其は抑止の力と戻りて
†††Sideなのは†††
ユーノ君に協力してもらって組んだ魔法(集束砲っていうみたい)スターライトブレイカーを撃った。
自分の魔力や周囲にある魔力を集束させて、魔力をほぼ全部使う魔法だから、もう私には魔力はほとんど残されていない。
「はぁはぁはぁはぁ、あ・・・!」
フェイトちゃんは気を失ってしまったのか、海へと落ちていってしまった。
「フェイトちゃん!」
あのままではいけないと、すぐに助けに向かう。
沈んでいくフェイトちゃんと“バルディッシュ”を抱えながら、海から脱出した。
ぐったりしてるフェイトちゃんに、「フェイトちゃん」って呼びかける。
「っ・・・ん・・・」
フェイトちゃんが小さく呻いた。気が付いたみたいだ、よかった。
「あ、気付いたフェイトちゃん? ごめんね、大丈夫?」
「・・うん」
心配して声をかけると、フェイトちゃんは頷いてくれた。
「私の勝ち、だよね」
「そう、みたいだね」
私は微笑みかけて、一応確認を取っておく。
フェイトちゃんは少し辛そうだけど負けを認めてくれた。
≪Put Out≫
“バルディッシュ”が、フェイトちゃんが負けを認めたと同時に、ジュエルシードを出した。
よかった。これでもうフェイトちゃんたちと争わなくてすむんだ。
「フェイトちゃん、飛べる?」
そう言うと静かに私から離れる。きちんと“バルディッシュ”も返す。
『よし、なのは、ジュエルシードを確保して、それから彼女を―――』
クロノ君からの念話が途中で途切れる。
何かあったのかと思っていると、急に空が曇りだして雷が落ちてきた。
(このままじゃ、フェイトちゃんがあの時みたいに!!)
でもフェイトちゃんに当たる前に、私たちの頭の上に蒼い雷で出来たクモの巣のようなものが現れた。
「っ!? これはルシルの魔術!!」
私とフェイトちゃんは、その結晶のおかげで無事だったけど、驚いていたその隙にフェイトちゃんのジュエルシードが転送されてしまっていた。
こうなっては私の出来ることはなくなり、シャルちゃんたちと合流するために、地上へと降りた。
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
私たちはフェイトたちを連れてアースラへと帰艦した。
ルシルとフェイトは、簡素な服に着替えた上で手錠をされてしまっている。
(かつての大英雄の手錠姿が見られるなんておかしな話よね)
ブリッジに到着すると、リンディ艦長がルシルたちのもとへと来て挨拶をした。
「お疲れ様。それから初めまして、フェイトさん、ルシリオン君。
このアースラの艦長、リンディ・ハラオウンです」
フェイトは口を閉ざしたままだけど、ルシルは挨拶した。
「魔術師ルシリオン・セインテスト・フォン・シュゼルヴァロードです。
と言っても調べているのでしょうが礼儀ですので」
私はルシルたちからモニターに視線を移し、現在の状況を確認する。
プレシアの拠点へと進攻するアースラの魔導師(武装隊だっけ?)たち。
「なのは、悪いがフェイトを別の部屋などに連れて行ってくれないか?
構いませんよねリンディ艦長?」
ルシルはフェイトに母親が逮捕される場面を見させないために、二人に確認する。
「待ってルシル。私は大丈夫だから、逃げたくないから」
フェイトはそう言って断る。
それと同時に、武装隊がプレシアを包囲して投降する様に呼びかけた。
頬杖をつき、不適に笑みを浮かべるプレシアの態度は余裕で満ちていた。
プレシアのもとに数人残し、残りは玉座の先へと調査する為に入っていく。
そしてブリッジのモニターに映ったのは、フェイトに似た、いや、少し幼いふうに見えるがまったく同じ姿の少女が水槽のようなものに浮いていた。
私とルシル以外はみんな驚いているみたいだ。
「私のアリシアに近寄らないで!」
プレシアはアリシアの水槽の前に立ち、武装隊の何人かを吹き飛ばす。
武装隊の連中は、プレシアの今の行為を見て構わず攻撃に移った。
だがプレシアは何とも思わないのか、それを容易く防ぎ、手の平を前に差し出す。
「危ない! 防いで!」
リンディ艦長の声がブリッジに響く。
だけどその指示は少し遅かった。プレシアの広範囲の放たれた雷撃に、武装隊は全滅した。
(なるほど。あれが大魔導師と謳われた力というわけね)
リンディ艦長は気を失っている武装隊の送還を指示している。
「アリ・・・シア?」
フェイトが何かしらの名前を呟く。おそらくあの少女の名前なのだろう。
プレシアはゆっくりと水槽へと近づき、手を添えて撫でる。
それはまるで、あの少女を優しく撫でるかのような仕草だった。
「もうだめね、時間が無いわ。たった十個のロストロギアでは、アルハザードに辿り着けるかはどうか分からないけど・・・」
私は不穏な単語を聞いた。プレシアはまだ何か喋っているし、エイミィも何かしらの説明をしている。
だが、今はあの単語のほうが気になる。
(アルハザード。やはりこの次元世界は、私たちの生きていた世界、みたいね)
此処に来てやっと確信する。何故十一柱存在する“界律の守護神”の内、私とルシルが呼ばれたのか、それは二人ともこの次元世界の出身だからだ。
次元世界と関連を持つからこその召喚。それだけじゃない。
前々から思っていた、何故魔法と魔術に類似点が多くあるのか。
それも説明がつく。現代の魔法のもとになっているのが、私たちの魔術だからだ。
(でもプレシア、残念だけどあなたの願いは叶わない。
何故なら、アルハザードはすでにルシルの手によって消滅したから)
そう、アルハザードは、天秤の狭間で揺れし者4th・テスタメント・ルシリオンによって、すでに宇宙の塵と化してしまっている。
「黙れ!!」
深く思考していたのを、ルシルの怒号によって意識を現実に引き起こされる。
よく聞いていなかったために話についていけなかったけど、どうせプレシアがルシルの逆鱗に触れるような発言でもしたのだろう。
全く愚かな女だ。
†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††
「黙れ!!」
フェイトを娘でなく、人としても見ていなかった上に、あの暴言。
プレシアのフェイトに対する異常なまでの拒絶の態度に、もっと考えていればよかったと、今になって後悔する。
あの少女、アリシアを復活させる為の、自分の慰みだけの、偽者の人形。
最後に放った「大嫌い」というフェイトを否定する言葉。
フェイトはそれを聞いて、“バルディッシュ”を取り落とす。
俺は今まで似たような、さらにはもっと酷いことを見て聞いてきたが、今回はいつも以上に頭にきた。
やはりフェイトにシェフィを重ねているからだろうか?
そうじゃない、それはもう吹っ切った。
俺はフェイトに笑っていてほしいから、幸せになってほしいから、それを邪魔しようとしているあの女が許せないんだ。
「死者の蘇生? 笑わせる! たかが人間風情が上位種どもの真似事か!?
全ての存在に対して死は、滅びは必然! それを無理矢理捻じ曲げようとすれば世界はそれを許さない!たとえ成功したとしても、蘇生された者は世界の意思によって消されるだけが定め!
それすら分からない貴様は二流もいいとこ三流以下だよ、プレシア・テスタロッサ!!」
禁呪の一つに指定されている死者蘇生の魔術式。
実際それを行った者を見たが、あれは酷かった。
蘇生した者、された者は世界の修正力によって瞬く間に殺された。
もちろん、その者たちの魂すら残されずに、だ。
そもそもプレシアは、アリシアの肉体だけを保存している状態だ。
アリシアの魂が無い以上、出来るのは姿かたちが同じだけのクローン、言うなれば双子のようなものにしかならない。
「っ!? 前にも言ったけど、世界が私たちに干渉すること――」
「哀れね」
「なに・・・っ!?」
シャルが俺の横に立ち、一言呟いた。
モニター越しにプレシアを見るその目は明らかな怒り、呆れ、憐憫、おまけに軽く殺気も混ぜた眼差しだ。
「ジュエルシードを使ってアルハザードへ行く? 馬鹿馬鹿しい。
確かにあなたのアリシアへの想いは本物なのでしょうね。
愛する人を取り戻したいって気持ちくらいは、私にも少し理解出来る。
でもね、あなた個人の意思で世界を滅ぼすような真似だけは許さない。
それにルシルが言ったとおり、死者蘇生は奇跡中の奇跡、成功はしない。
それでもやりたいなら、まずは人間をやめることをお勧めするわ」
シャルが、プレシアに向けて静かに告げる。
誰かを蘇らせたい気持ちは分かると、でもそれは許されないと。
シャルのその様子から、シャルが言っていることが真実で事実だと、プレシアを含めたみんなが、シャルをただ見ている。
そしてその沈黙を破ったのはプレシアだ。
「どうして、どうして!? 分かるならどうして私の邪魔をするの!!?」
「言ったでしょ、死者の蘇生は不可能だって。
それにジュエルシードを複数発動させれば、世界が滅びかねない。それを邪魔したいのは当然でしょ」
シャルとプレシアの会話は続き、最後にプレシアは壊れたかのように笑い声をあげた。
「フフ、ウフフ、アハハ、アハハハハハハハハッ!!!
もういいわ、こんなくだらない時間を過ごすのはもう御免よ。
あなたたちが何と言おうと、私はアリシアとともに全てを取り戻す!!!!」
そうしてあちらとの通信が一方的に切れた。
もう形振り構っていないため、急いで止める必要がある。
†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††
(はぁ・・、大切な人を生き返らせたい、か・・・)
世界は本当に気まぐれだ。ときには与え、ときには奪う。
それは誰にでも起こりうる事実で真実で真理。それを認めなければ生きてはいけない。
だけどプレシアはそれを認めようとしない。それがあまりにも愚かで、悲しかった。
私の説得もむなしく、プレシアはジュエルシードの強制発動に入るみたいだ。
こうなったら力ずくで止めるまで。
「クロノ、私がプレシアを止めてくるから、転送装置の準備お願い」
ルシル、あなたはフェイトの側にいてあげて。そのほうがいいと思うわ」
「待て、僕も行く! なのは、ユーノ、君たちにも手伝ってもらいたい!」
私はルシルとクロノに声をかけ、時の庭園へと行く準備を始める。
クロノは、なのはとユーノに協力を頼んでいるけれど、連れて行くにはあっちは少し危険だと思うけど。
「う、うん。でもフェイトちゃんが・・・」
なのははフェイトの様子を見て迷っているが、今はプレシアを優先するのが妥当だ。
だから私は、ルシルにフェイトを任せるって言ったんだけどな~。
「なのは、そこはアルフとルシルに任せなさい。
あなたよりずっと長い時間を過ごしたんだから、あなたよりは適任よ」
「・・・・うん。アルフさん、ルシリオン君。フェイトちゃんをお願いします」
なのはは渋々了承して、ルシルたちに返事を聞いてから転送装置へと向かった。
時の庭園へと着き、私はもう一つの準備を始めた。
「契約執行形態、顕現」
私は“界律の守護神”の外套と仮面、そして純白に輝く葡萄十字、神造兵装“第三聖典”を武装する。
ブリッジでの準備は“界律”との精神接続を行い、現状を確認することだった。
そうして分かったのが、
――能力値を20%まで使用可能、最大魔力をSSSランクに設定。
術式最大ランクをXXランクまで設定、魔力炉の完全正常稼動。
“界律の守護神”の能力の使用可、第三聖典の使用可。
世界を滅ぼすに足る蒼の石を完全に無効化せよ――
という風に契約内容が新たに追加された。
ジュエルシードによる世界消滅の阻止、契約執行方法は独自判断、といったものだった。
“界律の守護神”の能力が使えるなら、能力値や魔力量なんて意味がない。
あの力を扱えるのであれば、私たちに敗北は、“アポリュオン”を除いて存在しない。
「シャルちゃん、その格好ってルシリオン君と同じやつ、だよね?」
私の格好を見て、なのはが聞いてきたので、私は仮面とフードを外して答える。
「ええ、私のもう一つの姿よ。ルシルは漆黒を担い、私は純白を担うの」
そうしてその場で一回転して見せる。髪と外套がフワリと浮く。
それを見ていたクロノは、呆れたかのように口を挟んできた。
「お楽しみのところ悪いが、急いでいるんだけど」
「分かってるって、さてとあれが敵ね」
目の前に現れたのは、甲冑姿の兵隊たち。
なのはが攻撃の準備に入るけど、それを「待つんだ」と制止するクロノ。
さらに私がクロノの前に立って、戦闘に入ろうとしていたクロノを制止する。
「ここは任せて。なのはたちは今後のために魔力を温存しておいて」
「え? でもシャルちゃん」
「何を言っている。あれだけの数なら僕も手伝う」
二人がそう言っている間に、私は第三聖典を振るい、兵隊たちを破壊し尽くした。
脆い、脆すぎる。この程度では準備運動にすらならない。
「「「!!」」」
三人ともその一瞬の攻撃に唖然としている。
当然かもしれない。ただ十字架を振るっただけで、あれだけの数を殲滅したのだから。
「ほら、急ぐんでしょ?」
私たちは、クロノを先頭に時の庭園を進んだ。
†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††
シャルたちが時の庭園へと侵入したみたいだ。
俺とアルフは、フェイトを医務室へと運び、横にさせている。
医務室の壁に、時の庭園で暴れるシャル、そしてついていくなのは達の姿が映し出されるモニターが展開されている。
(フェイト。折れてくれるな。辛いかもしれないが、まだ終わっていいはずはない)
とは言っても、まだこんなに幼い子には、さっきのあれは刺激が強すぎた。
生気のない瞳をしたフェイトを、心配しているアルフ。
その姿は使い魔ではなく、フェイトの姉のような存在に見えた。
俺はフェイトの心を取り戻す為に言葉を選び、口にし始めた。
「フェイト。フェイトは本当にこのままでいいのか?
このまま何もせずに、ただここで眠っているか?」
「なっ!? ルシル、あんた!?」
アルフがフェイトの側から俺のもとへと来て、胸倉を掴み上げてきた。
それを甘んじて受けながら言葉を続ける。
「っく、フェイト、なのはは言っていたな、まだ始まっていないと。
俺も彼女に同意する。君の今まではプレシアの言うままに過ごしてきた。
ならば、もうそろそろ自分の思うままに生きてはみないか?」
「・・・私の・・・思うまま?」
フェイトはようやく反応を示したが、未だに瞳に輝きを取り戻してはいない。
アルフは俺を降ろして、フェイトの方へと顔を向ける。
「そうだ、自分の意思で自分のしたいことをする。
それが人間というものだ。このままプレシアと別れるのは嫌だろ?
確かにあのようなことを言われたが、まだ終わってはいないんだ。
まだ間に合うかもしれない。だから自分の今、心にある想いをぶつけろ。
君は、フェイトは間違いなくプレシアの娘なのだから」
「っ! 想いを・・・ぶつける・・・うん・・・。
そう、だよね、まだ私は始めてもいなかったんだ。
行こう、アルフ、ルシル。母さんのところに!!」
フェイトは立ち上がり、バリアジャケットを着て、そう宣言する。
「うん! うん! 行こうフェイト!」
アルフは泣きながらそう告げる。それにしてもよく泣くなアルフ。
フェイトはアルフの頭を撫でながら微笑んでいる。
「よし! そうと決まれば行こうか、フェイトファミリー!!」
俺は左拳を右の手の平にパシンと打ちつける。
「おおっ!!」
「は、恥ずかしいよルシル」
アルフはノリノリで右腕を高く上げ、フェイトは頬を少し紅く染めて呟く。
さて、俺も本来の力を顕現させようか。
「契約執行形態、顕現。及び、第三級断罪執行権限、解凍」
“界律の守護神”の外套と仮面、そして漆黒に輝くケルト十字型の2m近い錫杖“第四聖典”を取り出し、武装する。
そして生前から使っている執行権限を第三級に設定する。
すでに精神接続を終えて、現在の状況は確認してある。
契約内容は、
――ジュエルシードの使用による世界消滅の阻止。
能力値を18%まで使用可能、、最大魔力をSSSランクに設定。
固有魔術、攻性術式をX+ランクまで使用可、ただし威力はSSS設定。
魔力炉の完全正常稼動、神々の宝庫、英知の書庫、英雄の居館の使用不可。
“界律の守護神”の能力の使用可、第四聖典の使用可――
ということだ。ようやく固有攻性術式の使用が可能となった。
まぁ中級以上は未だに制限されたままだが、それで十分だろう。
こうなれば相手が人間である以上、負けはない。
唯一の例外として、“界律の守護神と対をなす敵である“絶対殲滅対象”には苦戦を強いられるが。
今は関係ないので、その考えは強制停止させる。
そして俺たちも、シャルたちに続き時の庭園へと進んだ。
†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††
私は今、プレシアのもとへは誰が行くか、クロノと言い争っていた。
こんなときまで言い争いなんて馬鹿みたいだけど、クロノは至って真面目だ。
二人して、機械の兵隊どもを片付けながら怒鳴りあっている。
「だから! 私なら何とか出来るって言ってるでしょ!」
「いいや! プレシアの逮捕は執務官である僕の仕事だ!
君はなのはたちと駆動炉の停止に向かえ!」
「えっと~、こんなことをしている場合じゃないような~」
「なのは、危ないから下がっていたほうがいいよ。
シャルの攻撃に巻き込まれたら、ただじゃ済まないような気がするから」
私はクロノを力ずくで黙らせる為に、一度攻撃をやめた。
けど、それがまずかった。なのはとユーノは五体の機械兵に囲まれた。
ああもう! クロノの馬鹿!! すぐさま援護に移ろうとした瞬間、
「サンダー・・・レイジィィィーーーー!!!」
頭上からフェイトの声とともに降り注ぐ雷撃。
その雷撃がなのはたちに襲い掛る機械兵を撃墜していく。
(ルシルはちゃんとフェイトの心を取り戻したみたいね)
だが、次々と小さいのやら大きいのが出てくる。
そして次に聞こえたのが、
「罪ある者に・・・汝の慈悲を」
久々に聞くルシルの固有魔術の術式名。
降り注ぐのは、蒼く輝く様々な形をした雷撃を纏う十数個の十字架群。
標的に当たると同時に、周囲に雷撃をばら撒き、連鎖的に標的たちを殲滅するルシルの雷撃系対軍攻性術式だ。
数十体といた機械兵は一瞬の内に消滅した。
いつ見ても凄いものだ。天使の名を冠する中級術式でこの威力。
ルシルの生まれた世界アースガルドの先史の王達の名を冠する上級術式はもっと凄い。
「フェイトちゃん!」
なのはが嬉しそうにフェイトへと向かっていく。
そしてルシルは、私のもとへと近づいてきた。
「ルシルもどうやら制限がいくつか解かれたみたいね」
私がそう言うと、ルシルは仮面を外しながら返事をしてきた。
「ああ、中級までの術式なら問題なく使えるけど、威力は制限されてる。
まぁテスタメントの能力が使えるなら、魔術は必要なくなってしまうが。
それより、何故未だにこんなところにいるんだ?
てっきりプレシアのもとへとたどり着いていたと思ったが・・・」
と返してきたルシルに苦笑いをしながら答える。
「いや~、クロノと少し揉めててね。
誰がプレシアのもとへ行き、誰が駆動炉を停止させるかって」
「うわっ、くだらない理由。う~ん、そうだな・・・よし。
フェイト、アルフ、悪いが俺とはここで別行動だ。
二人はシャルたちと共に、プレシアのもとへ行ってくれ。
俺一人で駆動炉を止めてくるから。フェイト、場所を教えてくれ」
ルシルはあっさりと一人で決めて、フェイトに駆動炉の場所を聞いている。
フェイトは少し戸惑っていたけど、諦めたように場所を教えている。
「大丈夫だよフェイト。すぐに追いつくから」
「うん。早く、戻ってきてねルシル」
「ああ、それじゃあみんな、フェイトとアルフを頼んだよ」
ルシルは返事を聞かないまま、駆動炉を目指して飛んでいった。
全ての行動が嵐のようなものだ。
なのはたちは、そんなルシルを見て呆然としたままだった。
「じ、じゃあ、僕たちはプレシアのもとへと急ぐぞ!」
置いていかれていたクロノがそう言い、私たちはプレシアのもとへと急いだ。
†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††
俺は駆動炉のある場所に来たが、行く手を阻む機械兵の群れが現れた。
さてと、さっさと終わらせて合流しないといけないから、悪いが一瞬で終わらせてもらうぞ。
俺は静かに歩を進め、ガラクタの群れに接近していく。
「輝き燃えろ・・・汝の威容」
術式名の宣告とともに発動するのは、展開した陣から蒼炎を噴き上げさせて範囲内の標的を例外なく燃やし尽くす、という天使の名を冠する中級術式。
機械兵十数体すべてが攻撃範囲内に入るように広げた50m弱の蒼光で構成された円陣より蒼炎を噴き上げさせ、一瞬でガラクタどもを焼滅させる。
一体も残っていないのを確認した俺は、駆動炉の停止に移った、が。
(しまった~、どうすればいいんだ?)
俺は詳しい方法が分からない為、力ずくで停止を試みた。
†††Sideルシリオン⇒リンディ†††
『す、すごい。ル、ルシリオン君の推定ランクはSSS相当。
シャルちゃんも同じSSSランク・・・艦長、これって・・・!』
「え、ええ。とんでもないものを見たわ」
私は今、時の庭園へと移動し、ディストーションシールドを張って、次元震の進行を抑えていた。
そんなときにエイミィから、シャルロッテさんとルシリオン君の本当の力と推定ランクを見せられた。
正直、私はあの二人に恐怖を感じた。あんなにも簡単に敵を倒し、それを当然と言わんばかりのあの二人の様子に。
「本当に味方で良かったとつくづく思うわね」
「そう、ですね。あの二人が敵になっていたと思うと・・・うわぁ、考えたくありませんよ」
私も当然それに同意する。あの二人が敵になっていたと思うと、管理局の魔導師では誰一人として太刀打ちできないだろう。
私はそんなIFを思いながら、現状維持のまま庭園に残る。
†††Sideリンディ⇒シャルロッテ†††
「直接会うので初めまして、プレシア・テスタロッサ。
あなたの計画を潰しに参りましたシャルロッテ・フライハイトです」
ハッキリとプレシアの邪魔をすると口にして面と向かう。
その言葉にプレシアの表情が怒りに歪む。
「時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。
プレシア・テスタロッサ、時空管理局艦船アースラへの攻撃、ロストロギア“ジュエルシード”の違法所持及び、使用の罪で逮捕する!」
クロノが私を押しのけ、罪状を口にした。
痛いっ、ていうかフェイトの前でそれはダメでしょう仕事人間?
「母さん・・・」
フェイトは私たちの前に出て、小さく母さんと呟く。
アルフとなのは、ユーノはそっとフェイトの側に佇んで、事の成り行きを見守っている。
「今更何の用? 私はアリシアとともに過去と未来を取り戻すのよ。
そうよ、取り戻すの、こんなはずじゃなかった世界の全てを!」
「ふざけるな! 世界はいつだって、こんなはずじゃないことばっかりだよ!
ずっと昔から、いつだって、誰だって、そうなんだ!!
こんなはずじゃない現実から、逃げるか、それとも立ち向かうかは個人の自由だ!
だけど、自分の勝手な悲しみに、無関係な人間を巻き込んでいい理由は、どこにもありはしない!!」
クロノはまるで実体験したかのような言葉を口にした。
それほどまでに一生懸命な姿は、
(へぇ、格好良いじゃないクロノ)
私は素直にそう思った。
けど、プレシアは聞く耳持たないといった感じで、こちらを睨む。
やはりダメか。プレシアにはもうアリシアの復活しか頭にないらしい。
だけど、それでもフェイトはさらに一歩を踏み出して、プレシアへと言葉をかける。
†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††
私はルシルに言われたように、自分の想いを母さんに伝えることにした。
今でないと、もう叶わないと思ったから。ゆっくりと言いたいことを考えて、伝わってくれるようにと祈りながら、私は口を開いた。
「母さん。私はあなたに言いたいことがあって来ました。
私は・・・私はアリシア・テスタロッサじゃありません。
あなたが創ったただの人形なのかもしれません。
だけど、私は、フェイト・テスタロッサは、あなたに生み出してもらって、育ててもらった・・・・あなたの娘です!」
それを聞いた母さんは笑い声をあげるけど、私は諦めない。
まだ伝えたいことがあるから、だから諦めるわけにはいかない。
「だから何? 今更あなたを娘だと思えというの?」
「あなたが、それを望むなら。それを望むなら、私は世界中の誰からも、どんな出来事からも、あなたを守る。
私は、あなたの娘としていたいから! だから・・・!」
言った、言い切った。私は自分の心を出し切った。
だから、だからお願い母さん。もうこんなことはやめて。
「・・・くだらないわ。やっぱりあなたは――」
「いい加減にしなさい!!」
「――なに?」
私の後ろからシャルロッテって子がそう叫んだ。
ゆっくりと私の隣にまで来て、白い大きな十字架を母さんに向ける。
「いい加減にしなさいと言ったの、もしかして聞こえなかった?
もう認めなさい。フェイトは間違いなくあなたの娘よ。
なにせ実娘のアリシアの遺伝子から何から同じなんでしょ?
それってつまり考えようによっては双子といっても過言じゃないのよ。
それでもあなたは愛するアリシアの妹を、フェイトを人形扱いするわけ?」
「っ!! 妹・・・? アリシアの・・・妹・・・この子が・・・?」
それを聞いた母さんは後ずさりして、アリシアを見る。
すごく動揺しているのがわかる。
「そうなことないわ・・・! 私の娘はアリシアだけよッ!!」
――サンダースフィア――
でもすぐにシャルロッテを睨み付けて、電気の魔力弾攻撃をしてきた。
でも私たちに当たる寸前で、雷撃は何の前触れもなく消滅した。
†††Sideフェイト⇒なのは†††
フェイトちゃんのお母さんは、フェイトちゃんとシャルちゃんの言葉を聞いても、戻ってはこなかった。
「どうして? どうして分かってくれないの?」
「なのは」
私は知らず知らずそう呟いてしまう。ユーノ君が私の肩に手を乗せて、心配してきてくれた。
シャルちゃんとフェイトちゃんの言葉に怒ったプレシアさんは、二人に当たるようにして雷の魔力弾を放ってきた。
だけど、私たちの目の前で消えてしまった。
シャルちゃんが左手を前に突き出していたから、たぶんシャルちゃんの力なんだろう。
「・・・そう、なら仕方がないわね。クロノ。フェイト力ずくでプレシアを無力化するけどいいわよね?」
シャルちゃんはクロノ君にそう確認した。シャルちゃん、笑顔だけど目が全然笑ってない。
クロノ君は一度フェイトちゃんを見て、シャルちゃんに返事をした。
「仕方がない。このままジュエルシードを発動されては堪らない。
戦闘を許可する。でも出来るだけ穏便に済ましてくれよシャル」
「ええ。フェイト、私が防御に回るから、あなたがプレシアを止めなさい。
普通は逆だけど、あなたが最後まで親の面倒をみなさい」
「「え?」」
私とフェイトちゃんの声が重なる。それって親子で戦えってこと?
「シャルちゃん、それはダメだよ! フェイトちゃんにそんな――」
「大丈夫、やります」
「――フェイトちゃん!?」
フェイトちゃんは私の言葉を遮って、お母さんと戦うと告げた。
アルフさんもそれには驚いているみたいだ。
「言っておいてなんだけど、本当にいいのね?」
「・・・はい」
フェイトちゃんの決意は固く、それでお母さんが諦めるなら、と眼が語っている。
「フェイトがそう言うなら、あたしもサポートするよ」
「ああ、僕もサポートに回ろう」
「なのは、ユーノ、二人はどうする?」
アルフさんとクロノ君がそれに付き合うなら、私だってやってやる。
私はユーノ君と一緒に頷き、フェイトちゃんのお母さんと戦うことに決めた。
†◦―◦―◦―◦―◦↓シャル先生の魔術講座↓◦―◦―◦―◦―◦†
シャル
「あら? 今回も来てくれたのね。ようこそシャル先生の魔術講座へ。
このコーナーの先生、シャルロッテよ」
なのは
「シャルちゃんの助手、なのはです♪」
ユーノ
「生徒のユーノです」
シャル
「さて。今回はゲストがいるから。入っておいで」
ルシル
「失礼するぞ」
なのユー
「あ」
シャル
「今回の話で使用されたのは私の魔術じゃなくてルシルのだから呼んだの」
ルシル
「高町なのは。ユーノ・スクライア。そういうことだから、少しの間邪魔をするよ」
なのユー
「あ、はい。よろしくどうぞです」
シャル
「それじゃ挨拶も終わったことだし。早速始めようか
――罪ある者に・・・汝の慈悲を――
――輝き燃えろ・・・汝の威容――
炎熱系対人・対軍中級攻性術式。足元に展開されたルシルの魔力光であるサファイアブルーの円陣――最大2km展開――から3~5mほどの蒼炎を噴き上げさせるコード・ケルビエル。
雷撃系対軍中級攻性術式。空から蒼雷で構成された十字架を複数降らせる対空地制圧術式。
対象にその十字架が当たると小さくなって周囲に拡散。さらに広範囲へと向かっていって被害を拡大させるコード・レミエルね」
ルシル
「ケルビエルは、空へ上がれない者に重宝する。レミエルは、空からの襲撃者に効果を発揮する。
どちらも効果範囲が大きいから、一対多数戦にもってこいというわけだ」
ユーノ
「あの、ルシリオンは広域型なのか・・・?」
なのは
「広域型?」
ユーノ
「読んで字のごとくだよ、なのは。広範に渡る攻撃魔法を扱う魔導師を広域型魔導師っていうんだ」
ルシル
「そうだな。どちらかと言えば広域型だな。俺は一対多数戦を得意とするから、有する魔術は魔術は広範囲に効果を発揮するものが多い」
シャル
「というわけよ。それじゃ今回はこのあたりでお終いにしましょう。またね」
なのユー
「あ、うん。ばいばーい♪」
ルシル
「なにかぐだぐだだな」
ようやくシャルとルシルの界律の守護神の力が解禁されました。
次回で無印完結としています。そういえば前回のあとがきで、今回でプレシアと決戦って書いてしまいましたが、書けませんでした、すいません。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。