話かけてきた。
「ねぇフェイトさん、もう一つストレートな質問、いいかしら?」
「あ、はい、どうぞ」
「お母さんのこと今でもまだ少し好き? それとも、もう嫌い?」
母さんのことが好きか嫌いか、そんな質問。
正直分からないとしか答えられないけど、でもそれが分かるまでは・・・。
「分かりません。けど分からないからこそ分かるその時までは、あの母の娘として、フェイト・テスタロッサとして生きていこうかと思っています。
それに逃げたり捨てたいするにはまだ早いと思っていますから」
「そう、でもそれじゃあ私はフラれちゃったのかな」
フラれた? どういう意味か分からないからルシルを見てみるけど、ルシルも小首を傾けて、?と顔に出している。
「裁判が終わったらなんだけど、よかったら家の子供にならないかなって思ったんだけど」
「え・・・?」
その言葉に驚く私。だけどルシルが先にその話への意見を話す。
「俺はいいと思うよフェイト。リンディ艦長は良い人だし、これからのことを考えれば悪くはない話だ。
決めるのはフェイトだから無理強いはしないけど」
「あら、ルシリオン君にも同じことを言うわよ。
あなたも家族がいないことは分かっているのだから」
「はい?」
そうだった。ルシルにも家族がいないってことは出会ってすぐに聞いていたんだ。
だからこそ“ジュエルシード”の探索ではずっと一緒にいられたんだから。
「そんなに意外かしら? もちろんこれはあなたたちを管理局へのスカウトしているってことじゃないのよ。
いくら強くて家事が出来たとしてもまだ二人は子供なのよ。自由になった後でもちゃんとした大人がついていないと大変だと思うし。
それに私ならあなたたちのこともよく知っているし、別世界の友達との上手くやっていけるようにするなら、私が割りと適任かな、って」
「えっと、その・・・」
「はぁ、そうなんですか・・・?」
二人して返事に窮する。だってどう答えればいいかなんて急には出てこない。
そんな様子の私とルシルを見て、リンディ提督が話を続ける。
「でも本当の、一番の理由としては、あなたたちがとても良い子たちだから。
これでも人を見る目は確かだと自負しているのよ」
「あの、あの、その、えっと」
「落ち着けフェイト。リンディ艦長、返事は今すぐでなくても構いませんか?」
「ええ、急な話だったから。法的な後見人だとか、そういう部分だけで頼りにしてくれてもいいし、親子別姓になっても気にはしないし、ね。
だから考えておいてほしいの、私たちの家族になるかどうか」
リンディ提督の、その真摯な態度に私とルシルは立ち上がって、頭を下げる。
「お心遣い感謝します。その、とっても嬉しいです」
「俺も感謝します。よく考えて返事をしますので少し時間をください」
それからすぐに、ブリッジにクロノが入ってきた。
これで話は終わりとなって、私とルシル、クロノはブリッジを後にした。
†††Sideフェイト⇒クロノ†††
僕はフェイトがいると聞いた艦長室へ行くと、母さんとフェイト、ルシルが話をしていた。
タイミングが少しまずかったと思ったけど、すでに話は済んでいたらしい。
僕たちは艦長室を出て、それからフェイトに“バルディッシュ”を返す。
「フェイト、バルディッシュを返しておこう」
フェイトは“バルディッシュ”を受け取り、「久しぶり」と声をかけている。
フェイトに応える“バルディッシュ”を見て、いいなとか思ってしまった。
「しかし、インテリジェントデバイスもいいものだな」
「う、うん、相棒だから。その、クロノも持てば?」
フェイトがそう言ってきてくれるけど、インテリジェントデバイスはちょっとな。
「暇を見つけて組んでみようとは思っているんだが、処理速度が心配でね。
これ以上遅くなるとルシルに更に勝てなくなる」
正直これ以上ルシルには負けたくない。
一対一でも負けて、フェイトと組んでも負けて、彼は本当になんなんだ?
デバイスも持たず、その身一つで演算処理して魔術を使うと言うから驚きだ。
彼は本当に人間なのか疑いたくなってくる。
「今失礼なことを考えなかったかクロノ?」
「いいや、特にはなにもない。そういえば君とシャルもデバイスを持つことになったと聞いているけど、どうなんだ?」
そう、それは母さんの計らい(正確には今回の事件の解決助力に対する報奨)みたいなもので、シャルとルシルにはデバイスが用意されることとなった。
シャルはルシルのように非殺傷設定付の魔術は使えないらしいからとのことだが、ルシルはあまり必要ないと言っている。
すでにいくつかデバイスを使った訓練を行っているみたいだが、どれもすぐにルシルの演算処理と魔力に耐えられず壊れてしまうのが常となってきた感じだ。
シャルのほうは簡単に決まって、今ではデバイス使用の特訓をしているらしい。
ルシルとシャルの何がそこまで違うのだろうか?
「あ~、そうだな。俺は複製で何とか出来たけが、シャルは非殺傷設定をデバイスなしで使うなんて器用なことは無理だ。
だからリンディ艦長は良い機会だとして、シャルに非殺傷設定の魔術を扱えるようにさせたいらしい」
ルシルの固有能力“複製”の説明はすでに聞いている。
正直半信半疑だったが、模擬戦を行って思い知ることになった。
僕が使った魔法を次々と複製して、僕へと放ってくる。
しかも威力、速度、制御もろもろ全て僕より上だったことにへこむ。
「そもそもデバイスの演算処理が俺より遅いから、どうしても力ずくで処理させようとしてしまう。
まぁこればかりはどうしようもないと言われたが」
全く。魔術師は本当にすごい存在だと思い知らされる。
普段は魔力を感じないのに、いざとなると急激に上がり、デバイスなしでの魔術発動。
発動に必要な術式の演算は全て頭の中だけで処理。などといったことはそう出来るものじゃないのは魔導師であれば誰でも知っている常識だ。
だがそんな魔導師の常識をことごとく覆すのが、魔術師であるシャルとルシルだった。
「じゃあデバイスを持つのはシャルだけになるということか?」
「そうなるかな。デバイスの代わりとして、形だけを似せた第四聖典を使うつもりだ。
あれなら危なくないから、そっちの法にも引っ掛からないはずだ」
どうやらルシルのデバイス所持の話は白紙になるようだ。
まぁそれでいいなら僕も構わないが。とりあえずデバイスを持って弱くなってしまった、なんてことにならずに済んだ。
†††Sideクロノ⇒ルシリオン†††
俺は今、クロノとフェイトの模擬戦を見ている。
それにしても、フェイトは本当にすごい。さらに魔力が上がってきているし、技術もまた上達している。
クロノが抜かれるのも時間の問題だし、俺としてもこのままだと抜かれてしまうかもしれない。
そしてフェイトが砲撃を放ち、結界を抜いて壁の一部を破壊してしまった。
「おお! これはすごいな。というかクロノ! しっかり相殺しろぉ!」
「うるさい! 近くにいるなら君が何とかすればよかったじゃないか!」
手を出すなと言っておきながらそれですか。
というよりクロノがしっかりしていれば防げたはずだが。
「あ、えっと、ごめんなさい。つい力が入っちゃって」
フェイトがクロノに謝っている。
謝る必要はないぞフェイト。自信満々に模擬戦を申し込んでおきながら、フェイトの魔導を受け切れなかったクロノが悪い。
「気にすることはないよ、相殺しきれなかった僕も悪い。それに、自分たちで直す分には誰にも文句を言われる筋もない。というわけで手伝えルシル」
「は? ああ、まぁいいか。分かった、あとでな」
世話になっている以上はそれくらいなんてことはない。
「よし、それじゃあ結界を張り直してもう一本。今度はルシル、君も入れ!」
どうやら前みたいに、二対一で戦おうというわけらしい。
正直あれはしんどかった。二人とも手加減がないため、苦戦したのを覚えている。
クロノの誘いに応え、最近組んだ戦闘甲冑と同じデザインのバリアジャケットを武装しようとしたが、そこで艦内放送が入る。
≪こちらセッティング担当エイミィ。リンディ艦長、クロノ執務官、それからフェイトちゃんとアルフ、ルシル君。
状況Dが完了しました。至急、六番のレクリエーションルームに―――≫
「・・・っと食事みたいだな。戻ろうか」
「うん、続きは夜にね。ルシルもそれでいいかな?」
「ん? ああ、それで構わないぞ」
トレーニングルームを出、レクリエーションへ続く通路を三人で歩きながら、結界のことで話をする。
クロノは結界のためだけにユーノを呼ぼうとしていた。
(ユーノも災難だな。クロノに目をつけられるなんて)
近々再会することになるだろうユーノに、俺はどうしようもなく同情した。
†††Sideルシリオン⇒フェイト†††
「おお、いらっしゃい!」
私たちがレクリエーションルームに入ると、そこには豪華かつ大量の料理が並べられていた。
私もクロノもルシルでさえもその豪華さと量に驚いている。
何でこんなにすごい料理が用意されているのか気になったから聞いてみる。
「エイミィ、これどうしたの?」
「えへへ、だって今日はフェイトちゃんとアルフの契約記念日なんでしょ?
そういう日はやっぱ美味しいもの食べて、楽しくお話して、のんびり過ごすもんでしょ」
「そうなの?」
本当にそうなのか迷って、ルシルを見てみると笑って頷いてくれた。
エイミィの話はまだ続いている。
「そ・れ・に、フェイトちゃんたちには、最近うちのクロノ君がお世話になってるし、感謝の気持ちを籠めてね。ちょっとしたものだけど」
ちょっと? どうみてもそんなレベルじゃないのは一目瞭然。
エイミィは、これは自分にの趣味が入ってるって笑っている。
私たちは席に案内されて、いろいろと料理を薦められた。
「あ、その、ありがとう。うれしいです」
用意されたケーキに刺さっている火の点いたローソクを消すように言われて、なんだか照れてしまって、顔が赤くなってしまう。
「えっと、それじゃアルフ、一緒に」
「う、うん。それじゃあ」
「「せーの」」
私とアルフがローソクに顔を近づけて火を消す。
するとみんなが拍手してくれた。二人して照れてしまってどもってしまう。
「あ、ありがとう。ありがとう」
「あ~、あんまりフェイトを照れさせないで。なんだかあたしまで照れるんだから」
部屋に響き渡る笑い声。そこに私たちはさらに驚くことが起きた。
『おめでとう、フェイトちゃん、アルフさん。
今日、そんな記念日だったんだね。私からもお祝い言わせて』
『僕からも』
『ついでに私からもおめでとう、フェイト、アルフ』
モニターに映るのは、なのはとユーノとシャルの三人だった。
「これってリアルタイム通信じゃ・・・!?」
「リンディ艦長、これっていいんですか?」
私は決まりとして禁じられていたリアルタイム通信が行われている状況に驚いてしまい、ルシルはこのようなことをして大丈夫なのか、とリンディ提督に聞いている。
「可愛い身内の特別の日だと、管理の注意力も散漫になるものらしいわね」
「厳密には0,05秒遅れで繋いでいるので、リアルタイムではないですしね」
「そうきますか」
それを聞いたルシルは呆れているけど、私にとってこれはすごく嬉しいことだった。
「・・・なのは」
『うん、フェイトちゃん』
私はなのはの名前を呼んで、なのはも私の名前を呼び返してくれた。
ただそれだけのやり取りで、心がぽかぽか温かくなって、優しい気持ちになる。
「こっちは、その元気だよ。みんなすごく優しくて、なんだか上手く心がついてこない」
『にゃはは、大丈夫♪ すぐ追いついてくるようになるよ』
『ルシルもアルフも元気そうで何よりね』
「うん! 元気元気♪ シャルもユーノも元気そうでよかったよ!」
シャルの言葉にアルフが元気いっぱいに答える。
そしてルシルも何か言うのかなと思ったけど、シャルを見たままで黙っている。
少しの間そうして、シャルが笑顔で頷いた。なんか分からないけど悔しい気持ちになる。
だけど今は嬉しさのほうが上まっているから、すぐに気にならなくなった。
『あ、そうだ。リンディ艦長。デバイスありがとうございます。
今でも少し苦労していますが、ようやくまともに扱えるようになってきました』
シャルはリンディ提督に感謝して、すぐになのはの後ろへと下がっていった。
そこで私はさっきから気になっているなのはたちのいる場所について聞いてみた。
「なのはは今外なの? そこは、森の中?」
『うん、裏山に来てるの。今はあんまり長く話せないし、贈り物もすぐには送れないから、だから私とユーノ君、シャルちゃんからのお祝い、見ててね』
そう言うとなのはは“レイジングハート”を夜空に掲げて、シャルは蒼い剣のデバイスを構える。
そして、
『いくよ、レイジングハート、ユーノ君、シャルちゃん!』
『『うん!』』
『夜空に向けて砲撃魔法、平和利用編。スターライトブレイカー、打ち上げ花火バージョン』
『私たちもいくよトロイメライ。夜空に煌いて、グランツ・フォーゲル』
『『ブレイズ・・・シュート!!』』
二人のデバイスから集束砲撃魔法が放たれる。
その砲撃は空中で爆発して、夜空を桜色、緑色、紅色に照らし染める。
言葉に出来ないくらい綺麗だった。
リンディ提督やみんなもそれに見惚れているし驚いている。
「すごいよなのは、シャル。夜空にキラキラ光が散って、すごく綺麗だよっ」
『うん! それじゃあ続けていくよ、ユーノ君、シャルちゃん』
『うんっ』『ええ!』
なのはたちは続けて砲撃を放つ。
しばらくみんなはそれを観て、なのはたちのすごさに言葉も出なくなった。
砲撃が終わると、はたちは肩で息をしているから心配の言葉をかける。
「えっと、なのは、ユーノ、シャル、大丈夫?」
『にゃはは、大丈夫だよ』
『うん、全然平気』
『・・・だい、大丈夫、と思う』
なのはとユーノは何とか大丈夫そうだったけど、シャルは限界みたいだ。
事件のときに見せていた余裕が全然なくて、それがまた驚いた。
『ちゃんとしたプレゼントは、ビデオメールの返事と一緒に送るね。
今のは、どうしても今日のうちに伝えたかったお祝い』
「ありがとう、ありがとねなのは」
私は何度も何度も感謝の言葉を告げる。
いくら言っても足りないくらいだ。
『うん、きっとすぐ、すぐにまた会えるから。だから今は普通にお別れね。またねフェイトちゃん』
「うん、ありがとうなのは」
そして通信が切れた。
†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††
シャルとなのは、ユーノによる一夜限りの魔法花火はフェイトの心に深く刻まれたようだ。
フェイトはこのサプライズのことが相当嬉しかったのか泣き出してしまった。
アルフたちがフェイトの周りに集まって何か言っている。
(それにしてもシャルのデバイス操作の技術がかなり高い位置にきていた。
慣れない砲撃を連発したことでフラフラだったが、俺とシャルの演算能力はさほど違いはないと思ったんだけどな)
シャルが使えて俺に使えないことが少しショックだったが、そこは諦めるしかない。
我ながら最悪な解決方法だ。
一人離れて考え事をして気付かなかったけど、いつの間にか人が増え宴会状態になっていた。
「お~いルシル! あんたも早くおいでよ!」
アルフが両手いっぱいに肉を持ちながら俺の名前を呼んできた。
フェイトたちもアルフに続いて呼んでいるから、俺はゆっくりとあの輝かしい集まりのもとへと歩み寄っていった。
(守って見せるさ、この幸せな時間を。どんな手を使ってでも、な)
フェイトとアルフ。そして目に映るクロノやエイミィ、リンディ艦長、アースラスタッフ。
彼女達の笑みが悲しみに変わらないように。もし変えるような奴が現れたら、俺が叩き潰す。
それだけの情が生まれてしまっている。ふふ。俺もまだまだ甘いよな。
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