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エルフの国を目指して(1)

あれ、休むって話しじゃなかったの?

えと、それは、その……、

詳しくは活動報告で!

 やはりベッドは良い。

 体が痛くならず気持ちよく寝れた。

 喧噪にも慣れ、柔らかな朝日を浴びながら体を起こす。

 いつものルーティーンをこなしフードと赤いヘアピンを付ける。


 《おはようございます。》

「おはようリンダ。」


 笑顔であいさつをしてくるリンダに満足して扉を開ける。


「やっぱりな。」


 扉を開けるとなんとなく予想をしていたこと、エルシアの土下座が俺を出迎えていた。


「それ、やめろ。」

「わかりました。」


 俺の命令に従い立ち上がると同時に目隠しをする。

 キュッと少し強めに縛る。


「あ…。」


 突然のことで驚いたのか綺麗な声がエルシアの口からこぼれて、さらに言葉が紡がれる。


「ご、ご主人様どうして目隠しをなさるのですか?」

「どうしてって…、あ。」


 俺は昨日、目が虚ろ問題は解決したことを思い出した。

 俺は強めに縛った目隠しをとる。

 エルシアの目は一晩経っても虚ろにはなっていなかった。


「……悪い。」

「いえ。」


 俺はそう一言つぶやき、エルシアと共に軽い朝食を済ませ入った時と同じ門から外に出た。


「さて、この都市にもお別れだ。」


 俺は左腰に一振りの真っ黒な刀、隣のエルシアは背中に弓を装備する。


「エルシア、最初に言っておくがお前は奴隷だ。危険な敵が来たら盾に使うし、囮にも使うから。」


 昨日の夜にリンダに言ったように優しいタイムは終わりだ。

 ここからはしっかり奴隷として働いてもらう。


「…わかりました。」


 少しの間の後にエルシアは返事をする。


「じゃあ、エルフの国まで案内しろ。」


 エルシアが俺の前を歩いていく。

 その後を俺はついていく。


 《わざわざ、言うあたりやっぱり優しいですね。》

「昨日みたいに優しくしてくれる、なんて思われるのはウザいからな。」

 《へぇ、そうですか。》


 リンダがニヤニヤ見てくる。

 すると、前をむいていたエルシアもこちらを向く。


「スライムです。」

「どこに?」

「200m先です。」

 

 200m?

 俺は目を凝らして前を見る。

 確かに青くてツヤツヤした物体が動いている。


「どうやって気付いたんだ?」

「スキル【遠視】によるものです。」


 スキルか…。

 そういえばエルシアのスキルを確認していなかったな。


「エルシア、ステータスを見せろ。」

「…わかりました。」


 嫌そうな顔を一瞬だけしたように感じられたが闇奴隷に拒否件はない。

 従順にステータスを開示する。


「【ステータス】」


 エルシア・エルフリーデ 14歳 女 レベル:60

 種族:エルフ(奴隷)

 筋力:180

 体力:180

 耐性:180

 敏捷:360

 魔力:720

 魔耐:720

 技能:風魔法・生活魔法・治癒魔法・属性付与・遠視・弓術


「レベル高いな。」


 レベル高いくせになぜ奴隷になんてされてしまったのだろうか。

 話せと命令すれば話すだろうが、また目が虚ろになってくれたら困るのでそんなことはしない。


「というか、エルシア・エルフリーデが本名だったんだな。」


 この世界にきて名字を初めて見た。

 魔族には名字はないが、他種族にはあるのだろう。

 エルシアのステータスを見て驚くのはレベルと名字くらいだ。

 なぜ、一瞬でも嫌な顔をしたのか。

 聞きたいところではあるが、トラウマを引っ張りだしては面倒だ。


「もう閉じて良い。」

「あの。」

「何?」

「何も言わないのですか?」


 レベルのことだろうか、それとも別のことだろうか。

 確かに興味はあるが、何度も思うように藪蛇をつついてしまっては面倒だ。


「別にないけど?」

「…そうですか。」


 不思議な声色でそうつぶやくと弓を構えスライムを討とうとする。


「エルシア待て。魔物は俺が倒す。」


 このエルフの国に行くまでの間、レベル上げをしようと思っている。

 この世界はステータス値が絶対の力だ。

 今の俺では圧倒的にその力が足りないのだ。

 リンダを生き還すにもシンジを殺すにも。


 俺はイメージする。

 銃身の長い一丁のスナイパーライフルを。

 圧縮した空気を指先にこめる。

 そして、空気を空気で押し出す。


「【エアバレット】」


 魔力が抜き取られるのを感じる。


 ーザシュ


 200m先のスライムの体に切れ込みが入る。

 それがきっかけでスライムは自壊する。

 すると体が軽くなったような気がする。


「レベルが上がったな。【ステータス】」


 自分だけが見えるように確認する。


 ツカサ 13歳 男 レベル:27

 種族:魔族(魔王)

 筋力:540

 体力:540

 耐性:540

 敏捷:540

 魔力:440(540)

 魔耐:540

 技能:限界突破・経験値取得倍加・全属性魔法・全属性耐性・魔力自動回復・複合魔法・対勇者・痛分・覇気・刀術・身体強化・虚偽察知


 《魔力かなり減ってますね。》

「さすがに空気を空気で押し出して攻撃するのは理論として無理があったな。100も減ってるよ。」


 俺は無理な魔法の使用は危険と判断し次は刀で攻撃することにする。


「ご主人様、お見事です。」


 無表情にエルシアが俺を褒めてたててくる。


「エルシア、俺を無条件に褒めるのはやめろ。」

「申し訳ありません。」


 奴隷だからご主人様のご機嫌伺いをするのかどうかは知らないが、そんなことはしなくていい。

 エルシアにそんなことをさせるために買ったわけじゃない。


「エルシア案内しろ。魔物が出てきたら今と同じ様に俺が殺す。」

「わかりました。」


 エルシアの案内で獣道の様な場所を進んでいく。

 出てくる魔物はスライムばかりで、刀を使って殺し、経験値と魔石をもらっていく。


「エルシア、エルフの国まではどれくらいかかるんだ?」

「約一週間です。」

「はっ?」

「お伝えせず申し訳ありませんでした。」


 おいおいマジかよ。

 聞くのをうっかり忘れていた俺に落ち度があるけど、そこまでかかるとは思ってなかった。


「気にするな。そのまま案内を続けろ。」

「わかりました。」


 さて、そうなるとマジックポーチの中身を大放出しなくてはならない。

 エルシアの分も含めて寝袋やテントはある。

 湯浴みやトイレに使うための水は魔法で取り出せるから大丈夫だ。

 だが、食料はさすがに一週間も持ち合わせてはいない。


「エルシア、魔物とか植物で食べられるものと食べられないものの見分けはできるか?」

「できます。」


 良かった。

 食料は現地調達してしまえばどうにかなるな。


「食料はこの森で調達しながら進んでいく。マジックポーチを渡すから食べられるものを片っ端からこの中に入れていけ。」

「ご主人様のマジックポーチを私が持つのですか?」

「そうだ。」


 俺はポーチをエルシアに渡す。

 受け取ったエルシアはそれを手に持って固まっていた。


「腰につけろ。」

「腰に…。」


 ガチャガチャと腰につけようとしているが全くつけられる気配がない。


 《つけてあげましょうよ。》

「まったく…。」


 リンダに従う形でエルシアの手からポーチをひったくりエルシアの腰につける。


「あ、ありがとうございます。」

「はいはい。仕事はしっかりやれよ。」


 再びエルシアの案内のもと獣道を歩く。

 時々、歩いている途中で何かの植物や果実をもぎ取りポーチの中に入れていく。


「ご主人様、ウォルフです。」

「どんな奴だ。」

「かなり大きな犬の様な魔物です。あそこに。」


 要するに狼というところだろう。


「食べられるのか?」

「食べられません。」

「わかった。」


 この森に入ってスライム以外の魔物は初めてだ。

 食べられないなら、殺してレベル上げの糧になってもらう。


 ウォルフが迫ってくる。

 それを刀でいなし、その背中を切りつける。

 血がビシャッと噴き出すがまだ死んではいない。

 だが、動くことがもうできない様だ。


 ーブシュ


 ウォルフの首を跳ね飛ばす。

 命令通りエルシアが褒めてくることはない。


「【ステータス】」


 ツカサ 13歳 男 レベル:30

 種族:魔族(魔王)

 筋力:600

 体力:600

 耐性:600

 敏捷:600

 魔力:600

 魔耐:600

 技能:限界突破・経験値取得倍加・全属性魔法・全属性耐性・魔力自動回復・複合魔法・対勇者・痛分・覇気・刀術・身体強化・虚偽察知


 《身体強化を使うまでもありませんね。》

「だな。」


 エルシアの案内にまたついていく。

 今度はウォルフばかり出てくる。

 全部、いなして殺していく。

 エルシアは魔石を拾っていく。

 亡骸は炎魔法で燃やしていく。

 この世界、魔物の亡骸は消えたりはしない。


「そろそろ日が暮れてきたな。」


 木々の影が段々長くなる。


「ここで野営をするか。」


 ちょうど森の中に開けた場所を見つけてそこに一つテントを張る。

 そして、ポーチから食料を取り出し二人で食べる。

 この食料は俺があらかじめ持っていた保存食だ。

 今日エルシアが集めた食料じゃ全く足りなかった。

 俺も食料確保のために動き出した方がいいかもしれない。


 同じタイミングで食べ終わる。


「先に俺が寝るから、エルシアは5時間後に俺を起こせ。時計は渡しておく。」

「時計ですか?」

「時間をはかる機械だよ。」


 時計の説明をして魔国で作った腕時計をエルシアの腕につける。


「絶対起こせよ。わかったな?」

「わかりました。」

「じゃあ、目隠しするから。」

「あ…。」


 エルシアに目隠しをして湯浴みをする。

 この時はさすがにフードを脱がなければならないからだ。

 湯浴みが終わったら目隠しを外し、俺はテントに入り、寝袋の中に入って目を瞑る。


 《おやすみなさい、ツカサくん。》

「おやすみリンダ。」



 ◆



「ご主人様、5時間経ちました。」


 テントの外から声が聞こえる。


「ご主人様?」

「起きてるよ。エルシア変わったことはあったか?」

「ありませんでした。」

「そうか。じゃあ、今度は俺の番だな。」

「申し訳ありません。」


 おっと、始まった。

 突然のエルシアの謝罪。

 一応聞いておこう。


「何が?」

「ご主人様が私の代わりに起きることになってしまい…。」

「当たり前だろ。寝ないせいでエルシアがぶっ倒れたらどうするんだ。この一週間、それを謝るの禁止な。」

「…わかりました。」


 テントから出た俺はエルシアのために湯浴みの準備をする。


「どうして…。」


 そんな言葉が聞こえるが無視して準備をする。


「ありがとうございます。」


 お礼を言ったエルシアから腕時計を受け取り周囲の警戒を開始する。


「ご主人様、おやすみなさい。」


 湯浴みをしたエルシアがテントに入っていった。


 《やっぱり優しいですね。》

「うるさいな。」

 《素直に認めたらどうですか?》

「優しくしてないから認められない。」

 《優しいですよ。》

「優しくない。」

 《認めませんね。ところで、ツカサくん。ステータスが順調に上がってますね。》

「確かにな。【ステータス】」


 ツカサ 13歳 男 レベル:35

 種族:魔族(魔王)

 筋力:700

 体力:700

 耐性:700

 敏捷:700

 魔力:700

 魔耐:700

 技能:限界突破・経験値取得倍加・全属性魔法・全属性耐性・魔力自動回復・複合魔法・対勇者・痛分・覇気・刀術・身体強化・虚偽察知


 《エルシアちゃんより強くなってるじゃないですか。》

「まだ魔力と魔耐が追いついてないよ。」

 《それでもすごいですよ。》


 そんな風にしてリンダとたわいもない話しを続けていると段々日が昇ってくる。

 警戒中、特に何も出てこなかった。


 《おはようございます、ツカサくん。》

「おはよう、リンダ。」

 《今日も頑張ってくださいね。》

「頑張るよ。」

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