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奴隷購入

新ヒロインです。

今更ながら、ヒロイン増やしすぎたなぁーって思ってます。

 通りから聞こえてくる喧騒で目がさめる。

 この世界の1日は日が昇れば始まる。

 だから朝早い時間から露店が開店し沢山の人が通りを埋め尽くす。


 俺は顔と歯を磨きパジャマからフード付きのマントを着て、赤いヘアピンも忘れずつける。


 《おはようございます。ツカサくん。》


 ヘアピンをつけたタイミングでリンダが現れる。


「おはよう。」

 《今日は奴隷を見に行くんですよね?》


 奴隷なんて可哀想だ、と言うのはこの世界ではお門違いだ。

 文明開化が起こっていないこの世界では奴隷は有用な労働資源だ。


「そうだよ。さっさと調達する。」

 《そういう言い方良くないですよ。》


 リンダが悲しそうにする。

 それを見るとあの日のリンダを思い出し心がぐちゃぐちゃになりそうになる。

 ぐちゃぐちゃになって失ってしまった物を何かで埋めようとしてしまう。


「そういう顔はするなよ。」

 《じゃあ、調達という言い方はやめましょう。》

「……わかったよ。」


 了承するとリンダは笑顔に戻る。

 笑顔になったリンダを見るとぐちゃぐちゃになった心は影をひそめる。


「じゃあ、買いに行くぞ。」

 《その言い方もどうかと思いますが…。》


 おいおい、他にどう言えば良いんだよ。


 《それでは、行きましょう!》


 リンダの掛け声で俺は部屋を後にして宿の外に出る。

 全く人が多すぎる。

 うっかりフードが脱げないように目深に被り、人ごみの中を進む。

 しばらく進んでいくと人も減ってきて周りの雰囲気も暗くなってきて、目深に被ったフードがよく溶け込む。


「ここか。」


 目の前に『奴隷処』と掲げられた看板がさらに雰囲気を悪くして、その建物は鎮座していた。


 ーカランカラン


「いらっしゃいませ。」


 扉を開けると彫りが深い男が頭を下げて俺を出迎えた。


「本日はどのような件で。」

「もちろん奴隷の購入だ。この店はそれ以外にあるのか?」

「くくく。愚問でしたな。こちらへどうぞ。」


 薄暗い明かりのせいでより一層彫りが深く見える男に椅子に座らせられる。


「では、本日はどのような奴隷を?」

「この世界を多く見ている元旅人の闇奴隷を。」

「申し訳ないがこの店にはそのような奴隷はおりませんな。」


 男は心底申し訳なさそうに俺に謝ってくる。

 だが、俺はこれが直感的に嘘な気がした。

 相手の目を見るとなぜか嘘にしか見えてこない。

 俺は唐突にフィルアと共にチョークと黒板を買いに行った日のことを思い出した。


 ー【虚偽察知】を獲得しました。ー


 頭の中に突然言葉が響いた。

 それを皮切りに男の言葉が嘘だとわかるようになる。


「嘘だな。」

「そんな。嘘ではありません。」


 男は額に汗を吹き出させ俺の言葉を否定する。

 俺はもう少し追求してみる。

 しかし、男はかたくなにいることを認めようとしない。

 俺はここで検査場で使わなかった手を使うことにした。

 ポーチから100万ガロの硬貨1枚を取り出し机におく。

 それを合図に男の返答が変わる。


「失礼いたしました。こちらにどうぞ。」


 ちゃっかり机の上に置いた硬貨を懐にしまった男が席を立ち、床に突然開いた扉の中に俺を案内する。


「こんなところに奴隷をおいているのか。」


 扉の中に入るとロウソクが一定間隔に配置してあり、通路の左右は檻があった。

 中にはもちろん男や女の奴隷がいる。

 ただ、ここの奴隷は一般奴隷なのか中には簡素なベッドが置いてあり不衛生には感じられない。


「ここからは犯罪奴隷ですな。」

「こりゃ、すごいな。」


 犯罪奴隷の檻の中にはベッドすらなく地面に横たわっている者がほとんどだった。

 そして、体には大小様々な傷がついていた。


「因果応報ですな。そして、この部屋が件の闇奴隷がおります。」


 俺の目の前には檻ではなく木の扉がある。


「どうぞお入りください。」


 男に促されて中に入る。

 中は一際明るく、壁紙はピンクでぬいぐるみなんて置いてあり、どこか少女の部屋を想起させる穏やかな空間が広がっている。

 そして、一際柔らかそうなベッドに綺麗な服を着た耳の長い少女はいた。


「こちらが闇奴隷のエルフです。」


 地球では金髪美形のイメージが強かったエルフだが、俺の目の前にいるのは銀髪美形のエルフだった。

 いつもの俺だったら感動をおぼえていたかもしれないが、今の俺には無理だった。

 無理にしたのは彼女の目が虚ろだったからだ。

 虚ろな目はあの日を思い出す。


「こちらのエルフは旅をしている最中に奴隷売買専門の人攫いに捕らえられたものです。」

「悪いが他にいないのか?」

「申し訳ないが、闇奴隷、それも旅人をしていたなんてものは他におりません。」


 ということは、他の奴隷という選択肢はないというわけか。

 そもそも、奴隷の身分で元気でいる奴なんていないか。

 奴隷は失敗したかもしれない。

 が、奴隷の首輪ほど信用できるものはないだろう。


「わかった。その奴隷でいい。値段は?」

「こちらの娘は、エルフ。それに処女ということもあり少々お高く1000万ガロですな。」


 1000万ガロ。

 正直払えないわけではない。

 しかし、できるなら節約はしたい。


「だが、あの目はどうなんだ?もっと安くなるだろ?」

「そうですな。それを考慮して800万円ガロですな。」


 200万も安くなるのか。

 安くなりすぎな気がするが。


「その値段で買う。」


 ポーチから硬貨8枚を取り出し男に渡す。


「まいどあり。ではさっそく契約をさせましょうな。エルフよこっちに来い。」


 男はベッドの上にいたエルフに指示を出して目の前に跪かせる。

 首元には既に奴隷の首輪がつけてあった。


「今は私が仮契約をしているが、この首輪にお客様の血を垂らせば本契約は完了しますな。」


 俺はさっさく刀で指を切り血を垂らす。

 指はすぐに治癒魔法を使って治すので問題はない。


「アガ…。」


 エルフの口から綺麗でとても苦しそうな声が響く。


「契約は完了しましたな。」

「そうか。なぁ、この目だけで200万も安くなるのは普通なのか?」

「闇奴隷は犯罪ですのでさっさと引き払っていただきたいのですよ。」


 闇奴隷を売ることも買うことも犯罪だ。

 だが、闇奴隷を購入し犯罪奴隷だと言わせればなんの罪にも問われない。


 俺は奴隷エルフを店の外に連れ出て宿に帰る。


「またのお越しをお待ちしております。」


 あんな目をする奴隷を見なきゃいけないならもう来ないよ。

 というよりこいつの目を見たくない。


「いっそ、目を縫い付けてしまおうか。」

 《いけませんよ。女の子なんだから大切にしてください。》

「じゃあ、目隠しを買うか作るかするよ。」


 奴隷エルフは隣を従順についてきている。

 綺麗なせいか通行人にジロジロ見られるが、幸い絡まれることはなく無事に宿に着く。


「おばちゃん1人追加。部屋はそのままでいい。」

「4000ガロだよ。」


 おばちゃんに硬貨を手渡し、奴隷エルフを連れて宿泊部屋に入る。


「まず目隠しを…。」


 ポーチからタオルを取り出す。


「そのタオルを目に巻け。」

 《ツカサくん可哀想ですよ。》

「ごめん、リンダ。この目を見ると俺はまたぐちゃぐちゃになるんだよ。」

 《もぅ、しょうがないですね。このエルフさんも可哀想ですけど、ツカサくんも可哀想ですからね。》


 会話を終えると奴隷エルフは既に目にタオルを巻いていた。


 《この子、名前はなんて言うのでしょうか?ツカサくん、聞いてみてください。》

「えぇ、何で名前なんか。」

 《聞いてください。》

「…わかったよ。」


 目隠しを巻いたので顔を視界に入れることができるようになったエルフに聞く。


「名前はなんだ?」

「エルシアです。」


 か細い声で自分の名を口にする。


 《可愛い名前で綺麗な声ですね!》

「そうだねー。」

 《…すごい棒読みですね。》

「宝玉のこと以外どうでもいいからな。」

 《また。そういうこと言わずに。》


 本当に宝玉のこと以外どうでもいいんだが。


 《ところでツカサくん。》

「なんだ?」

 《エルシアちゃんの目隠しはそのままにするつもりですか?さすがに不便ですよ?》

「そうなんだよな。」


 俺はこのエルフに雑用をさせようとしている。

 買ったからには有効活用だ。

 ただ、この目隠しのままでは何もできないだろう。


 《心のケアをしましょう。》

「は?」

 《買ったからには最後まで責任を取らなければいけませんよ。》

「……。」


リンダはそう言っているが、俺はこのエルフのママじゃない。

最後まで責任をとる意味がわからない。

だが、あの虚ろな目は本当にやめさせたい。


「心のケアはあの目をやめさせるまでだ。」


俺は一言だけ呟く。

リンダは納得はしてなさそうだったが、文句は言ってこなかった

それに満足したところで腹が減ったことに気づく。


「じゃあ、まずは飯を食べよう。」

 《気づけば夕方になってますからね。》


 そう、もう日が傾き始めているのだ。

 奴隷エルフ、エルシアを購入するだけでなんでこんなに時間がかかるのか。


 《外で食べましょうか。》

「いや、買ってくる。また変に目立つのは避けたい。」

 《エルシアちゃん可愛いですからね。》

「…じゃあ、買ってこよう。エルシア、おとなしく待ってろよ。」

「わかりました。」


 綺麗な声で機械的に返事をするエルシアをケアしなければならないのか、と思うと本当に面倒くさい。


 飯は肉料理を選び、ポーチから出した弁当箱につめてもらい、5分ぐらいで部屋に戻ってくる。


 エルシアは俺が出て行った時と変わらない、立ったまま待っていた。


 《美味しそうですね。》

「だろ?なんの肉かはわからないけど。エルシアもこっち来い。」

「わかりました。」


 と言って来ようとするが目隠しをしているせいで見当違いの方に歩みを進める。


「目隠しを外してこっちに来て、飯を食え。」

「わかりました。」


 エルシアは目隠しを外してこちらに近づいてくる。

 俺は目を見ないようにフォークと弁当箱を渡す。

 箸は使えないだろうと思った俺なりの配慮だ。


「ありがとうございます。」


 フォークと弁当箱を受け取ったエルシアはなんとなく予想はしていたが、案の定床の上で食べようとした。

 わざわざ、椅子とテーブルに近いところに呼び寄せたのにだ。


 《ツカサくん。》

「わかってるって。エルシア、椅子に座ってテーブルで食べろ。」


 弁当箱を開けて、肉を口に運ぼうとしていたエルシアが動きを止める。

 そして、止まったままになる。


「エルシア?」


 わかりました、の機械的な声は聞こえない。

 どうしたんだ、と考えていると突然エルシアの顔がこちらを向く。

 そして、その虚ろな目が俺を写してしまう。

 だが、その目には少し光が戻っているような気がした。


「よろしいのでしょうか?」


 エルシアが始めて自発的に声を出した。

 俺はそれに驚きながらも冷静に命令する。


「椅子に座って食べろ。」

「…わかりました。」


 光が戻ったはずの目はまた虚ろになり、再び機械的な声で俺の命令に従った。


 《ツカサくん、頑張ってください。》

「気が遠くなりそうだよ。」


 飯を食べている間にすっかり日も落ちて夜になった。

 一刻も早く宝玉のことを聞き出したかったが、明日にする。

 というのも、食べ終わった瞬間エルシアが眠ってしまったからだ。


「もう一泊する羽目になりそうだな。」

 《一泊で済むといいですね。》

「さすがに一泊で済ませる。これ以上長引かせたくない。」


 リンダを早く生き還したいからな。


 《ところで眠っちゃったエルシアちゃんをどうしますか?》

「ベッドに寝かせる。」

 《ツカサくん!》


 リンダが喜ぶが俺としてはさっさと心のケアを完了させたいのだ。

 優しくしてればあの目もやめるだろうと腹黒い考えでベッドの上にエルシアを運ぶ。

 エルシアは軽くほっそりした体であんまり肉付きは良くなかった。


「あっ、今日も湯浴みに行けなかった。」

 《また明日に行きましょう!》

「そうだな。」


 エルシアがベッドを使ってしまったので俺はソファーで寝る。

 フードを被ったままだ。


 《ツカサくん、おやすみなさい。》

「おやすみ、リンダ。」


 ヘアピンを外して消えたリンダを見ながら俺は目を閉じた。

私事ですが…。


今日は外出する用事があって、その帰りに運良く山手線の新型車両に乗りました。

知ってましたか?

その車両の液晶画面にはずっとJR SKI SKIのCMが流れてるんですよ。

ずっと…。


このリア充がぁぁあああ!!


と、隣の青年が言ってました。


そのあと、東京上野ラインに乗ったら運悪く非常停止ボタン使用による車両点検に巻き込まれました。

空調止まったせいで暑かったです。

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