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プレシア・テスタロッサ
†††Sideルシリオン†††


「結界王の名に基づき具現せよ、一方通行(サンダルフォン)の聖域!」

“ジュエルシード”を再度停止させる為に使った最高位の結界術式。
一方通行(サンダルフォン)の聖域は、かつて人間だった頃の戦友“結界王アリス”の固有魔術だ。
俺はこの場を終息させるために、自分の体を無視して使用した。

「づっ・・・! うぐっ」

その結界の効果は、結界内に閉じ込めた対象の魔力行使を全てキャンセルするというもの。
結界内では一切の魔力、能力が使えないのでどうすることも出来ない。
だが、結界外からは結界内に好きなだけ魔力干渉が行える。
それゆえに“一方通行”の聖域と呼ばれる。
どれだけ強い魔術師でもこれに囚われたら、もう逃げることは出来ない。
事実、俺もアリスが敵だった頃にこれを使われ殺されそうになった。
かるく思い出に浸っていると、


――界律の制限より逸脱した術式及び魔力が使用されています

第四の力、天秤の狭間で揺れし者ルシリオンに警告

すぐさま使用している術式を停止せよ

停止せよ 停止せよ 停止せよ 停止せよ 停止せよ

さもなくば現時刻より80秒後 第四の力の機能を     

強制的に停止させます――
  

界律から警告がだされるが・・・・うるさい、黙れ!!
今はこっちのほうがはるかに重要だ。
桃色に輝く正八面対の結界に閉じ込められた暴走しているジュエルシードから徐々に光が失われている。
その一方、俺の方も身体のいたる所から血を失っている。先ほどから激痛が体を襲っている。
口、目、鼻、少しヤバイかもしれない。

「がはっ、くっ、フェイト・・・!! 今だぁぁ!!」

“ジュエルシード”が再び休眠状態に入ったことを確認し、魔力と術式を封印し直してフェイトに呼びかける。
ああ、仮面の中がそれはもうすごいことになっている。気持ち悪いことこの上ない。

「う、うん!」

フェイトは俺の使った術式に驚いていたが、ちゃんと立ち直り封印を終えた。
結果的にいえば、俺たちの勝ちだった。
俺は治癒魔術を使いながらフェイトとアルフのもとへと向かった。


†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††


・・・ルシルが結界王アリスの術式を使った。
当然の如く、ルシルはフラついたままフェイトたちのもとへと歩み寄っていく。

『こんな無茶をして、死ぬつもり!?』

私はリンクを通してルシルに呼び掛ける。
一歩間違えば、ルシルは間違いなく消滅していた。

『・・・し・・・死ぬと・・・は・・ハァハァ・・・思って・・・いない・・・』

念話にすらまともに応えられない。

『・・・バカ』

フェイトと隣に立ったルシルが、フェイトたちと何か話して去っていった。
もう見送るしかない。今回もまた負けてしまった。
ルシル達の姿も完全に消え、私もなのはたちのもとへと向かった。

「・・・なのは、ユーノ」

ぼうっとしていた二人に呼びかける。

「え? あ、うん。あ、そうだ、シャルちゃん。
私ね、少しだけお話できたよ。ちゃんと名前も教えてあげれたし」

「・・・そう、か。うん、よかったわね、なのは」

全くこの子は、こんな状況でもいつも通りだなんて・・・

「今日は・・・もう帰ろうか」

「うん!」

こうして私たちも家路についた。
ユーノの強い視線をこの身に受けながら・・・。


†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††


さっきからルシルがフラフラしているので、アルフに頼んで運んでもらった。
そして、家に着いた途端ルシルが倒れた。一瞬なにが起きたか理解できなかった。

「「ルシル!?」」

私とアルフが突然の事態に驚き声をかけ、苦しそうにしているルシルの顔を見るために仮面をはずす。
そして、私とアルフは息をのんだ。仮面をはずした瞬間、大量の血が溢れてきたのだ。
いきなり目の前が真っ赤になって、アルフと二人して顔を青くして呆然としてしまった。
頭の中が真っ白になる。ううん、ダメ! しっかりしろ、フェイト・テスタロッサ!!

「アルフ! 治癒魔法を!!」

「あ、ああ!!」

二人して慣れない治癒魔法をルシルにかける。

(死なせない! 絶対に死なせない!!)

ルシルが私たちに与えてくれた楽しい時間。
いつも美味しいご飯を作ってくれて、いつもアルフと口喧嘩して、最終的にはアルフが先に手を出し、殴り合いの喧嘩になってルシルが負けて愚痴をこぼし、アルフもそれが楽しそうで、そんな二人を見る自分もすごく楽しかった。

「「ルシル!」」

時には軽く模擬戦をして、簡単に負けて、それが悔しくて何度もぶつかるけどそれでも勝てなくて、するとまたアルフが喧嘩腰になって・・・の繰り返し。
たぶんルシルはこの“ジュエルシード”の一件が終わると去っていってしまうだろう。
初めはそんなに気にはならなかった。けど、今は・・・私たちは、ううん、私はもうルシルがいないと・・・・ダメなんだ・・・。
これからもずっと一緒にいたい、そう強く願う。
だから、死なせない、これでお別れなんてさせない!!


†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††


夢を見る。

(ここは・・・セインテストの居城グラズヘイムの庭先・・・?)

俺が立っているのは生前(正確には現在瀕死中で封印中)に住んでいたグラズヘイム城の庭園だ。
そして体は子供のではなく元の大人の姿だ。

「・・・なんで今更こんな夢を・・・?」

夢なんて見るのはいつ以来だろうか?
そんなどうでもいいことを考えていると、目の端のほうで複数の影をとらえる。
庭園の真ん中の休憩スペースにいたのは、それは懐かしき家族であり戦友たち・・・。

「・・・シエル、フノス、イヴ義姉様・・・」

実妹の拳帝シエル・セインテスト・アースガルド。重力魔術のエキスパートで肉弾戦最強の魔術師。
義妹の魔道王フノス・クルセイド・アースガルド。あらゆる魔術師に頂点に立つ、まさに王。
義姉のイヴィリシリア・レアーナ・アースガルド。イヴ義姉様は、風嵐系においては最強の魔術師。
その3人だけじゃない。

「ジーク。カーネル。レン。ステア。セシリス・・・」

雷皇ジークヘルグ・フォスト・ニダヴェリール。雷撃系最強の魔術師。
地帝カーネル・グラウンド・ニダヴェリール。土石系最強の魔術師。
冥祭司プレンセレリウス・エノール・スヴァルトアールヴヘイム。数少ない霊媒魔術師。
白焔の花嫁ステア・ヴィエルジェ・ムスペルヘイム。炎熱系最強の大魔術師。
炎帝セシリス・エリミング・ムスペルヘイム。ステアと同様に炎熱系最強と謳われる魔術師。
まだ居る。

「カノン。フォルテ。アリス・・・」

殲滅姫カノン・ヴェルトール・アールヴヘイム。私と並ぶ最強の砲撃魔術師。
呪侵大使フォルテシア・アウリアス・スヴァルトアールヴヘイム。闇黒系最強の魔術師。
結界王アリス・ロードスター。結界術式においては正に王の二つ名通り最高位の術者。
そして・・・、

「・・・シェフィ」

知らず口に出していた最愛の女性、シェフィリスの愛称。
蒼雪姫シェフィリス・クレスケンス・ニヴルヘイム。氷雪系最強の魔術師で、最愛の女性。
そのシェフィが振り向く。なんで、なんで泣いているんだシェフィ?
どうしてそんな瞳で俺を見てくるんだ?
他のみんなもそうだ、何故さっきまで笑顔だったのに、何故今は泣いている?

「どうして!? 何故泣くんだ!?」

そう叫んでしまう。シェフィ、君の泣き顔なんて見たくはない。
するとみんなが俺の周りに集まりだす。

「泣いてるのはあなた。気付かないのルシル?」

フノスがそう告げてくる。俺が・・・泣いている?

「ルシル様はここで何をしているの?」

横からはカノンが俺を見上げて聞いてくる。

「兄様はまだここに来ちゃダメ、だからもう帰らないといけないの」

妹のシエルが涙を流しながら微笑んでいる。

「界律の守護神、テスタメントとしてではなく、ルシルとしてあの子の側にいてあげろよな」

大親友で共に腕を磨いたプレンセレリウスが言ってきた。
それは無茶な話だよ、いつか俺は役目を終えて消える。

「確かに。えっとフェイトだっけ? あの子は将来美人になるでしょうね。
だからといって、今手を出さないようにねルシル」

お前はいつまでたっても俺をからかうんだな、ステア。

「ねぇ、ルシル。いつまでも私たちの復讐なんて考えないで。
私たちはルシルの幸せをいつでも、いつまでも願っているんだから」

もう涙を流していないシェフィが、綺麗な微笑みで俺を見る。
これは夢だ。おそらく自分の都合の良い夢・・・だけど・・・。
またみんなに会うことができた、だからすごく幸せな夢だ。

「さぁ、行っておいでルシル。別れのその一瞬まであの子の味方でいてあげて」

ああ、わかったよイヴ義姉様。
目の前が白色に染まる。消えていく、みんなが消えていく。
でも俺は振り返らない。
あの世界で役目を終えるその一瞬まで、フェイトとアルフの側で俺は戦い抜く。


†††Sideルシリオン⇒フェイト†††


「ルシル!? あたしが分かるかい!? フェイト! ルシルが目を覚ましたよ!」

アルフが、ルシルが起きたって大声を出して私を呼んだ。

「ルシル! 大丈夫!?」

急いでルシルのもとへと戻る。
私はルシルが目を覚ました安心からか、目から涙がポロポロと零れ落ちた。
もう目覚めないかと不安だった。よかった、本当によかったよ・・・。

「・・・フェイト?・・・アルフ?・・・すまない。
なぜか分からないけど、泣かすようなことしてしまったようだ、ごめんな」

え? もしかして覚えていない?
けどそれは当然かもしれない。あんなにいっぱい血が出ていたんだ。
それくらいのダメージがあってもおかしくない。

「本当だよ! あたしたちが必死で治癒魔法を使ったから、あんた、今こうして生きてんだよ!!」

アルフが襟首を掴んでルシルを揺さぶる。

「ア、アルフ!? それはまだダメだよ!?」

何はともあれルシルは目覚めた。
ようやく気が抜けた私は床に倒れこんで、そのまま眠ってしまった。


†††Sideフェイト⇒シャルロッテ†††


「レイジングハートのほうはどうなってるのユーノ?」

今、私はなのはの部屋に来ている。
フェイトのデバイスとの衝突、暴走した“ジュエルシード”の魔力の衝撃波によって大ダメージを受けた“レイジングハート”が気になったからだ。

「ん、うん、かなり破損が大きいけど、きっと大丈夫。
今は自動修復機能をフル稼動させているから、明日には回復すると思う。
だから、なのはもそんな顔しないで。絶対大丈夫だから」

「うん、ごめんねレイジングハート、守ってくれてありがとう」

どうやら“レイジングハート”は大丈夫のようだ。
なのはは自分を守ってくれたことに最大の感謝を言って、明日に備えて寝ようとした。
だったら私もそろそろ休もうかと思って自分の部屋に戻ろうとしたそのとき、「シャル」とユーノが私を呼び止めた。

「何、ユーノ?」

「魔術師って何なんだ? あんなデタラメな力を見せられたら気になるじゃないか?」

好奇心ではなく、これは・・・魔術師への・・・恐れ。
ユーノの真剣な、だけどどこか畏れの見え隠れする瞳を覗き込む。

「以前に話した通り、よ。あなたたちと同じように魔力を使って術を発現させる。
それ以下でもそれ以上でもない。唯一の違いは神秘の有無、それだけ」

「・・・本当に?」

「・・・ええ」

ユーノから疑惑の視線が消えた。悪いけど、事細かな説明は苦手だし、教える必要もない。
知ったとしても万人が扱えるような代物じゃないから。

「明日も学校だからゆっくり休むようにね、なのは」

「あ、うん。おやすみシャルちゃん」

「おやすみ、なのは。ユーノ」

そうして私は自室へと戻った。


†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††


翌朝、フェイトは母親のいるところへと報告をしに行くと言ってきた。
フェイトから話では聞いていたが、良い母親なのだろう。

「楽しみだな、フェイトの母親か。良い人なんだろう、アルフ?」

フェイトがその場にいなかったので、アルフに聞いてみた。すると、

「良い母親? あいつはそんなんじゃないよ!! あいつは・・・」

突然激昂したアルフに戸惑ったが、話を最後まで聞いてみようとして、

「アルフ? どうしたの大きな声が外まで聞こえていたよ?」

フェイトが例の包みを持って帰ってきた。
母親へのお土産を買って来ると言ったので、俺が行こうとしたらバインドを使ってまで俺をソファに強制的に寝かせた。
あの時のフェイトは・・・鬼だった。

「お土産も買ったし・・・行こうか、アルフ、ルシル」

「・・・うん」

「ああ」

フェイトが転移するための準備に入り、俺たちはこの世界から消えた。
そして辿りついたのは・・・何だここは!?
気持ち悪い! それ以前に契約中の世界から勝手に出てしまったために、

      
――第四の力、天秤の狭間で揺れし者ルシリオンに警告

現在、契約を行っている世界“地球”より勝手に離脱中

至急、帰還せよ 帰還せよ 帰還せよ 帰還せよ

帰還せぬ場合 この場での使用可能能力を1%までに減少する――   


“界律”からそのような警告が出される・・・・うるさい、無視だ無視!
というより戦闘になるわけがないだろう。
ただフェイトの母親に会いに来ただけなのだから。
でもやはり・・・

「気持ち悪い・・・。フェイト、アルフ、先に行っててくれないか?」

軽い眩暈を起こしながら二人に言う。

「え、大丈夫なのルシル? もしかして昨日の怪我が・・・」

「そうなのかい!? だったらついてこなくても・・・いや、それはダメか・・・」

二人が心配そうに見てくれるがフェイトの母親を待たせるわけにもいかない。

「俺は大丈夫。少し休めば、すぐに追いつく」

「追いつくって・・・ルシル、場所知らないでしょ?」

「あ」

そうだった。こんな広いところで一人になって迷子なんてあまりにも恥ずかしすぎる。

「それじゃアルフ、ルシルについててあげて」

「え!? フェ、フェイト!? そんなんじゃフェイトが一人で・・・」

何だ? アルフの様子がおかしい。
フェイトを一人にしたからといってなんなんだ?

「私は大丈夫だから。ルシル、ゆっくりで良いからね。あとで私の部屋へ案内するから」

「フェイト!!」

フェイトは一人で母親のところへと報告をしに行った。
アルフが最後までフェイトを引きとめようとしていた。
何をそこまで焦っているんだ君は?


†††Sideルシリオン⇒アルフ†††


どうしよう!? フェイトが一人であのババアに会いに行ってしまった。
あたしがここに残る原因のルシルは、あたしを見て「何焦ってんの」みたいな顔で見てくる。
噛むよルシル!!? ああもう! 早く元気になりなさいよルシル!!
でないとフェイトが、フェイトがあいつに何をされるか分からないよ!!
フェイトが行ってから数分後、ルシルはようやく、「もう大丈夫だアルフ、行こう」と言って頷いた。

「おっそい!! 急ぐよルシル!!」

「あ、おい! アルフ!? 何をそんなに・・・」

あたしはルシルがちゃんと追いかけてくるのを見ながらあいつの部屋へと向かった。


†††Sideアルフ⇒ルシリオン†††


アルフが急に走り出したので、少し体が鈍いが俺も追いかけた。
どれくらい走っただろうか?
たどり着いたのは長い廊下、先には大きな扉。
そしてその中から聞こえてくるのが・・・・

「何だ? 何なんだ? どういうことだ!? アルフ!?」

聞こえてくるのは悲鳴、それもフェイトの悲鳴だ。
別に聞こえてくるのは何かを鞭のようなしなる物で叩く音。
決まっている、フェイトを叩いているのだ!!

「だから・・・あたしはフェイトを行かせたくなかったんだよぉ。
フェイトの母親、プレシアは何か気に入らないことがあると、ああやってフェイトに何かするんだ。 
でも今回はいつも以上に酷い!!  一体何なんだよ!? ジュエルシードってさぁ!?」

アルフが泣きながら怒鳴ってくる。
そうだよな、悔しいよな、辛いよな、何も出来ない自分が許せないよな。
だったら、

「アルフ、フェイトを助けるぞ」

「ちょっ!? ルシル・・・!?」

「俺がフェイトを解放したら、アルフはフェイトを連れて部屋を出てくれ」

「・・・あんたは?」

「そのプレシアって女に用がある」

もうダメだ、これ以上フェイトの悲鳴を聞いていると、

(プレシアとかいう女の全てを殺したくなる)

俺の放つ殺気でアルフが少し怯えているようだが、今は抑えられない。

「いくぞ」

俺は今扱える魔力と術式で扉を吹き飛ばす。


†††Sideルシリオン⇒フェイト†††


母さんをがっかりさせちゃったから、私はお仕置きされているんだ。
すごく痛いけど、私がダメな子だから仕方がないんだ。

「あなたはどこまで母さんを失望させる気!?」

母さんの振るう鞭の痛みに耐えていると、後ろの扉からものすごい音と一緒に煙が私のすぐそばまでやってきたのが分かった。
何事かと思って顔を上げると、母さんは気付いていないのか、母さんの背後に立ち、すごく大きい真っ黒な鎌を母さんに振り下ろそうとしているルシルがいた。

「・・・っ!!? ダメ! ルシル!!」

それはダメ! あんなので斬られたら母さんが死んじゃう。
大好きな母さんが大好きなルシルによって殺される。
私はそれが嫌で必死に声をあげてルシルを止めた。

「何なのあなたは!?」

母さんはようやく自分を斬ろうとしていたルシルに気付く。

「アルフ!!」

ルシルはアルフを呼び、そして手に持つ大鎌で私を縛っている魔力のロープを断ち切ってアルフに抱かせた。

「どうし・・て、ア・・ルフ、ルシル・・?」

「・・・フェイトを守ると誓ったから」

「ごめんよフェイト」

アルフが謝る。そしてルシルが私を守るって・・・そう言ってくれた。
嬉しい、すごく嬉しいと思った。私は今、きっと顔が赤くなっているだろう。
心臓の鼓動がすごく大きな音に聞こえる。

「アルフ、フェイトは任せた」

「・・・ああ、ここは頼んだよルシル」

「ま、待ってアルフ! ルシル!?」

アルフは私の声を無視して、すごい速さでこの部屋を後にした。
そして私はそのまま気を失ってしまった。


†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††


対峙するのはフェイトの母親プレシア・テスタロッサ。
フェイトからは優しい母親と聞いていたからこそ期待していた。
だが実際はどうだ? 実の娘にあんな酷い仕打ちをするような人間だとは。
今ならアルフが、あのマンションで言いかけた言葉がハッキリと理解できる。

――良い母親? あいつはそんなんじゃないよ!! あいつは・・・――

確かにそうだった。この女は最悪だ。

「もう一度聞くわ、あなた何者? 私に気付かせずに背後をとるなんて・・・只者じゃないわね」

あの女が何か言ってきている、がまあいい。

「俺はフェイトとアルフの槍、盾、そして翼。ジュエルシードの探索に協力している。」

「・・・そう、あの子はあなたのような協力者を得ていたのね。
それだというのに、集めたのがたった四つなんて・・・ダメな子ね」

“ジュエルシード”を探すのだけでも大変だ。
それだというのに、この女は本気で言っているのだろうか、言っているんだろうな。
だったら、文句があるなら自分でやってみろ、このアマ!

「フェイトとアルフはよくやっている。
俺が手伝っているとはいえ、あの二人は自分で考え行動している。
だからこそ、その二人を侮辱することは絶対に許さない」

すでに怒りゲージはMAXを振り切り、粉々になっている。
いつ爆発するかしれないが、今はなんとか耐えろ俺。

「結果がついてこないと意味がないわ。だから、あなたも力を貸してちょうだい」

「協力は続けるさ、あの子達のためにな。だが貴様のためと思うとやる気が一気に失せる」

「それでも別に構わないわ、ジュエルシードが手に入るならね」

今すぐこの場から去って、フェイトとアルフの顔を見て癒されたい。
だが最後に言っておかねばならないことがある。

「・・・ジュエルシードは本当にすごい代物だ。
あれを複数同時に発動すれば、ある程度のことは出来るだろう。
貴様が何を企んでいるかは知らないが、あまり派手なことはするなよ。
さもなければ、世界は貴様を敵と判断し潰しにかかってくるぞ」

「その心配はないわ。世界が何かをしてくるなんてことは有り得ない」

俺はその言葉を聞き、この部屋を後にする。

(有り得ない、か。ならば何故俺たちが呼ばれたのだろうな)

おっと一つ言い忘れていた。

「ああそうだ、フェイトのお土産、ちゃんと食べろよ」

今度こそ、この部屋を後にした。よかった、殺すようなことがなくて、な。


†††Sideルシリオン⇒フェイト†††
 

体がすごく温かい。
何かに抱かれているような、そんな温かみだ。
それがすごく心地よくて、今にでもまた眠りについてしまいそうだ。
けど、それに逆らって私は目をあける。

「・・・ここは・・・?」

あれ? ここはいつものマンションの一室で、私が使っている部屋だ。

「いつ帰ってきたんだろう? それにこれって・・・?」

私はベッドの上に寝かされており、そして綺麗な蒼色の光がベッドを包むように半球状に展開されていた。
この光が、私が感じた温かみの理由らしい。

「フェイト!?」

アルフが私が起きているのに気付いたからか、私に駆け寄ってきた。

「アルフ、私・・・どうして?」

帰ってきたのか、と聞いてみた。

「ルシルがあの後、フェイトに治癒魔術を使ってね、すごいんだよルシルの奴。
一瞬でフェイトの傷を治したからね。そうしてそのままこっちに帰ってきたんだ」

そうか、私はあの後すぐに気を失ったんだったっけ。
その間にルシルが治癒の魔術を使って、私の傷を治して帰ってきたということらしい。
本当にすごいなルシルは。

「それじゃあ、この蒼い光もルシルの魔術?」

「そうだよ、フェイトが良く眠れるようにってさ」

そうか、ルシルって何でもできるんだね。
あれ? そういえばルシルの姿がない。
もしかして私の部屋だからって遠慮しているのかな?

「ねえアルフ、ルシルは?」

「・・・ルシルはジュエルシードの魔力を感じたからって、一人でその場所に向かったんだ」

「・・・え?」

アルフが言った事が解らない。
え? ルシルがたった一人で“ジュエルシード”の封印に向かった?
アルフはそう言ったの? だってルシルに封印の術はないはず。
それに、もしかしたらあの白い子たちが来るかもしれない。
ルシルは確かに強い。でも、あの水色の髪の女の子と戦って、さらに白い子も戦うとなると・・・。
とても嫌な予感。信じてはいるけど、でも心配でならない私は・・・・

ルシリオンの詠唱紹介
≪我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想≫
この場合、彼が人間だった頃の戦友アンスール達の能力・魔術・武装を書庫から取り出します。
威力や効果はあらゆる“力”とは一線を画してますので、世界から使っちゃダ・メ❤という制限を受けてます。
無許可で使用すると肉体ダメージ100%超え。

ANSUR設定

アンスール:
大戦末期に戦争終結のために設立された最高戦力。
後に連合特務十二将の一人“結界王アリス”が加わり十三人となる。

魔道王フノス・クルセイド・アースガルド
EXランク魔術師。“アンスール”創設者にしてアースガルド同盟軍総司令官。
固有能力“空間干渉”保有。

風迅王イヴィリシリア・レアーナ・アースガルド
XXXランク魔術師。風嵐系最強と謳われるレアーナ王家女王。総司令官補佐。

神器王ルシリオン・セインテスト・アースガルド
EXランク魔術師。対軍・対界術式に特化した中遠距離魔術師。
同盟軍後方支援部隊総指揮官。
創世結界“神々の宝庫ブレイザブリク”、“英知の書庫アルヴィト”、“英雄の居館ヴァルハラ”、“聖天の極壁ヒミンビョルグ”を保有。
固有能力“複製”保有。

拳帝シエル・セインテスト・アースガルド
XXXランク魔術師。近接肉弾戦最強と謳われる重力操作の魔術師。前線部隊第三指揮官。
セインテスト王家第二王女。

殲滅姫カノン・ヴェルトール・アールヴヘイム
XXXランク魔術師。砲撃戦最強と謳われる閃光系魔術師。後方支援部隊指揮官。
アールヴヘイム王家第八王女。創世結界“殲滅領域フェアティルゲン・ヴェルトール”を保有。
固有能力“空間干渉”保有。

蒼雪姫シェフィリス・クレスケンス・ニヴルヘイム
XXXランク魔術師。氷雪系最強と謳われるニヴルヘイム王家第二王女。
同盟軍後方支援部隊指揮官補佐。戦天使軍総司令官。

白焔の花嫁ステア・ヴィエルジェ・ムスペルヘイム
EXランク魔術師。炎熱系最強と謳われるムスペルヘイム王家第一王女。
ムスペルヘイム軍元帥。同盟軍最高参謀。
創世結界“劫火が支配せし煉界ムスペルヘイム”を保有。

炎帝セシリス・エリミング・ムスペルヘイム
XXXランク魔術師。炎熱系第二位魔術師。ムスペルヘイム王家第二王女。
ムスペルヘイム軍大将。同盟軍前線部隊第四指揮官。
固有能力“灼現の魔眼”保有。

呪侵大使フォルテシア・アウリアス・スヴァルトアールヴヘイム
XXXランク魔術師。闇黒系最強と謳われるスヴァルトアールヴヘイム王家第一王女。
同盟軍前線部隊第五指揮官。

雷皇ジークヘルグ・フォスト・ニダヴェリール
XXXランク魔術師。雷撃系最強と謳われるニダヴェリール皇帝。
ニダヴェリール軍元帥。同盟軍前線第一指揮官。
固有能力“千里眼”保有。

地帝カーネル・グラウンド・ニダヴェリール
XXXランク魔術師。土石系最強と謳われるニダヴェリール王家第二皇子。
ニダヴェリール軍大将。同盟軍前線部隊第二部隊指揮官。
固有能力“石化の魔眼”保有。

冥祭司プレンセレリウス・エノール・スヴァルトアールヴヘイム
XXXランク魔術師。固有能力“霊媒”を持つ霊を操る魔術師。
同盟軍情報部司令官。参謀補佐。

結界王アリス・ロードスター
XXXランク魔術師。結界術式において史上最高の使い手。
元連合軍特務十二将第五将。
同盟軍後方支援部隊所属。創世結界“走馬灯の迷宮メモリアル・ラビリンス”を所有。


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