それぞれの悩み
†††Sideシャルロッテ†††
朝日が窓から射し込んで、私をいい具合に目覚めさせる。
「・・・界律、私に一体何をさせたいの?」
ルシルと出会ってから毎朝欠かさずにしていること、それは“界律”との精神接続。
“界律の守護神”の複数契約。これが意味するのを知っているからこそ、慎重に事を進めておきたいのだ。
そして今日、“界律”からの情報に進展があった。
――戦闘時のみ能力値が12%まで使用可能。制限された魔術を全て解禁――
たった2%というけれど、それでも私たちにとってはかなり大きい数字だ。
「戦闘時のみ?・・・私に・・・ルシルを殺せって・・・こと?」
正直これはありえない、とは言い切れないのが堪らなくムカつく。
“界律の守護神”の契約には、死ぬこと、殺されることを前提に召喚されることだって多くある。
そしてその契約は、4th・テスタメントであるルシルが筆頭となっている。
ルシルはこの六千年、様々な世界へと召喚され、殺し、殺されてきた。
「・・・ふざけるな。こんなこと認めてなるものか・・・」
私は怒りに茹だった頭を冷やす為に、顔を洗いに行った。
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
ずっと考えてたんだ。
きっと私と同い年くらいで、深くて綺麗な瞳をしたあの子のこと。
会えばまたぶつかりあっちゃうことになるけど・・・だけど・・・
「おはよう、なのは。今日は早いんだね。」
後ろからシャルちゃんが挨拶をしてきてくれた。
「うん、おはようシャルちゃん」
出来るだけ笑顔をつくって挨拶を返す。
「・・・やっぱり、悩んでいるみたいね、なのは」
「・・・うん。ちょっと、ね」
シャルちゃんは何でもお見通しなのかな?
けど、それが少し嬉しいと思うんだ。それだけ見てくれていて、仲良しだってことだから。
「あまり抱え込まないようにね。私だって相談くらい乗るから」
「うん、ありがとう」
そうして私とシャルちゃんはリビングへと歩を進めた。
それから朝食を終えて登校。ずっと考えを事をしていたから、授業の内容はほとんど頭に入ってない。
切り替えようとしても浮かび上がるあの子、フェイトちゃんの事。
だから、
「いい加減にしなさいよ!!」
アリサちゃんが私の机に両手を叩きつけた。
私が上の空だったから、きっとアリサちゃんは怒っているんだ。
「こないだからなに話しても上の空でぼうっとして!」
やっぱりそうだった。私が悪いのだから謝らないと・・・。
「ごめんねアリサちゃん」
「ごめんじゃない!! あたしたちと話してんのがそんなに退屈なら、一人でいくらでもぼうっとしてなさいよ!! いくよすずか」
「あ、アリサちゃん!?」
アリサちゃんは怒って教室を出て行ってしまった。
「・・・なのはちゃん」
すずかちゃんが心配してくれている。
ううん、違うんだよすずかちゃん、これはきっと、
「いいよすずかちゃん、今のはなのはが悪かったから・・・」
そうだ、私が悪かったんだ。
「そんなことないと思うけど・・・とりあえずアリサちゃんも言い過ぎだよ。少し話してくるね」
「うん、ごめんね」
そうしてすずかちゃんもアリサちゃんを追って、教室から出て行った。
「・・・怒らせちゃったなぁ、ごめんねアリサちゃん」
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
私が職員室(校舎内で蹴ったサッカーボールを先生にぶつけた所為)から教室へと戻る最中、アリサとすずかが階段で何か言い争っている。
なのはという単語が聞こえたので、気付かれないように聞いてみた。
(・・・なるほどね。なのはが悩みのせいで上の空、そしてアリサがそれに怒ったみたいね)
なのはの事だ。悩んでいるみたいなのに、どうして頼ってくれないのか、と。
親友なら頼ってほしいんだってことは理解できるのだけど。さて、どうしようか?
決まっている、ここはひとつフォローを入れておくのが友達だ。
「今からそんなに怒っていると、将来後悔することになるよ。アリサ」
「シャル!? もしかして・・・聞いてたの・・・!?」
「ええ、悪いと思っていたけど、なのはのことだから」
「・・・あんた、何か知っているんじゃないの?」
アリサが、私が何か知っていると感づき迫ってくる。
「・・・もし私が知っていたら、どうすつもり?」
「決まってるじゃない! 聞かせてもらうわよ!
そしてなのはの相談に乗って、一緒に悩んで解決するのよ!!」
(一緒に悩んで、か)
なのはの悩みが世間一般にあるような悩みならそれでいいだろうけど、その原因が魔法という非現実なことであれば、そう簡単にはいかない。
「あなたたちは私以上に付き合いがある親友なんでしょ?
ならあの子の性格は知っているよね。何故相談しないのか、それはあなたたちを苦しめない為、巻き込まないため」
「そ、それは・・・」
「例えそうでも、聞いてみないことには分からないじゃない!?」
アリサは結構粘るね。なのは、あなたはこれほど慕われているのよ。
本当に羨ましい。私もこんな人生を歩み、親友をつくりたかった。
「悩みを共有できていると思えている間はそれでいいかもしれない。
けどねアリサ、解決出来なかったら相談したアリサとすずかを苦しめるって思うあの子の優しさもちゃんと分かってあげて」
「だって、そんなの・・・そんなの悔しいじゃない!!
何もしてあげられないなんて・・・悔しいじゃない・・・!」
「・・・アリサちゃん」
アリサが涙を流している。自分の非力さに、なのはの優しさに。
「・・・アリサ、すずか。いつかなのはからきっと話してくれる日が来ると思う。
そのときはちゃんといつも通りに迎えてあげて。それが親友でしょ?」
「・・・当然よ!」
もうこの件は大丈夫だろう。アリサもすずかもさっきまでの沈んだ顔ではなく、とても良い顔をしているのだから。
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
全ての授業が終わり、ようやく放課後となった。
帰り支度をしていると、「なのは!!」って私の名前をこれでもかっていうくらいに大声で呼ぶ誰か。
「っ・・・!?」
び、びっくりした! アリサちゃんだ。
教室の前の扉の所から、仁王立ちして腕を組んだアリサちゃんが私を見ていた。
その迫力に、近くの男の子たちが目を丸くして茫然としてる。
「いつかちゃんと話してよね! 私たち待ってるから!」
「うん、私もいつか話をしてもらうまで待ってるから。
あ、あと今日はお稽古があるから先に帰るね」
そう言って、アリサちゃんとすずかちゃんは教室を後にした。
遅れてアリサちゃんの優しさが伝わってきて、ちょっと泣きそうになっていると、
「よかったねなのは♪」
隣から笑顔を私に向けて、そう言ってくれるシャルちゃん。
そうか、シャルちゃんがアリサちゃんとすずかちゃんに何か言ってくれたんだ。
「・・・あ、うん! うん! ありがとう! ありがとうシャルちゃん!」
私はシャルちゃんに抱きつき、やっぱりちょっと泣いてしまいました。
†††Sideなのは⇒†シャルロッテ††
空をすっかり暗くなった今、私たちは一度家に帰ってからユーノを連れて街を探索していた。
「んー、タイムアウトかも。そろそろ帰らないと・・・」
私もビルの壁に設置されているディスプレイに表示された時刻を見て同意する。
「そう・・ね、これ以上は少しまずいかな」
「大丈夫だよなのは、シャル。僕が残ってもう少し探していくから」
とユーノが単独での探索を行うと言ってきた。
悪い気もするけど、ここはお言葉に甘えさせてもらうことにしよう。
「それじゃユーノ、悪いけど頼める?」
「うん。あ、晩御飯はちゃんと取っておいてね。
帰ってから残飯漁りなんてしたくないから」
「にゃはは、それはイヤだね~。じゃユーノ君、お願い。」
私となのははユーノに“ジュエルシード”の探索を任せて、一度家路に着く。
†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††
ビルの屋上で街を見下ろしている俺たち。
“ジュエルシード”の大まかな位置は判明したが、正確な位置が分からないので悩んでいるとフェイトがある提案をしてきた。
「強制発動って本当に危険がないんだな・・・?」
フェイトが発案した“ジュエルシード”を無理矢理発動させて発見するという強攻策。
“ジュエルシード”は願いを叶えることのできるという優れた能力があるが、反面暴走すれば厄介なことを起こす困ったモノだ。
そんな危険物を強制発動するなど、どう考えても安全策とは思えない。
だから二度に亘ってそう問い質す。何かあってからでは遅いからだ。
「うん、大丈夫だよルシル。発動させるのにかなり魔力が必要だけど」
「それはあたしがやるから、フェイトには障害はないよ。
だからあんたも覚悟を決めて手伝いな」
フェイトとアルフは完全に乗り気だ。本当ならもう少し慎重に進めてほしい。
仕方ない。こうなったらフェイトたちを止めることは無理だ。
ならば、万が一彼女たちに危険が迫ったらこの身を盾にすればいいだけのこと。
「・・・はぁ、分かったよ。任せたぞ、アルフ」
「あいよ!」
そしてアルフが魔力流を撃ちこみ・・・・・来た!!
ハッキリと分かる覚醒した“ジュエルシード”の魔力。
「ありがとうアルフ」
「このくらいどうってことないさ」
「では行こうか、向こうもそろそろ気付いて来るだろうしな」
さて、今回もシャルを無力化して“ジュエルシード”を貰っていこうか。
†††Sideルシリオン⇒なのは†††
私とシャルちゃんはユーノ君からの念話を受けて、“ジュエルシード”のもとへと走り、目覚めた“ジュエルシード”を視界に入れた。
すぐに封印に移るために変身して、“ジュエルシード”を停止させる為の砲撃を放った。
別の場所からフェイトちゃんもほぼ同時の砲撃を放つ。そして“ジュエルシード”は沈黙した。
「フェイトちゃん、ゼフィちゃん・・・・」
「もうこの件から引きなさい、と言ったはずよね? 高町なのは」
そして今、フェイトちゃんとゼフィちゃんの二人と対峙している。
遅れてユーノ君とアルフさんがやってきた。
お互いにいつでも戦いに移れるような緊張状態。
「引けません。今度こそ、ちゃんとお話を聞いてもらうから!
シャルちゃん、ユーノ君。フェイトちゃんは私に任せて」
――アクセルフィン――
アクセルフィンを使って、一気にフェイトちゃんから距離を取る。
この私の行動で、私とフェイトちゃん、シャルちゃんとゼフィちゃん、ユーノ君とアルフさんの三つ巴の戦いに入る。
フェイトちゃんはゼフィちゃんと何か言葉を交わして、私を追いかけてきた。
「ディバインシューター!」
≪Divine shooter≫
やることは以前と同じ。でもあれからさらに制御技術に磨きをかけた。
それに同じ失敗はしない、シャルちゃんが教えてくれた教訓を胸に私は戦う。
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
「さてと、こちらも始めようか、シャルロッテ」
ルシルが静かに戦闘を開始しようと口にする。
私は・・・かつての決闘と同じように名乗りをあげる。
なぜだか、今はそうしないといけないと思ってしまったから。
「ミッドガルド秩序管理機構左翼、天光騎士団星騎士が一人、第五騎士剣神シャルロッテ・フライハイト・・・!」
案の定ルシルが唖然としている。
仮面で素顔が隠れているけど長い付き合いだ、それくらいは分かる。
「・・・アースガルド同盟軍、対主力精鋭部隊アンスールが同盟軍後方支援部隊総指揮官。
神器王ルシリオン・セインテスト・フォン・シュゼルヴァロード・・・」
ルシルも私に合わせて名乗りをあげてくれた。
でもやっぱりアースガルドではなく、シュゼルヴァロードの姓なんだね。
さあ、お互い名乗りをあげた。即ち決闘の意味を持つ戦いをしようということだ。
死んでも退かない、その意味を持つ戦い。
“界律”が何を企んでいようとも、私はあなたを倒してでもなのはを守る。
「「参る!」」
さぁ、見せてあげる。魔術が解禁された今の私の力を!
その言葉を戦闘開始の合図としてルシルが背にサファイアブルーに輝く剣のような翼を12枚生やす。
(空に逃げる気ね、けどそうはさせない!)
私も空を飛ぶことが出来る魔術、飛翔術式を習得している。
けどそれは絶望的に下手なのだ。まるで死に掛けの羽虫のようにフラフラとしか飛べない(それでよく膨れっ面をして拗ねていた)。
だからここでルシルを空に逃がすと、私の攻撃手段が減らされる。
「逃がさない!」
そう、私は確かに飛べないけど、跳ぶことは出来る。
瞬時にルシルの背後に跳躍し、左サイドの剣翼6枚全てを切り捨てる。
「バカな!?」
ガラスが砕けたような音とともに崩れ去る剣翼。
そのまま滞空しているルシルが激しく動揺する。
当然だ、以前まで圧倒的優位に立っていたのに、今は逆転しているのだから。
「そのままだと灰になるわよ!」
――炎牙焔牢刃――
私の持つ炎熱系攻性術式最強の一撃をルシルに放つ。
これは対象を炎の球体に閉じ込め、爆発的な炎の斬撃で切り裂くという術式だ。
「食らいなさい・・・!」
頭上に振り上げた炎に包まれた“キルシュブリューテ”を、ルシルを覆い包む炎熱球へと振り下ろす。
縦一閃。直後、炎熱球が大爆発を起こす。
むぅ、能力値が12%ではやはり大した威力は出なかったわ。
それでもSランク程度はいくだろう。炎を引いて地面に叩きつけられたルシル。
そして、
≪我が手に携えしは確かなる幻想≫
あの詠唱を口にする。
私もこの程度で勝てるなんて初めから思っていない。
炎の中から現れたルシルは、私に人差し指を向けて術式名を宣告する。
「神よ、何故私を見捨てたのですか」
指先から光線が照射される。
そして同時に周辺に揺らめいていた炎が、衝撃波によって一瞬にして鎮火する。
すぐさま回避行動を取り反撃しようとしたところで、ルシルが弓矢を構えているのを視認。
おそらく私の逃げ道を塞ぐための範囲攻撃系の術式。
「逃れるものなら逃れてみせよ、奥義クランブル・ガスト!!」
放たれたのは無数の矢。効果範囲がデタラメに広い為、回避は不可能。
ならば、私に当たるものだけをこの身と刀だけで叩き落す。
「そればかりに気をとられていると、今度は君が灰となってしまうぞ!」
――業火顕現、爆連襲星――
ルシルの上空から私に向けて巨大な炎の弾丸が降り注ぐ。
「まだまだぁ!
――風牙真空烈風刃――
ここで使うのが私の風嵐系最強の一撃。
真空の刃を複数巻き込んだ風の壁を叩きつける術式だ。
この一撃が炎の弾丸を一瞬にして消滅させる。
そして私は接近戦へ持ち込むために最接近する。
「もう距離を離さないわよルシル!」
「なら無理矢理にでも距離を空けさせてやるまでだ!」
――終極洗礼――
私とルシルの間に光の柱が落ちてくる。
だけどそんなものは無駄な抵抗に過ぎない。
「だから、無駄なことをは止めなさい!」
――光牙月閃刃――
その光ごとルシルにダメージを与える為に“キルシュブリューテ”を横薙ぎに振り抜く。
だけどルシルはいつの間にか“神槍グングニル”のレプリカを手にしていて、私の斬撃を防いだ。
決まった。この戦いは私の勝ちだ。
「くっ、まさかこんなことになるとは・・・!」
「もう諦めなさいルシル!」
――凶牙月影刃――
ルシルは複製術式を発動させようとするけれど、私の術がそれを妨害する。
闇黒系の魔力を纏わせた一閃が、ルシルの胸元の神父服を浅く裂いた。
「っ! くそっ! このままでは・・・!」
ルシルがかなり焦っている。当たり前の結果だ。
私の術式が現実に作用するまでの時間はおよそ0,04秒くらいだろう。
大戦に参加した主力級の魔術師なら大体この程度、ルシルももちろんそうだ。
けど、ルシルは私に押されている。
それは何故か。そうルシルの扱っている複製術式の顕現までの時間が私の術式顕現よりはるかに遅いのだ。
ルシルはわざわざ“英知の書庫”や“神々の宝庫”から術式や武装を現実へと引っ張り出さないといけないのだ。
それが致命的なタイムロスとなって私に遅れを取るということだ。
「もう一発・・・!」
――凶牙月影刃――
もう一度闇黒系魔力を刀身に纏わせた“キルシュブリューテ”で連撃。
ルシルは「近接では分が悪い・・・!」と悔しげに呟きつつ、“グングニル”で何とか捌いていく。
「ほら、もう後が無いわよ・・・!」
当然ルシルもそれに気付いている。
ならどうして、自分だけの固有魔術を使わないのか。
それが“界律”によって制限されているからに違いないと私は踏んでいる。
ルシルの固有魔術はどれも威力がハンパじゃない。
彼の最強の真技は、その一撃のもとに海鳴市くらいの街なら1つや2つは地図上から消せるだろう。
そんなふざけた威力を持つルシルの魔術を“界律”が制限しないわけがない。
だからルシルは複製した武装や術式に頼るしかない。だから、魔術の出が早い私が必然的に有利となる。
それが近接戦ならなおさらだ。
「どう、ルシル。劣勢に立たされた気分って?」
皮肉気にルシルを軽く挑発。
乗ってくるわけはないだろうけど、今までの仕返しだ。
「くっ、ああ、本当に嫌な気分だ。だが、まだ終わりじゃない!」
――閃斬光爪――
ルシルが両手の爪から白く輝く伸びた光の刃を使って薙いできた。
私は“キルシュブリューテ”を使って切り崩し、ルシルの胴めがけて斬撃を放つ。
「俺は負けられないんだ! あの子達のためにもここで終わるわけには!!」
ルシルは咄嗟に身を引きそれをかわす。
それにしてもおかしい。ルシルがあまりにも必死すぎる。
以前のルシルなら、負けをちゃんと受け止めるはずだ。
「天の風琴が奏で流れ落ちるその旋律、凄惨にして蒼古なる雷・・・」
「呪文!? 詠唱による術式発動!」
詠唱から発動する術式は、魔術においては儀式魔術として見られる。
その効果はまず高い。魔術で無いとしても、そのルールが適用される術式なら、かなりまずい攻撃が来るはず。
「喰らえ!」
――ブルーティッシュボルト――
地に現れた方陣から出でるは紫色の雷で構成された無数の竜。
「まずい! 目醒めよ、キルシュブリューテ!!」
ルシルに接近し過ぎていたのがまずかった。
すでに目と鼻の先に暴力の塊がいる。
雷竜をかわすことも、防ぐことも、相殺することも出来ないと瞬時に判断した私は“断刀キルシュブリューテ”の誇る能力を発動させた。
刃物には少なくとも“切る”や“刺す”といった概念が備わっている。
そして私の“キルシュブリューテ”は、特にその概念が強い刀だ。
それゆえに“キルシュブリューテ”を超える神秘、幻想でなければ全てを切り裂くことが出来る。
「はぁぁぁぁあああああああああああっっっ!」
だが本来なら能力発動に必要な魔力は最低でXXランクはないといけない。
しかし今の私はせいぜいAAAランクあれば良いくらいだ。
故に完全解放ではなく、数秒間だけ解放する瞬間解放を行った。
一心不乱に“キルシュブリューテ”を振い続け、全てを切り裂き終えた私は意識をギリギリ保ちながらもルシルを見据える。
「ハァハァハァハァ・・つ、疲れた~、もう十分でしょルシル?」
†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††
私とフェイトちゃん、ううん、ユーノ君とアルフさんもだ。
みんながシャルちゃんとゼフィちゃんの戦いを見てその動きを完全に止めていた。
「す、すごい・・・これが魔術師の・・・本当の戦い・・・」
フェイトちゃんが呟く。私だって声が出ないほど驚いている。
ユーノ君なんて目を点にしているうえに口が開きっぱなしだ。
シャルちゃんがあんなに強かったなんて知らなかった。
シャルちゃんとゼフィちゃんが何か話しているけど、ここまでは聞こえてこない。
「・・・っ!」
いち早く立ち直ったフェイトちゃんが“ジュエルシード”を封印しようとする。
私もそれに続いて“レイジングハート”を“ジュエルシード”に向かって突き出す。
“レイジングハート”とフェイトちゃんのデバイスが“ジュエルシード”を挟んで衝突する。
そして“ジュエルシード”から途轍もない衝撃が放たれた。
吹き飛ばされる私とフェイトちゃん。
「なのは!?」
「フェイト!?」
遠くからユーノ君とアルフさんの叫び声が聞こえた。
†††Sideなのは⇒ルシリオン†††
「なに!?」
「ちょ、ちょっと、これはどういうこと!?」
シャルとの戦いに没頭しすぎていた所為で“ジュエルシード”の状態まで気が回らなかった。
フェイトとなのはのデバイスが“ジュエルシード”を挟むように衝突したことによって、“ジュエルシードが”二人の魔力に反応して暴走状態になってしまったようだ。
「まずい・・・これってもしかして、私たちの使った魔力にも原因があるんじゃないの!?」
シャルが俺たちにも原因があるかもって言っているが、確かにそうだろう。
せっかく休眠状態に戻していたのに、俺たちがデタラメな力を使ったことで暴走寸前までになってしまったのだ。
最終的な暴走の引き金となったのはデバイスとの衝突にあるだろうが、もとはといえば俺たちが大本の原因だ。
「ダメ! 今の私じゃ手が出せない!」
シャルは打ち止めのようだ、が俺には・・・・手がある。
しかし、能力値、とくに魔力の制限が酷いため、今の状態でアレを使ったら俺はどうなってしまうのか・・・。
この状況を打破する複製術式使用後の自分の姿を想像する。
正直とてつもなく悩んでしまうが仕方がない。下手すれば死ぬかもしれない。
まずはフェイトが暴走する“ジュエルシード”に突っ込もうとするのを止めないとな。
『フェイト!! 俺がジュエルシードを停止させる!
停止を確認後、すぐに封印に移ってくれ!!』
『え!? でもルシルどうやって!?』
≪我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想≫
俺はフェイトに答えず“英知の書庫”よりある術式を現実へと顕現させる。
ああ、これはまずい。身体と精神が悲鳴をあげている。
当然だ。今扱える魔力はせいぜいAA+ランク、この術式の必要魔力はXXXランク。圧倒的に足りていない。
俺たち魔術師は本来、体内で生成された魔力と体外から取り入れた魔力を“魔力炉”で融合させてから発動に必要な分だけを使用する。
だが、この世界ではそれが上手くいかない。
これこそ“界律”が“界律の守護神”としてではなく、魔術師としての俺たちに強いている最大の制限だ。
だから必然的に魔力不足となってしまう。
それ以前にSランク以上の複製術式の使用は制限されている。
それを無理矢理使用するので当然身体的なペナルティが発生するだろう。
しかし今はそんな泣き言は言ってられない。
意識を保てる間に終わらせなければ・・・力を借りるよアリス。
「結界王の名に基づき具現せよ、一方通行の聖域!!」
†◦―◦―◦―◦―◦↓シャル先生の魔術講座↓◦―◦―◦―◦―◦†
シャル
「ようこそいらっしゃい。第三回シャル先生の魔術講座へ。
今回は残念だけど、私とユーノで進ませてもらうわ。だって、なのはってば大変なんだから」
ユーノ
「残念、って言われるとちょっとショックだよ、シャル」
シャル
「あ、ごめん。言葉のあやだから、そう落ち込まないで。
別に、ユーノじゃなくてなのはを出せよ、みたいなクレームへの先手なわけじゃないから」
ユーノ
「それが本音っぽくてさらに僕の心情がどん底へ急降下だよ。
確かになのはは女の子で可愛いし、僕みたいなフェレットじゃ面白くないかもしれないけど」
シャル
「ユーノが自虐モードに入ってしまったから、さっさと本題に入るわ。
――炎牙焔牢刃――
――風牙真空烈風刃――
――光牙月閃刃――
――凶牙月影刃――
今回はこの4つの魔術を使用したの。
まずは、炎牙焔牢刃アオフ・ローダーン・シュテルンね。
作中にも説明していたけど、対象を炎の球体に閉じ込めて、その上から炎の斬撃を一閃。
その衝撃で炎熱球は爆発を起こして追加ダメージ、というわけ。
アオフ・ローダーンは燃え上がる。シュテルンは星。燃え上がる星という意味よ」
ユーノ
「閉じ込められちゃったら逃げ場なしになるんだね。
これは結構危険な魔術なんじゃないかな・・・・」
シャル
「続いては、風牙真空烈風刃エヒト・オルカーン。
真空刃と烈風刃の合成バージョンと言ったところかしら。
風圧の風である烈風刃の中にいくつもの真空刃を巻き込んで、ある種の砲撃とするのがコレ。
エヒトは真の、オルカーンはハリケーン、大暴風という意味ね」
ユーノ
「烈風刃と真空刃、単独でも十分な威力なんだし、それを一緒にしたらどれだけ強くなるんだ?」
シャル
「んー、落ちてくる炎の雨が吹っ飛んで行ってしまう程ね。
次は、光牙月閃刃シャイン・モーントズィッヒェル。これは単純な魔力付加攻撃ね。
閃光系と呼ばれる属性の魔力を纏わせての一閃。ただそれだけよ。
シャインは光。モーントズィッヒェルは三日月という意味よ」
ユーノ
「シャル。属性って単語を出すのはフライングだよ?」
シャル
「仕方ないじゃない。説明するには必要な魔術ワードなんだから。
最後に、光牙月閃刃と同種の術式、凶牙月影刃フィンダーニス・モーントズィッヒェル。
後々に出てくる属性において、闇黒系の魔力を刀身に纏わせての一閃、という攻撃よ。
フィーンダーニスは闇。モーントズィッヒェルは既出だから省略するわ」
ユーノ
「また言っちゃった」
シャル
「文句があるなら、もう来なくて結構ですっ!」
ユーノ
「え? えええええええええええっ!!?」
シャル
「れっぷ~~~じ~~~ん!」
今回はルシリオンの“蔵”の説明です。
複製された能力・魔法・魔術・知識などを貯蔵する“蔵”。
英知の書庫。全知の戦乙女アルヴィトの名を冠する巨大書庫。
そして複製された武装など固定物を貯蔵する“蔵”
神々の宝庫。ブレイザブリクの名を冠する黄金に輝く武器庫。
詳細は追々とします。
複製術式
とある魔術の禁書目録神よ、何故私を見捨てたのですか (エリ・レマ・サバクタニ)
ヴァルキリープロファイル シルメリア:クランブルガスト
スターオーシャン3:ブルーティッシュボルト
以下はANSURオリジナルです。
爆連襲星
使用言語はスペイン語
ボンバルデオ=爆撃・エクサラシオン=流れ星
終極洗礼
使用言語はフランス語
デルニエール=最後の・バテム=洗礼
閃斬光爪
使用言語はイタリア語
ウンギア=爪・スプレンドーレ=輝き
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