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白と黒の決戦
†††Sideなのは†††


「四人とも無事でなによりです。よくやってくれましたね」

アースラへと帰艦した私たちは、以前アースラの人たちに紹介された部屋へと場所を移して、リンディさんから労いの言葉をかけられる。
 
「「はい!」」

私はその褒め言葉が嬉しくて、ユーノ君と同時に返事をした。
シャルちゃんだけは考え事をしているのか返事はしないで頷くだけ。
ゼフィ君の事の事を考えているのかも。

「艦長、今回の事件の首謀者と思われる人物を断定しました。エイミィ、モニターに例のデータを」

「はいは~い」

クロノ君はいつの間に調べたのか分からないけど、犯人が誰か分かったと言って、エイミィさんにモニターに映すように頼んだ。
そして映し出されたのは一人の女の人。
その女の人を見たリンディさんが「あら」って意外なものを見たような声をあげる。
知っている人なのかな?

「そう、僕たちと同じミッドチルダ出身の魔導師プレシア・テスタロッサ。
専門は次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師でありながら、違法研究と事故によって放逐された人物です。
登録データとさっきの攻撃の魔力波動も一致していますし、なによりゼフィが、あの雷撃を見たときにプレシアと叫んでいました。そして、あの少女フェイトはおそらく・・・」

「フェイトちゃん・・・あの時、母さんって・・・」

確かにあの時、母さんって言っていたと思う。でも様子が少し変だった。
リンディさんは「親子、ね」と、どこか悲しい顔をして、プレシアさんの映像を見つめる。

「そ、その驚いてたっていうより、何だか怖がってるみたいでした」

「ゼフィも随分と憤っていたしな。向こうは何かしら問題を抱えているのかもしれない」

うん。あの時のはゼフィ君、すごい怒ってた。
フェイトちゃんを心配していることがよく分かるほどに。
それにフェイトちゃんも。普通ならお母さんに対して、あんな顔も声も出さないはずだ。
あれはどう見ても怖がっているようにしか見えなかった。

「エイミィ、プレシア女史についてもう少し詳しいデータを出せる?
放逐後の足取り、家族関係、その他なんでも」

「はいはい、すぐ探します」

私もよくプレシアさんの映像を見る。
この人が、フェイトちゃんのお母さんなんだ。
フェイトちゃんが恐がって、ゼフィ君が本気で怒るくらいの・・・。

『なのは、もしフェイトが母親を恐れるようなことをされているなら、私たちが助けてあげないと、ね?』

シャルちゃんが念話でそう話しかけてきた。

『うん。もしそれが本当なら助けてあげたい。そして友達になりたいんだ』

私はそう答え、エイミィさんからの新しい情報が来るまで待っていた。


†††Sideなのは⇒ルシリオン†††


「くそっ! フェイトとアルフは何を考えているんだ!?」

俺は今、フェイトのバインドによって動きを封じられていた。
拠点へと帰り、フェイトの治療を終えたらこのような状態へされてしまった。
何故このようなことになったかというと、それは一時間前に遡る。

◦―◦―◦回想だ◦―◦―◦

マンションに帰りしばらく経った。
フェイトのダメージを治癒術式ラファエルで癒し、フェイトは謝罪と感謝を繰り返した。
そんなフェイトを見て、プレシアへの怒りでどうにかなりそうだったその時、

――リングバインド――

「えっとフェイト? これは一体なんの冗談だ?
俺はあまりこういう冗談は好きじゃないんだがな」

いきなりのバインド。あまりに突然、想定外だったので完全に捕まってしまっている。
出来るだけ優しく問いかける。フェイトは俯き、俺から視線をそらした。

「ごめんねルシル。私は母さんとルシルがこの前みたいになるのが嫌なんだ。
だから今日は、ここに残っていてほしいんだ」

フェイトはそんなことを言ってきた。
あの女の元へフェイトとアルフだけで行かせる? それは却下だフェイト。

「ダメだ、俺も行く。この前のようにはならないから大丈夫だ」

フェイトは何も言ってくれない。必死の説得も通じていないようだ。
顔を上げたフェイトは悲しそうな顔をして、「ごめんなさい」とだけだ。

「アルフ!? 君からも何か言ってくれ!」

唯一の頼みとしてアルフにそう言うが反応は薄い。
おい待て、まさか君までフェイトと同じようなことを言うんじゃないよな?

「・・・・ごめん、あたしの御主人様はフェイトなんだ。
フェイトがそうするって言うんだったら・・・あたしは」

最悪だ。こうなったら自力でバインドを破壊してやる。
そう思い、魔力を生成しようとすると

――エラー、現在魔力炉(システム)は重大なダメージにより修復中――

と頭の中に浮かび上がる。
まさか、あの時のクロノの砲撃がまずかったのか!?
確か非殺傷設定の魔法は肉体ではなく、体内の魔力器官にダメージを与える、というものだ。
だが、それはおかしい、砲撃の後に俺は複製術式を使った。
まさか時間差で効果が出た!?

(なんだこれは・・・俺ってこんなに弱かったか・・・?)

そんなことを考えている内に、フェイトたちは扉へと手をかけてた。

「待つんだ! フェイト! アルフ!」

◦―◦―◦回想終了だ◦―◦―◦

「ああもう! いつになったら魔力炉(システム)は復活するんだ!?」

部屋に俺の声だけが響き渡る。くそっ、無事でいてくれよ二人とも。


†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††


私たちはエイミィからプレシアの詳しい情報を聞き終えていた。
話を聞く限り、あまりいい人間ではなさそうだ。

(全く、こんな奴についてるなんて、ルシルは何を考えているの?)

どうせフェイトとアルフの為なんだろうけど、なんか納得いかない。
ルシルなら、プレシアをどうにかして、フェイトとアルフに別の道を見出させることくらい出来るはずだ。
それとも、そんな手段が行えない事情があるのだろうか・・・。

「あなたたちは、一休みしていたほうがいいわね」

とリンディ艦長が私たちに言ってきた。
私としては必要がない。それよりルシルたちが気になるから残りたいけど。

「あ、でも」

どうやらなのはも同じ考えのようだ。

「特になのはさんとシャルロッテさんは、あまり長く学校を休みっぱなしというわけにもいかないでしょう。
一時的に帰宅を許可します。ご家族と学校に少し顔を見せておいたほうが良いわ」

そうだった、私は小学生なんだっけ?
こういうときには、枷になる肩書きみたいだ。
まぁ学校に通う、なんて生まれて初めての経験だから、嫌なわけじゃないのだけれど。


†††Sideシャルロッテ⇒アルフ†††


「フェイト!? フェイト!!」

あたしはあの女に傷つけられて倒れているフェイトのもとへと駆け寄る。
やっぱりこんなことになるなら、無理にでもルシルを連れてくるべきだった。
ごめん、ごめんよルシル。あたしはフェイトを守れなかった。

「あの女、もう我慢できない。ごめんフェイト、あんたの母さんは」

あたしが殺す。そう覚悟を決めて、あの女の部屋へと向かう。
あたしはあの女の部屋の壁をぶち破り、殴りかかりにいった。

「はあぁっ!!」

だけど、この女は振り返りもせず、シールドであたしを弾き返してしまう。
これで諦めるとでも思っているのか!?
再度、殴りかかり今度は弾き返されることなく、バリアブレイクでシールドを破壊して胸倉を掴みあげる。

「あんたは母親で! あの子はあんたの娘だろ!? 
あんなに頑張っている子に、あんなに一生懸命な子に、なんであんな酷いことができるんだよ!?」

今まで溜まっていた鬱憤が口から飛び出てくる。
だというのに、この女はそんなことはどうでもいいっていう顔をしている。
あたしはその表情を見て、一瞬隙を生み出してしまった。母親がする表情じゃないよ、今の。
そしてこの女は、あたしの腹に攻撃を放ってきた。
避けきれるような距離でも態勢でもなかったから直撃。

「っが・・・っ!!」

そのあまりの威力と衝撃で吹き飛ばされて、壁に叩きつけられた。
それでも、まだ、まだ諦めない、諦めてたまるか!

「あの子は使い魔の作り方が下手ね、余分な感情が多すぎる」

「くっ、フェイトは、あんたの娘は、あんたに笑ってほしくて優しいあんたに戻ってほしくて、あんなに! ぐっ・・!」

ダメだ、動けないほどにダメージを受けたみたいだ。
あの女が杖を出し、魔法を放とうとしている。

「邪魔よ、消えなさい!」

こんなところで消えてなるもんか! 
放たれた魔法を受けるギリギリのタイミングで、転移して逃げる。

(ルシルのもとへ転移しなきゃ。ごめんフェイト、必ずルシルを連れて助けに・・・)

転移先を正確に設定する前に気を失ってしまい、そのまま転移した。
ルシル。もしフェイトが来たら、守ってやってくれよ・・・。


†††Sideアルフ⇒なのは†††


私とシャルちゃん、ユーノ君は私の家へと帰ってきた。
翌日、学校へ行って久しぶりにアリサちゃんとすずかちゃんと話をしていると、アリサちゃんがアルフさんの特徴と合う大型犬を拾ったと言ってきた。

『シャルちゃん、もしかして』

『ええ、あちらは何かまずいことが起きているようね』

放課後、アリサちゃんの家へと行くことになった。
件の大型犬を見に行くと、やっぱりアルフさんだった。

『やっぱりアルフさん。その怪我どうしたんですか? 
それにフェイトちゃんはいないみたいですけど・・・・?』

『ユーノ、話はあなたが聞いて。私たちはアリサたちと一緒しないといけないから』

シャルちゃんがユーノ君に話を任せると言いながら、私の手を引っ張って、

「アリサ、新しいゲームってやつを早くしよう。すごく楽しみなんだ。
それに下手に構うと傷の治りが遅くなるかもしれないし、今は、ね」

「え? あ、うん」

アリサちゃんの屋敷へと向かった。


†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††


私となのははトイレと理由をつけて、アリサたちから離れてアルフの話を聞いていた。
聞く限りではフェイトは、プレシアにかなりの虐待を受けているみたいだ。
それはおそらくルシルも知っているはず。よくプレシアを殺さずに耐えたものだ。
もし私がフェイトたちの協力者だったら、プレシアはすでにこの世にはいないだろう。

『ねぇアルフ。ゼフィってそれを見て何もしなかったの?』

一応尋ねておく。ルシルならきっと干渉しているはずだから。
私はいつかのために、ルシルに対する良い印象を管理局に与えておくことにした。

『ゼフィはもちろんそれを止めようとしたさ、でもフェイトが大丈夫って言って聞かないんだよ。
ゼフィはいつもあたしたちのために行動してくれた。
フェイトとあたしの盾になるとかってさ、本当にいい奴なんだよ。
それなのにあたしたちは、プレシアと会わせないためにゼフィをバインドで拘束して、動けないようにしてからあの女のところへ行ったんだ』

アルフからようやく聞けたフェイト組の真実。
あはは、ルシルもよく貧乏くじを引くわね~。
女運の悪さはこの世界でも健在というわけだ。

『そう、ありがとう。さてと、これからどう動くつもりクロノ?』

私はクロノに今後の行動指針を確認する。

『決まっている、プレシア・テスタロッサを捕縛する。
アースラを攻撃した事実だけでも、逮捕の理由にはお釣りがくるからね。
だから僕たちは、艦長の命があり次第、任務をプレシアの逮捕に変更することになる。君たちはどうする?』

聞かれるまでもない。なのははフェイトの為に、私はルシルの馬鹿を連れ戻す為に。
それに私もフェイトの事は気がかりだ。母親のために頑張る。たとえ拒絶されて、虐待されてもだ。
なんて健気。なのにプレシアはそれを認めようとしない。それは許せない。

『私はフェイトちゃんを助けたい! アルフさんとゼフィ君の思いと、それから私の意思。
フェイトちゃんの悲しい顔は、私もなんだか悲しいの。だから、悲しいことから助けたいの。
それに友達になりたいって伝えたその返事も、まだ聞いていないから』

『わかった、フェイトのことは君に任せる。シャル、君はどうする?』

『愚問ね。同じ魔術師である以上は私がいないと、そっちがまずいでしょう?』

『そうだな、君たちの魔力と技術を使えるのは正直ありがたい。もうしばらく僕たちに力を貸してくれ』

やることも覚悟も決まった。明日アースラに帰艦する予定になっている。
その前にルシルたちをどうにかしないと。
アルフから全てを聞いた翌日、何度も彼らとぶつかった海鳴臨海公園へと来ている。
もちろんアルフも来ている。だけど、クロノはアースラで待機となっている。

「ここならいいよね・・・。出てきて、フェイトちゃん、ゼフィ君」

なのはが気持ちを籠めて二人の名前を口にする。

≪Scythe Form≫

“バルディッシュ”の声と共に現れたのは電灯の上に立つフェイト。 
剣の蒼翼12枚を神々しく広げ、フェイトの横に浮遊しているルシル。
しかも今回は大戦時に着ていた戦闘甲冑――黒を基調としたロングコート。縁には銀の装飾が施されている。
前を留めるのは銀の金具で、一つ一つにルーン文字が刻まれている。
背には、中心に十字架があり、その四方から四つの剣が伸びていて、その剣を繋げるように三重の円環があり、その円環の間にいくつものルーンが刻まれているアースガルド魔法陣が描かれている。
インナーの長衣も黒一色。前立ての赤いラインには多くのルーンが刻まれている。
パンツもまた黒一色のズボン。いくつものベルトが巻かれて、これにもルーンが刻まれている。
黒の編み上げブーツに銀の装甲が装着されている――と、彼の神器“神槍グングニル・レプリカ”を武装している。

(本気、ということね)

「フェイト、もうこんなことはやめよう? あんな女の言うことなんて聞いちゃダメだよ。  
フェイト、このまんまじゃ不幸になるだけじゃないか。
それにゼフィも、もういいよ! これ以上続けたらあんただって・・・!」

アルフはルシルとフェイトのことを、本当に心配している。
その悲痛な叫びが、なのはとユーノの表情を曇らせる。

「ごめんね、アルフ。それでも私は、あの(ひと)の娘だから」

「俺もアルフの意見には賛成だ。だが、フェイトがまだ続けると言うのなら、俺はそれに協力する。
すまないなアルフ。君の思いには応えられない」

ルシルの発言にはみんなが驚いている。
まぁルシルの性格ならそういうのは分かっていたけど、それでも尚フェイトに協力するというのは聞き捨てならない。
そうして私の頭の中の何かがキレた。

「いい加減にしなさい!! ルシル!!」

私は突発的にルシリオンの愛称を叫ぶ。
しまった、と思ったが、どうせそう遠くない内に知られるのだから、それで良しとした。
けどそれを聞いたフェイトとアルフは案の定驚いている。

「シ、シャル? どうしてあいつの・・・名前を・・・?」

アルフが動揺しながら聞いてきたので、私は正直に答える。

「それは、彼が、この私、白きシャルロッテと対を成す黒きルシリオンだから。
彼は私のパートナーだったやつだからよ。本当ならこのまま連れ戻したいけど、もういい。
一度ボコボコにしてから強制連行することにしたから」

「ゼフィ君・・・ううん、ルシリオン君とは本当に知り合いなの、シャルちゃん?」

なのはが驚いた表情のままで、本当に知り合いだったのか、と聞いてきた。
それはそうだ、今までのことを考えたら信じられない話だろう。
けど、私は誤魔化さないし、もうこれ以上騙していたくはない。

「ごめんなのは、本当のことなのよ。私は彼と知り合いなの。
あなたとユーノに、ルシルの、彼女たちの仲間だと思われて嫌われたくなかったから嘘を吐いてた。
後でならどれだけ罵ってくれてもいい。だけど今は、今だけはあなたたちの味方として一緒に」

戦ってほしい、と最後まで言えなかった。
たとえ嫌われるようなことになっても仕方ない嘘をつき続けてたから。

「そっか、うん。・・・確かに嘘を吐かれていたことは少しショック、かも。
だけどね、それでもシャルちゃんは私の大事な友達だよ。だからそんな悲しいことを言わないで」

なのはが笑顔でそう言ってきてくれた。正直泣きそうだけど、何とか耐える。

「・・・ルシル」

フェイトがルシルの顔を見て戸惑っている。
ルシルは私たちを見たままで、口を開く。

「どうするフェイト? 俺がシャルのパートナーだったというのは真実だ。
もう信用出来ないと言うのなら、協力関係を切ってもらってもいいんだ」

「ううん、今までのルシルを見ているから、私は大丈夫だよ。
でも、後でいっぱい文句を聞いてもらうから」

「そうか、なら最後まで付き合うよフェイト」

どうやらあっちも現状のまま共に戦うようだ。ならば、今回でケリをつけるまで。

「フェイトちゃん、ルシリオン君。お互いのジュエルシードを賭けて戦おう。
私とフェイトちゃんは、全てそれからだよ。私たちの全てはまだ始まってもいないから。
だから、本当の自分を始めるために、始めよう。最初で最後の本気の勝負・・・!」

なのはからの宣戦布告。フェイトもそれに乗り気なのか“バルディッシュ”を構える。
そうして二人は空高く飛んでいった。

「さて、フェイトとなのはも始めたし、俺たちも始めようか、これからを」

「ええ、そうね、始めよう、これからを。でも手加減はしないから」

――真紅の片翼アインス・ルービン・フリューゲル――

私は片翼を出して、空戦モードへと移行する。

「よく言った。こちらも本気を出させてもらう」

ルシルが“グングニル”を手にゆっくりと降りてくる。
そうして私たちは、なのはたちの邪魔にならないように遠くへと場所を移す。
かなり遠くへ場所を移して、対峙する私とルシル。

「「参る!!」」

その言葉を戦闘開始の合図として、私とルシルは最後の戦いを始める。
ルシルは一瞬で距離を詰めて、“グングニル”を薙ぐと同時に光の波を出現させる。

「っ、はぁぁぁッ!!」

それを切断するものの、“キルシュブリューテ”を持つ右手が痺れる。

「ぼさっとしている暇はないぞ、シャル!」

≪我が手に携えしは確かなる幻想≫

「くっ、まだまだぁ!」

ルシルは自分を軸にして回転しながら“グングニル”を振り回している。
私もルシルの動きに合わせて回転しながら、それを避けては捌くという行動で防ぐ。
二つの神器が衝突を繰り返し、周囲を照らし出すほどの火花が飛び散らせる。
ルシルは一度間合いを取り、人差し指を向けて中距離系術式を発動しようとしている。
が、黙って見ているつもりはない。

「双牙氷風、双牙炎雷、双牙凶閃・・・双牙奥義、滅牙翔破六天刃!!」

属性同時使用の最大術式、6つの属性の刃を六閃放つ。
これでルシルの術式の出がかりを潰せると思った。

黒虚閃(セロ・オスキュラス)

(あっちの方が早い!?)

私たちの間で衝突した力は、爆発を起こして周囲のものを薙ぎ払った。
ルシルは続けて、腕を振り降ろすようにして術式を発動させる。

――砂漠の金剛宝刀(デザート・ラスパーダ)--

砂で出来たいくつもの刃が襲い掛かってくる。

「このぉぉッ!!」

――風牙真空烈風刃(エヒト・オルカーン)――

真空の刃を複数巻き込んだ風圧の砲撃で砂の斬撃を吹き飛ばして、ルシルのもとへと全力で疾走する。
だけどルシルは、私の行動を逆手にとり、両腕に炎が渦巻かせて攻撃態勢に入っていた。

「やぁいらっしゃい、不用意に近づいたのがまずかったな・・・!」

――煉牙灼星 爆帝 双焔掌――

「な・・・!?」

以前受けた風牙裂千 空帝 双嵐掌の炎熱バージョンだ。
これは受けると本当にまずい。勢いがつきすぎて停止は不可能、なら盾を出すまで。

――我が心は拒絶するゼーリッシュ・ヴィーター・シュタント--

ルシルの掌打と私の対物障壁が激突し、私は攻撃を受けることなく踏みとどまれた。
だけどルシルはさらに追撃を仕掛けてきた。

――光牙輝星 天帝 双煌掌――

その閃光纏う両の掌底の一撃によって、一瞬で盾にヒビが入り所々が砕けていく。
これでダメなら、もう一つの盾を用意するまで。

「これなら・・・どう!?」

――真楯ハイリヒ・フライハイト――

真紅に輝く円にフライハイト家の紋章が浮かぶ私の最高の盾。
魔力が足りない為に防御力は低いが、ルシルの複製術式には遅れはとらない。
ルシルの攻撃と私の盾が拮抗したのを見て、私は反撃の準備に移る。
“キルシュブリューテ”の刀身に真紅の魔力を纏わせ、

「いっけぇぇーーーッ!」

――光牙烈閃刃リッター・ネーメズィス――

縦一閃に振り下ろすことで放たれる真紅に輝く剣状砲撃。
至近距離での一撃を放ち、これで決着させようとしたけれど、ルシルが光の粒子となって地面へと消えた。

(見失った!? 一体どこから攻撃が・・・!)

―――リベリアス・リベンタンス―――

「なっ!? ぐっ!? があはぁ!?」

私の真下から光の粒子のままで突き上げ、また真上から撃ち降ろしてきた。
まずい、これはかなり強烈だ。意識が少しとびかける。

「ふらついている場合か?」

――パーフェクト・シンメトリー――

ルシルの翼から巨大な光球が生まれ、私に向けて叩きつけてきた。
私は必死に転がるようにして直撃を避けるけど、着弾と同時に生まれた衝撃波で吹き飛ばされる。

「ハァハァハァ、くっ、このままじゃ・・・!」

負ける、と脳裏に浮かぶ。だがそれを振り払い、“キルシュビューテ”を構える。

「諦めない、諦めない、諦めない! 私は騎士! 膝を屈せぬ誇り高き者!」

「むっ!?」

再度接近して、斬撃を放ち続ける。
ルシルは“グングニル”を振るって、辛うじて防いでいるが次第に押されていく。
複製の術式や武装を顕現させる為の呪文を声に出させない為に、勢いだけで立ち向かう。

「チッ、またこの策で俺の複製術式を防ぐか。もう少し考えたらどうだ?」

≪我が手にたずさ――≫

「させない!」

私は瞬時に鞘を作り出して、ルシルの喉もとを打ち付ける。

「がっ・・・!?」

さすがにこれは効いたようだ。ルシルは“キルシュブリューテ”にばかり気をとられていた。
その所為で、私が鞘を持っていることを忘却していたようだ。
のどにダメージを受けて声が出せなくなった以上、詠唱が出来ない。つまり複製術式は使えない。
ルシルは急いで間合いを取ろうと離れるが、私はそれを許さない。

「はぁぁぁああああ!!」

ルシルは私の追撃を回避するけれど、蒼翼の左側だけは犠牲になった。
ガラスが砕けた音とともに散っていく無数の蒼い羽だったが、突如その羽が襲ってくる。

「っ!? キャァァァ!!」

私はそれを防御も回避することも出来ずに、全弾命中させられた。
戦闘甲冑がボロボロになってしまい、所々の肌が見えてしまっている。

「や、やってくれたわね・・・」

『ハハ、油断のしすぎだよシャル』

私は膝をつき、ダメージの回復をしながら戦闘甲冑の損傷を修復する。

≪我が手に携えしは確かなる幻想≫

ルシルはかすれた声で、かの呪文を口にする。
そして私に手の平を向けて術式を宣告する。

「くらえ、凶神の(テネブライ)―――」

「こんのぉぉぉぉ!!!」

私は回復と修復を途中でやめて、真紅の片翼を纏いルシルへと突撃する。
純粋な破壊の力の塊として、ルシルを潰しにかかるためだけの突撃。
ルシルは私の行動に驚き一瞬動きを止め、攻撃ではなく回避行動をとって上空へと逃げるが、その先には、

「何だと・・・!?」

(決まった。私の勝ちね、ルシル)

私が先に仕掛けておいたトラップ。
不可視である風の圧縮爆弾(トーベン・ヴート)の直撃による爆風によって、ルシルはどこかへと吹き飛ばされていった。

「ふぅ、まぁ戦闘甲冑を着ているんだから死んではいないでしょ」

ルシルとの戦いは、私の勝利という結果で決着した。
さてと、なのはたちの様子を見に行きましょうか。


†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††


ルシルとシャルロッテと名乗った子が、遠くへと離れていった。
シャルロッテという子は、私と出会う前のルシルのパートナーって言ってた。

(パートナー、か。ルシルとどれくらいの間、一緒にいたのかな?)

そう考えると胸のあたりがチクチクとしてきた。
初めての感覚に戸惑うけど、ルシルはあの子より私と一緒にいてくれることを選んでくれた。
そう思うとさっきのチクチクがドキドキになった。

(うぅ、にやけちゃうよ)

だめだ、今は白い子との戦闘が大事だ。
私は白い子に向かって、フォトンランサーを撃つ。
白い子も同じ射撃魔法で私を狙ってきた。

――ディバインシューター――

――フォトンランサー――

「ファイアッ!」

「シューット!」

お互いを撃つために、魔力弾が交差して向かってくる。
あの子は全弾回避。私も回避行動を取るけど追尾してくる。
振り切れないとわかったために、シールドを張って防御に移る。
防ぐことに成功したが、あの子は再度射撃魔法の発射準備を終えていた。

「シューット!」

私は魔力弾に対処しながら接近し、直接あの子にダメージを与えることにした。

≪Scythe Form≫

バルディッシュをサイスフォームへと変え、魔力弾を切り払いながら接近する。
白い子は回避より防御を選んでシールドを張る。
衝突する刃と盾。私が前方に気を取られていると、背後から魔力弾が襲い掛かってきた。
けど私は振り返ることなく、難なくシールドを張って防御した。
そして気付く。周囲を見渡しても白い子がどこにもいない。

(いない? 一体どこに・・・?)

≪Flash Move≫

あの子のデバイスの声だけが聞こえる。
少し遅れてあの子の声が聞こえた。

「せぇぇぇい!!!」

あの子は、私の頭上に移動していた。
そうして突撃しながら私に向けてデバイスを振り下ろした。まさか魔力付加打撃だなんて。
私はその姿に一瞬だけ硬直し、シールドではなく“バルディッシュ”を盾にした。
魔力の爆発による衝撃波が周囲を照らし出す。私はその光の中を進み、あの子へと切りかかる。

≪Scythe Slash≫

だけどあの子はギリギリで回避して、私はあの子のリボンだけを少し裂いただけだった。
けど無駄だ。あの子が逃げた先にはすでにフォトンスフィアを用意している。

――フォトンランサー――

≪Fire≫

“バルディッシュ”の合図とともに、あの子へと襲い掛かるフォトンランサー。
あの子は咄嗟にシールドを張り、何とか耐えている状態だ。
正直、今ので決まると思っていたけど、上手くはいかないものだ。

(初めて会ったときは、魔力が強いだけの素人だったのに、もう違う。
速くて強い。迷っていたら・・・・やられる)

母さんのためにも、私についてきてくれたルシルのためにも、私は負けられない。
だから私は、私の最強の魔法を放つ決意をした。


†††Sideフェイト⇒なのは†††


フェイトちゃんの周囲に電気を放つスフィアがたくさん現れたので、
私は“レイジングハート”を構える。だけど、その瞬間にバインドに捕まってしまった。

『ライトニングバインド!? まずいフェイトは本気だ!』

『なのは! 今すぐサポートを!』

私が捕まったのを見て、アルフさんの焦りと、ユーノ君が念話で私を助けると言ってきたので。

「だめぇぇっ!!『アルフさんもユーノ君も手を出さないで!
全力全開の一騎打ちだから、私とフェイトちゃんの勝負だから』」

私はそれを拒否して、このまま戦わせてくれるようにお願いした。

『でもフェイトのそれは本当にまずいんだよ!』

「大丈夫、平気!!」

絶対に誰にも邪魔させない。この戦いは私とフェイトちゃんだけのものだから。

「アルカス・クルタス・エイギアス、疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。
バルエル、ザルエル、プラウゼル・・・・!」

フェイトちゃんが長い呪文を唱え終えた。

「フォトンランサー・ファランクスシフト・・・。撃ち砕け、ファイア!!」

フェイトちゃんが腕を振り下ろして私に指を向ける。
その号令と共に無数のフォトンランサーが襲い掛かってきた。

「レイジングハート、お願い」

私はフェイトちゃん用に組んでいたライトニングプロテクションを直撃の瞬間で張った。
たぶん、フェイトちゃんからは見えていないはずだ。


†††Sideなのは⇒フェイト†††


「フォトンランサー・ファランクスシフト・・・。撃ち砕け、ファイア!!」

私はあの子に、最強の魔法を放った。
本当ならここまでしたくなかったけど、あの子がすごく手強くなっていたから。
だから手加減をすると私が負けることになると思ったから。だから使った。

「くっ・・・!」

心が痛む。私と友達になりたいって言っていたあの子を撃ったことに罪悪感が生まれる。
けど私は負けられない。止めの一撃として残っているフォトンスフィアを集めて、再度フォトンランサーを撃とうとして構える。
だけど白煙の中から無事な姿で浮遊するあの子を見た。

(うそっ!? ファランクスシフトを受けたのに、あれだけのダメージしか与えられていない!?)

これだけのショックを受けたのは、ルシルと戦ったとき以来だ。

「痛ったぁ・・・。撃ち終わると、バインドってのも解けちゃうんだね」

そう言ってデバイスを私に向けて砲撃の準備に入った。

「今度はこっちの≪Divine≫番だよ!≪Buster≫」

放たれる桃色の砲撃。私は構えていたフォトンランサーをそれに向けて放つ。
だけど、そんなものは意味は無いと言わんばかりに消されてしまった。
私は咄嗟にシールドを張り、防御に全力を注ぐ。

「(直撃! でも耐え切る。あの子だって耐えたんだから!)っ、うぐっ、ああ・・・!」

威力がハンパじゃなかった。これだけの砲撃をほとんど溜めもしないで撃つなんて、あの子はとんでもない魔導師だ。
私は撃墜寸前までいってしまったけど、でもあの砲撃を耐え切った。
耐えきって見せた。でももうボロボロだ。
もう何も出来る気がしない。けど、それはあの子も同じはず、そう思った。

「受けてみて、ディバインバスターのバリエーション」

その言葉と共に、現れた魔法陣へと光が集まっていく。
それはまるで星の光のような綺麗なものだった。
私は残る力で何とかしようとしたが、今度は彼女のバインドが私を捕える。

「バインド!?」

外れない、外せない。これはまずい。あんなのを受けたらどうなるか分からない。

「これが私の全力全開! スターライト・ブレイカーーー!!!!」

とてつもなく巨大な桃色の閃光。もうダメだ、私はこれで終わる。
光に飲み込まれた後、私は海へと落ちた。

(ごめんねルシル、ごめんなさい母さん)


†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††


「俺たちの負け、みたいだな」

俺は自力でシャルたちのもとへと戻ってきた。
正直、シャルがあんな手を使ってくるとは思ってもいなかったために油断した。
いや、それは言い訳にすぎない。この大一番で負けたことは消えない事実だ。

「おかえりルシル。どこまで飛ばされていたの?」

「・・・ほっとけ。それよりアルフ、今まで騙していてすまなかった。 
謝ったところで許してもらえるとは思っていないが、それでも謝っておく」

俺はアルフに頭を下げて、心の底からの謝罪を口にした。

「フェイトが言ってただろ? 今までのあんたのことを思えば、そんなことはどうでもいいって。
あたしもそうだよ、ルシル」

アルフは本心からそう言ってきているようだ。本当にいい奴だよ、君は。

「そうか、ありがとう。それじゃあフェイトたちを迎えに行こうか」

俺たちは浮遊している二人に視線を向ける。
二人で何か話しているようだが、俺たちには聞こえない。

だが、そこで再びプレシアの魔法がフェイトに襲い掛かろうとしていた。
しかし俺だって、何の対策も考えていないわけじゃない。

「ただ祈りて、其は高みの盾とならん」

蒼雷で構成された盾を、二人の真上に顕現させた。
プレシアの雷撃が盾と衝突し、しかし雷撃は避雷針の代わりとなった盾によってフェイトを襲うことなく、周囲へと拡散していった。



†◦―◦―◦―◦―◦↓シャル先生の魔術講座↓◦―◦―◦―◦―◦†



シャル
「また来たのね。ようこそ、シャル先生の魔術講座へ」

なのは
「ねぇシャルちゃん。また来たのね。って毎回思うんだけど、このコーナーってあとがきじゃないからさ、来たくなくても来ちゃうんじゃ・・・」

ユーノ
「なのはの言うとおりかも」

シャル
「・・・・・・・さて、今回も私の魔術が出て来たのだけど」

なのユー
(スルーした!?)

シャル
「ルシルとの決戦で新しく使われた魔術は、

――奥義・滅牙翔破六天刃――

――真楯ハイリヒ・フライハイト――

――光牙烈閃刃リッター・ネーメズィス――

――圧縮爆弾(トーベン・ヴート)――

の四つね。まず、滅牙翔破六天刃ね。これは、属性複数同時使用の術式、双牙の奥義よ。
炎熱、氷雪、雷撃、風嵐、閃光、闇黒、6つの属性の魔力刃を複数放つというもの。
私の保有する最高の防性術式の真楯ハイリヒ・フライハイト。意味は聖なる自由。
閃光系魔力を圧縮して、西洋剣の刀身状の砲撃を放つ光牙烈閃刃リッター・ネーメズィス。意味は天罰の騎士。
不可視の風を圧縮した設置型爆弾トーベン・ヴート。意味は荒れ狂う猛威」

なのは
「ハイリヒ・フライハイトって、シャルちゃんのファミリーネームが付いてるんだね」

シャル
「ええ。盾のデザインがフライハイト家の紋章なのよ。
フライハイトのFの両側に翼竜が羽ばたいてる様子のね。だからフライハイトって付けたの」

ユーノ
「トーベン・ヴートって爆弾ってことだけど、どこまでの威力があるの?」

シャル
「殺傷能力はさほど無いわね。意識を飛ばしたり、空戦機動を妨害したり。
でも防御力が弱い奴によってはどうなるか分からないわ」

ユーノ
「結構危ない術式なんだな」

シャル
「魔術って基本そんなものよ。さてと。今回はこのあたりで幕ね。またのお越しをお待ちしているわ」

なのユー
「ばいばーい」
さて、今回でなのは組とフェイト組のジュエルシード争奪戦は終了です。
次回はフェイトの真実と、プレシアとの決戦を書こうかと思います。


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