プレシア・テスタロッサ戦イメージBGM
キングダムハーツ2『The Other Promise』
友達
†††Sideシャルロッテ†††
フェイトもやる気を見せているし、なのはたちもサポートに回ると言ってくれたので、私のすることは彼女たちが傷つかないようにするだけだ。
「プレシア・テスタロッサ!! あなたの娘の力によって落ちなさい!!」
「・・・あなたが手を出さないのであれば何も恐れることはないわ。そんな人形の力なんて、私の前では無意味よ!」
――サンダースフィア――
さぁ戦闘開始だ。プレシアは魔法を放ってきて、私は魔術ではなく、守護神の力で防御したのだけど。
ん? どういうわけかプレシアの魔法の威力がさっきより上昇しているみたい。
原因は何か? 私はプレシアの傍で光を放っている“ジュエルシード”を見た。
ああ、なるほど。“ジュエルシード”から魔力を供給しているのね。随分と無茶なまねをするわ。
「クロノ。どうやら彼女はジュエルシードを完全に制御しているみたい。
けど安心してくれていい。絶対になのはたちは傷つけさせないから」
「なにっ!? ジュエルシードを完全制御っ!?というかそれを防げるわけが・・・!?」
――サンダーレイジ――
――干渉防御――
「「「っ!?」」」
頭上から降り注ぐ“ジュエルシード”の魔力を受けた雷撃を実際を防いで見せると、クロノは驚愕のあまり後ずさっている。
攻撃を放ったプレシアはもちろん、クロノとユーノが驚愕に目を見開いた。
なのはとフェイトはあまり驚いていない。アルフもユーノ達ほどは驚いてない。
フェイト達はどうやらルシルの異常性からして慣れてしまっているようだ。こういうあり得ない現象を。
だったらプレシアはともかくとしてユーノとクロノもそうでしょうが。
「ほらね、さぁ行っておいでフェイト。ルシルの来るまでの間、私があなたとなのはたちの盾になる」
「あ、その、ありがとう。アルフ、行くよ」
「あ、ああ、あいよ!」
フェイトとアルフはプレシアへと向かっていった。
それに続くなのはとクロノ。ユーノは私の傍でサポートに移る。
「母さん、私はあなたを止めます! バルディッシュ・・・!」
≪Photon Lancer Get Set≫
「フェイトちゃんたちの為に、私もあなたを止める!! レイジングハート!!」
≪All right, Divine Shooter≫
「シューット!!」「ファイア!!」
なのはとフェイトの魔力弾計十二発が、ショックで顔を歪ませているプレシアへと襲い掛かる。
クロノも負けじと「ブレイズキャノン!」と砲撃。魔力弾とのタイミングをずらしてから放つ。
「そんなもので、どうにかなると思っているの!!?」
――エクスディフェンダー――
プレシアの前面に六角形を組んだ障壁が展開された。
障壁に当たった三人の射砲撃。プレシアの障壁はただ防ぐだけじゃなく、大きな雷撃弾をカウンターで放ってきた。
スピードはそれほど速くはないから、余裕で防御できる。
「あなた・・・!」
――サンダースフィア――
思い切り睨まれた。それでもプレシアは再度、フェイトたちへと雷撃弾を4つ放ってきた。
だけど無駄だ。もうプレシアにフェイトを攻撃を通すことは不可能。
私は“界律の守護神”の能力、“干渉”を使ってまた雷撃弾を防ぐ。
雷撃弾は初めからなかったかのように消滅した。
干渉とは、“界律の守護神”の能力の一つだ。現実に干渉する実数干渉と、幻想に干渉する虚数干渉の二つの事を言う。
実数干渉は現実にある物質や空間、虚数干渉は幻想とされる霊体や概念などで、それを思うがままに操ることが出来るというものだ。
この干渉の力の前では、神秘を失ってしまい、科学へと進んだ魔法では決して打ち破ることは出来ないし、元より初めからどんな力でも破ることは不可能だ。
「さあどうするプレシア? あなたの攻撃にいくらジュエルシードの魔力を使っていようとも、私の力の前では無意味よ」
驚愕と憤怒、そして理解できない力への恐怖で、プレシアの顔が歪む。
どうやらルシルが来る前に終わってしまいそうだ。
「な、何なのその力は!? そんな魔法は知らない!」
「知る必要なんてないわ、だって使えるのは私とルシルの二人だけ。それに知ったところで使えるようなものじゃない」
そう、この世界で使えるのは、世界の意志の執行者である“界律の守護神”の私とルシルだけ。
どういう理屈で、とか何だとか教えても理解できないはずだ。
「母さん! もうやめよう!? 母さんさっきから血を・・・!?」
「げほっごふっ。このような結末・・・私は認めない!!」
――サンダースフィア――
フェイトがもう一度説得に入る。プレシアは何処か患っているのか、先程から吐血している。
けれどプレシアはそれを無視して攻撃する。
そこまでして娘のアリシアに会いたいのだろうけど、それは叶わない。
「だから無駄だと・・・言ってるでしょう!!?」
――干渉防御――
私は干渉を使い、雷撃弾を消滅させる。
今使っている実数干渉能力で「現実に存在している」と決定されたプレシアの雷撃という現象のみを選択して消している。
「フェイト! なのは! 口で言って聞かないなら、力ずくで止めなさい!
その後でゆっくりと説教でも何でも言えばいいから!!」
「うんっ!」「はい!」
――ディバインシューター――
――フォトンランサー――
私の言葉に、二人は返事して再度プレシアへと攻撃を仕掛ける。
ユーノ、アルフ、クロノは少し邪魔になるので少し下がらせる。
「フェイトちゃん! 少し耳を貸して!」
「え?・・・・っ!・・・うん、やろう」
どうやらなのはが何かしらの手を考えたようだ。
それなら私たちは二人のサポートに専念すればいいだけのこと。
「クロノ、二人が何か考え付いたみたいだから、それまでの間はあなたが攻撃に回って。
ユーノとアルフはクロノのサポートよろしく。
みんなの防御は、全て私が受け持つ。これで終わらせるわよ」
「ああ!」
「わかったよ!」
「うん!」
クロノは早速砲撃を放ったけど、それは防がれてしまう。
プレシアはクロノに反撃を試みようとしたけど、アルフのバリアブレイクと呼ばれる一撃によってその機会を失う。
そして今度はアルフに標的を変えようとするも、ユーノのバインドによって再度妨害される。
「う~ん。なかなかの連携ね。さて、なのはとフェイトは?」
二人へと目を向けてみると、二人して砲撃に使用する魔力をチャージしていた。
おお、結構すごいことになるかもしれない。
「行くよフェイトちゃん!」
「うん・・・!」
二人はデバイスの先端をプレシアに向け、発射体勢に入った。
輝きを増していく“レイジングハート”と“バルディッシュ”。
「ユーノ、クロノ、アルフ、退避!!」
指示に従ってプレシアのもとから離れる三人。
――サンダーストーム――
それを逃がさないとするプレシアの雷撃の嵐。
当然それを許さない私は・・・干渉防御じゃはなく第三聖典を投げ放つ。
―――遥かに遥か、白の真白の、高き夢々、汝よ祈れ―――
第三聖典は純白の閃光を引いて、高速で雷撃を拡散しながらプレシアの足元へと着弾。
プレシアの強固なバリアを完全に粉砕する。
「っ!!?」
プレシアはその衝撃で少し後ろへと飛ばされるけど、何とか踏みとどまった。
だけど、それだけの隙があれば十分だ。なのはとフェイトの準備は終わった。
「ディバイィィン・・・」
「サンダァァーー・・・」
二人のデバイスの閃光がさらに輝きを増した。
そして、
「バスタァァァーーーーッ!!!!」
「スマッシャァァァーーーーッ!!!!」
放たれるのは極限にまで圧縮された桜色と黄金の閃光。
それは間違いを起こそうとしている者を正す為の光だ。
それにしてもなのははには遠慮というか何というか、何か欠けているのかもしれない気がする。
あそこまで容赦なく撃つなんて少し怖い。
「フフフ、アハハハハ!! そちらの方こそ無駄よ!!
さぁ! ジュエルシードよ! 私の願いを叶えて!!
いざ、アルハザードへ私とアリシアを導いて!!」
プレシアのその言葉を合図として、“ジュエルシード”が完全発動・・・違う暴走だ。
完全に制御できる一線の臨界点を超えてしまったようだ。
なのはとフェイトの砲撃が“ジュエルシード”から放たれる魔力によってかき消されてしまった。
あ~惜しい。もう少しで決まっていたのに。
「くっ、シャル、どうすればいいんだ!?」
クロノが必死な顔をして聞いてきた。
それに対して答えようとしたその瞬間、
「汝よ敬え、汝よ崇めよ、汝よ称えよ、汝よ祈りて、ただ跪け」
その言葉とともに落ちてきたのは、漆黒に輝くルシルの第四聖典。
物凄い音を響かせながら着弾して、“ジュエルシード”の魔力を消し去った。
完全に沈黙している“ジュエルシード”と私たち。そこに聞こえるのは、
「タイミングはバッチリだったようだな」
ルシルの声。遅れて上から降下してきたルシルは、私たちに向けて親指を立てる。
まぁ何はともあれこれにて終了だ。“ジュエルシード”は完全に沈黙している。
「・・・・あ~、プレシア・テスタロッサ。大人しく投降してくれないか?
これ以上こんな連中を敵に回すとどうなるか僕たちにもわからないから」
クロノはほとんど自棄になって、プレシアに投降するように呼びかける。
ちょっと。「こんな連中」ってなに? ルシルはともかくそんな目で私を見ないでほしいわ。
傷つくでしょうが。
「・・・母さん、もうこれ以上は無理、だよ。管理局へ行って、一緒に罪を償おう?」
フェイトは第四聖典の着弾音の所為か、少し頭を振ってからプレシアに告げる。
プレシアは未だに呆然としている。当然かもしれない。
あんなにも簡単に“ジュエルシード”の魔力を消されてしまったら、この時代の連中は信じられず病院へと直行だろう。
「・・・どうして・・・こんな・・・でも!」
プレシアが項垂れてそう呟いた瞬間、大きく振動する庭園内。
再度光りだす“ジュエルシード”だけど、魔力はほとんど感じられない。
あれじゃ何も出来ないだろうけど、この庭園くらいは破壊するかもしれない。
あまりの振動にたまらず膝をつく私たちだけど、プレシアはアリシアの水槽へと体を預けて何かを喋っている。
『もうダメ! この規模の崩壊なら次元断層は起きないけど、庭園は崩壊しちゃう!!
だからクロノ君たちは急いで戻ってきて!!』
エイミィからそう通信が来た。
†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††
母さんを止めることが出来た、そう思ったんだ。
でも、ダメだった。最後の最後まで母さんはアリシアだけを娘だとしていた。
それでもやっぱり私は・・・あなたの娘でいたい。
「私はアリシアと共にアルハザードへ、全ての眠る地へと行くの」
母さんがそう言った直後、母さんの足元が崩れて虚数空間へと、アリシアと一緒に落ちていく。
「母さん!!」
私は叫び、母さんのもとへ駆け寄ろうとしたけど、
「フェイト!? ダメ!!」
アルフが私を後ろから抱きしめて止めてきた。
「チッ、このまま終わらせてなるものか!!」
私の代わりにルシルが母さんを助けようと駆け出してくれた。
それを見た他の人たちがそれを止めようと声に出しているけど、ルシルはそれを無視して、さらに速度を上げていった。
(お願い、お願い、お願い、母さんを助けてルシル!!)
あと少しといったところで、浮遊していた“ジュエルシード”から放たれる衝撃波。
衝撃波をまともに受けたルシルは私の横を通り過ぎ吹き飛ばされていった。
「ル、ルシル!?」
一瞬何が起きたのか分からなかったけど、少ししてルシルが吹き飛ばされたのだと理解して、そちらに目を向けようとして気付く。
「か、母さん・・・母さん?」
もうどこにも母さんはいなかった。
もう話せない、分かり合えない、そう思うと涙が止まらない。
「フェイトちゃん!!」
その声を聞いた私は顔を上げると、あのなのはって子が私に手を伸ばしていた。
そうか、私のいる場所も崩れてきているんだ。
「フェイトちゃん! こっちに跳んで! 早く!」
どうしても母さんのことを少し考えてしまう。
そういえばルシルは? 少し見渡すとクロノって人の肩を借りて、私を呼んでいた。
そうだ私は・・・私は、生きないと、母さんとアリシアの分まで。
今まで私に力を貸していてくれたアルフとルシルの為にも。
だから母さん、アリシア・・・。
「さよなら」
そう呟いて、あの子のもとへと跳んで、その手を取った。
†††Sideフェイト⇒シャルロッテ†††
私はルシルをクロノに任せて、“ジュエルシード”の完全停止を行った。
プレシアだけに集中していた所為で、あんなドジを踏むなんてらしいと言えばらしいかもしれないけど、少し間抜けかもしれない。
でもこれで“ジュエルシード”関連の契約は終了した。
本来ならここで私とルシルは、契約執行完遂として消えることになるんだけど、“界律”からは何も言ってこない。
どうやらまだこの世界でやるべきことがあるみたいだ。うん、まぁ嬉しいのだけどね。
時の庭園から帰艦した私となのはとユーノ、クロノは、今はアースラの医務室にいる。
足を怪我していたなのはの治療をしているのだ。
本当なら干渉能力でで怪我を無かったことにするということにしたかったのだけど、戦闘後すぐに能力を制限されてしまった。
「あの、クロノ君。フェイトちゃんたちは?」
なのはがユーノに包帯を巻かれている中、そう質問した。
「彼女たちは今護送室に隔離している。彼女たちは今回の一件の重要参考人だからね。
申し訳ないが、しばらくあそこに入っていてもらうことになるだろう」
「そ、そんな・・・!」
クロノの返答に納得いかないのか、なのははそんな声をあげる。
私は当然の処置だと思っているから口を挟まない。
「今回の事件は一つ間違えば、次元断層さえ引き起こしかねなかった重大な事件なんだ。
時空管理局としては、関係者の処遇には慎重にならざるを得ない。それは分かるね?」
「・・・うん」
なのはは渋々納得した。
クロノは私を見て、「君も分かってくれるね?」と告げてきた。
私は「ええ」と頷き、ルシルの今後を考えた。
それから数日は、地球に帰れないということでアースラの中で過ごした。
退屈なこともあったけど、まぁまぁ楽しめたかな。
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
あれから数日が経った。今私とユーノ君、それにシャルちゃんは、クロノ君の後について通路を歩いているんだけど、私はフェイトちゃんたちのこれからが気なってので「クロノ君。フェイトちゃんたちはこれからどうなるの?」って聞いてみた。
クロノ君は足を止めることなく答えてくれた。
「事情があったとはいえ、彼女たちは次元干渉犯罪の一端を担っていたのは紛れもない事実だ。
重罪だからね。数百年以上の幽閉が普通なんだが・・・」
「そんな!」
「す、数百年!?」
私もシャルちゃんもそれには驚いてしまった。
そんな私たちを見て、すぐにクロノ君は話を続けた。
「なんだ、が! 状況が特殊だし、彼女が自らの意思で次元犯罪に加担していなかったことは分かっているし、ルシリオンはプレシアの目的を知らずに、ただフェイトとアルフの為として戦っていた。
あとは偉い人たちに、その事実をどう理解させるかなんだけど、その辺にはちょっと自信がある。
だから心配はないよ、なのは、シャル」
「クロノ君」
「・・・ええ」
「何も知らされず、ただ母親の願いを叶える為に一生懸命なだけだった子を、そしてそれをただ手伝いたかった彼に罪に問うほど、管理局は冷徹な組織じゃないから」
「へぇ、クロノってとても優しいんだ、私は嬉しいな~♪」
シャルちゃんがそう言って、クロノ君を下から見上げるようにしながら笑顔を近づけた。
すると私でもわかるくらいに、クロノ君の顔が真っ赤になってしまった。
「ししし執務官として、と、当然の発言だ! し、私情は別に入っていない!」
かなり動揺しているみたいで、慌ててシャルちゃんから離れる。
顔が赤いのはまだ直っていない。にゃはは、可愛い。
「アハハ、そんなに照れなくてもいいじゃない、可愛いんだから」
「な!? て、照れてなんかいない!」
通路に響き渡る私たちの笑い声と、クロノ君の否定の言葉。
シャルちゃんは最後に、クロノ君へそっと「ありがとう」と告げていた、耳元で。
それでさらに顔が赤くなってしまったクロノ君は、ついには黙って先に行ってしまった。
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
私があまりにからかってしまった所為で、クロノは顔を真っ赤にしたまま行ってしまった。
仕方がないから予定通り、私たちは食堂へと向かうことにした。
食堂でリンディ艦長と一緒になり、少し話をした。
海鳴市へはもうすぐで帰れるらしいのだけど、ミッドチルダ方面へはまだダメらしい。
ユーノの今後のことで話題が出るけど、なのはは今までどおり高町家へ住まわせることにした。
私としてもなのはの魔法の先生をここで失うわけにはいかないから、それには賛成している。
そこで合流するクロノ(私と目を合わさないようにしていて、少し反省)とエイミィ。
みんなが揃った事で、次の話題はプレシアの目指した地であるアルハザードについてとなった。
ユーノは「いくつもの秘術が眠る土地」と、クロノは「とっくの昔に次元断層へ落ちた」のだと言う。
リンディ艦長もそれに続き、説明をしている。
実際は次元断層に落ちたのではなく、ルシルの干渉によって近くにあった流星群の軌道を全弾アルハザードへと修正してぶつけ、消滅させたのが正しい結末だ。
アルハザードの連中はどこで大戦や魔術の記録を手に入れたのか知らないけど、禁呪を、しかもよりによってラグナロクを研究し、その上で発動させようとした。それゆえに滅ぼされたのだ。
「そういえばシャルロッテさん。ルシリオン君が時の庭園に向かう前に、プレシア女史に言っていた“世界の意思”というのは何なのかしら?」
リンディ艦長が急に話を振るので驚くけど、それについては一応説明しておく。
「世界の意思、私たちはそれを界律と呼んでいます。
それはその星そのものと言っても過言ではありません。
自分自身である世界の秩序を管理するもの。
すべてがそこから生まれ、そして還っていく永久機関。
過去、現在、未来の全ての情報があるともされる知識の蔵。
それぞれの星に必ず存在する究極にして絶対たる力の根本、といったところでしょうか」
そして私とルシルは、そのあらゆる世界の界律が一つに集約する“神意の玉座”に取引を持ちかけられ応じ、魂を取り込まれた後、存在を昇華された最高位の抑止力“界律の守護神”となったのだ。
まぁルシルはまだ死んでいないために魂ではなく精神を取り込まれている状態だけど・・・。
「分かっていたつもりだったが、やはり僕たちの知識とは全然違うな。
でも本当にそんなものが存在しているのか?」
クロノが私の説明を言い終えるのを待ってからそう告げた。
当然の疑問だ。すでに次元世界には、“界律”という単語すら残っていないのだから、その存在を疑うのも無理はない。
「この前は魔力炉での供給量でランクが変動すると言ったけど、それだけじゃなく私たち魔術師は、その界律によって力の強弱が決定されるの。
だからプレシアとの戦いで、世界は私たちに力を貸していてくれたというわけ。
あのまま放置していたら地球という自分が消滅する可能性があったからね」
魔術師の部分には本当は“界律の守護神”と入るところだけど、ここは黙っておくのがいいだろう。
「そうなのか・・・。じゃあ今はあの時のような力は出せないのか?」
「ええ。星の危機が去ったのなら、もうあれ程の力はいらないでしょ?
だから使用できないようにされてしまっているの」
クロノの質問にも答えたところで、ようやく食事を再開できた。
あ~あ、折角の料理が冷めてしまった。少し勿体ないわ。
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
リンディさんたち、アースラのみなさんとお別れして私たちは日常へと帰ってきた。
思えば短かったような長かったような、そんな色々なことがあった時間。
私はその大切な時間を決して忘れないと思う。
私を成長させてくれたとても大切な時間だから。
日常へと帰ってきて数日後の朝、クロノ君から連絡がきた。
それはフェイトちゃんとルシリオン君、アルフさんの今後の予定、そして二人がほぼ確実に無実となるという話だった。
『――ということだから、今からならフェイト達と会えるんだが』
「い、行きますっ。すぐに行きますっ!』
それとすごく嬉しいことにフェイトちゃんが私に会いたいって言ってくれているみたい。
その事が嬉しすぎて、涙が出ちゃいそうになる。
それからクロノ君とどこで会うかを決めてから通信を切り、私はすぐに着替えを始める。
「あ! そうだ、シャルちゃんにも教えてあげないと!!」
私はシャルちゃんを叩き起こして、すぐさまフェイトちゃんたちが待っている海鳴臨海公園へと向かった。
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
気持ちよく眠っているというのに、なのはが「シャルちゃん!」といきなり部屋へと押し入ってきた。
しかも私の耳元で「起きてシャルちゃん!」と叫び、尚且つ体を揺らしまくるという悪行を働いた。
安眠妨害をしてきたなのはにアイアンクローをかけながら、私は未覚醒の状態で起きた。
「それで? どうして私の安眠を妨害したのかしら?」
「あの、痛いよシャルちゃん。あと手を顔から話してくれないと痛さで喋れないかも」
なのはに今回の悪行の釈明をさせると、クロノからルシルたちの処遇が決定したと連絡があったそうだ。
何故それだけで浮かれているのか?と聞いてみると、フェイトがなのはに会いたがっているというらしい。
なるほど。それでこの浮かれようってわけね。嬉しいのは判るけど、もう少し起こし方に気を付けてほしいものだ。
まぁルシルと会えるということで、私も出かける準備をして、なのはに手を引かれながらあの公園と向かった。
そして公園に入ってしばらく行くと、クロノ、ルシル、フェイト、アルフが海のすぐ近くの場所で待っていてくれていた。
「なのは、私たちは向こうで話しているから、二人はここで言っておきたいことを話しておきなさい。いいよね、クロノ?」
「ああ、あまり時間はないけど、それまではゆっくり話すといい」
私の意見をクロノは快諾してくれた。
さて、私もルシルに何かしらの言葉でもかけておこうか。
「ありがとう、シャルちゃん、クロノ君」
「ありがとう」
二人の感謝の言葉を聞いてから、ベンチのあるところまで行って座る。
なのはとフェイトの二人だけにしているから、ここには私とルシルだけでなく、ユーノにクロノにアルフもいる。
「さてと、ルシルはこれからどうするの?」
「・・・しばらくはフェイトたちと行動を共にしようと思っている。
クロノの話だと嘱託魔導師という資格を取ると、裁判などで有利なカードになるらしいから、まずはフェイトと一緒に取ろうと考えているよ」
ルシルがそう言いながら、クロノに視線を向けた。
嘱託、か。管理局という一組織に少しの間とはいえ身を置くということになるのね。
「まぁ有利になるといえばなるし、今後の為にも取っておいて損はない。
でもその試験は結構ハードルが高いから、勉強はしないといけない」
ルシルの視線を受け、クロノがそう答える。それならルシルは大丈夫だろう。
何せ知識すら容易く複製して溜め込むのだから、資料に目を軽く通せばいつでも頭の中に浮かぶ。
全く、ルシルは本当に反則の塊だ。
「それなら大丈夫ね。ルシルの頭は反則だから無事に受かるはずよ」
「なにかトゲを感じるんだけどな」
ルシルはジト目で私を見てくるけど、私はスルー。
そういえばもう一つ聞きたいことがあったんだ。
『ルシル、あなたはこの世界に存在として登録されているの? 私は色々と用意されているけど』
念話ではなく、“界律の守護神”間用のリンクでそう告げる。
私の場合は、ドイツという国に家も偽りの家族も用意されていることが分かっているけど、ルシルはどうなのか知っておきたかった。
『登録? ああ戸籍のことか、それなら用意されている。
もちろん家の方も存在しているが、どうやら独り身みたいだ。
まぁシャルとは違って、家事は大戦に参戦する前には出来ていたしな』
『ふ~ん。9歳で天涯孤独なのね』
聞きたいことはもう聞いたので、私はなのはたちに目を向ける。
するとクロノが立ち、「もうそろそろだ」といって二人に近づいていく。
私たちもそれに続いて、なのはたちのもとへと歩き始めた。
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
フェイトちゃんが私と友達になりたいって言ってきてくれた。
でも友達になるにはどうすればいいか分からないとも。
だから私は、私の持論をフェイトちゃんに教える。
「フェイトちゃん、友達になるのはすごく簡単だよ。
それはね、名前で呼ぶことなの。君とかあなたじゃなくて、ちゃんと相手の目を見て、ハッキリ相手の名前を呼ぶの」
これが私の持論だ。まずは名前から、名前を呼ぶことから始まると思う。
だからもう一度、私は自分の名前を告げる。
「私、高町なのは。なのはだよ!」
「なの、は」
「うん! そうだよフェイトちゃん!」
「なのは・・・」
「うんっ」
「なのは」
フェイトちゃんが私の名前を言ってくれる。
それからフェイトちゃんは何度も名前を呼んでくれた。
フェイトちゃんが笑顔で私の名前を呼んでくれるのを見ていると、それがすごく嬉しくて、涙が止まらなくなってしまった。
「少しわかったことがある。友達が泣いていると、同じように自分も悲しいんだ」
その言葉を聞いて、私は我慢できずにフェイトちゃんに抱きつく。
私のしてきたことは無駄じゃなかったと、そう思えるこの瞬間が嬉しかった。
「ありがとう、なのは。少しの間お別れになるけど、きっとまた会える。
そうしたら、また君の名前を呼んでもいい?」
「うん! うん! 待ってる。待ってるから。また逢える日を・・・!」
「会いたくなったらきっと名前を呼ぶ。だから、なのはも私を呼んで。
なのはに困ったことがあったら、今度はきっと私が、私たちがなのはを助けるから」
もう言葉が出てこない。出てくるのは嗚咽だけで、まで話したいことがたくさんあったはずなのに。
「すまないがもう時間だ。そろそろいいか?」
クロノ君やシャルちゃんたちが、そこまで来ていてそう告げる。
私は思い出に何かを残しておきたくって、咄嗟に髪を結っているリボンを解き、フェイトちゃんに差し出す。
するとフェイトちゃんも同じようにリボンを解き、私に差し出してくれた。
お互いにリボンを受け取り、笑顔で再会を約束する。
するとアルフさんがユーノ君を私の肩に乗せてくれた。
「ありがとう、アルフさん、ルシリ――」
「ルシル」
「――え・・・?」
アルフさんとルシリオン君にもお礼を言おうとして名前を呼ぶけど、ルシリオン君は途中で遮ってきた。
「ルシルだよ、なのは。フェイトの友達なら俺とも友達、でいいかな?」
「あ・・・うん! ルシル君も私の友達だよ!」
「そうか、それはよかった。なのは。ユーノ。シャルのこと頼んだよ」
ルシル君とも友達になれたことがまた嬉しい。
長く伸びた銀色の髪が朝日に輝いて、風に靡くその姿がとても印象に残った。
「ちょっと、それ逆じゃない? 私がなのはを頼まれるのが普通と思うけど?」
「ほぉ、居候がいい身分だな」
シャルちゃんとルシル君がおでこをつけながら、それはいい笑顔でお互いを見ている。
でもちょっと怖いよ二人とも。
「あ~もう時間なんだって。そろそろ行くよ」
クロノ君が堰払いをしながらそう言ったら、フェイトちゃん達の足元に魔法陣が展開されて輝き始めた。
少しの間のお別れ。けどお別れには涙じゃなくて笑顔で。お別れは終わりじゃなくて始まりで。
「またね、フェイトちゃん、アルフさん、ルシル君、クロノ君」
精一杯の笑顔で送り出す。
するとフェイトちゃんとルシル君が手を振ってきたので、私とシャルちゃんも手を振り返してくれた。
私たちは光に包まれて消えていくフェイトちゃんたちが見えなくなるまで見送った。
「・・・・帰ろうか、なのは。ユーノ」
「・・・・うん!!」
「うん」
いつかまた逢える日を楽しみに。私たちは帰路についた。
1st Episode:全てのはじまりはここから fin
NEXT Episode:夜天の主と守護の騎士
無印本編は、これにて終了です。
次回は番外編としてサウンドステージ03のフェイトとアルフの契約記念の
ことを書こうかと考えています。
+注意+
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