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旅立ち

そろそろ、人物紹介を投稿しようかと思ってます。

その時は『話』は投稿できないと思います。

「はぁ、…はぁ…。」


 ひとしきり雄叫びを上げた俺は頭をクールさせてこれからやるべきことを考える。


「とりあえず、みんなを起こさないとな。起きろぉ。」


 って言っても起きないよな。

 特にどこもなんともないからMP切れを起こしてるだけだと思うけど。


「何があったんだ!?」


 さっそく騒ぎを聞きつけた人達が壊れかけた孤児院に入ってくる。


「説明すんのは後だ!早く安静な場所に連れてけ!」

「わかりました!魔王様!」


 魔王様…ね。

 そりゃ、雄叫び上げてドス黒いものも吹き出したらわかるよな。


「子供達は連れ出しました!」

「そうか。俺も…ちょっと、疲れたから…寝る…。」

「魔王様!」


 俺だってMP切れだ。

 俺は意識を失う。



 ◆



 また、白い部屋にいた。

 だけど、あの時とは違い遠くにはどこかの景色が見える。


「ツカサくん。」

「リンダ…。」


 前を見るとリンダがいた。


「魔力切れで意識を失ったのですか?」

「うん。そうだよ。」

「それじゃあ、やっと魔法を使えるようになったんですね!」

「あぁ、やっと使えるようになったよ。【ステータス】」


 ツカサ 13歳 男 レベル:20

 種族:魔族(魔王)

 筋力:400

 体力:400

 耐性:400

 敏捷:400

 魔力:400

 魔耐:400

 技能:限界突破・経験値取得倍加・全属性魔法・全属性耐性・魔力自動回復・複合魔法・対勇者・痛分・覇気・刀術・身体強化


 魔法を使えるために払った代償があまりにも大き過ぎるけどな。


「もぅ、そんな悲しい顔をしないでください。」

「それは無理だよ。リンダは死んでしまったんだから。」


 そう、リンダは死んだ。

 なら、俺の前にいる、このリンダは何なんだろう。


 意味のない疑問を自分に投げかける。


「分かっているでしょ、ツカサくん。」

「……。」

「私はツカサくんが生み出したただの空っぽな偶像ですよ。」

「…分かってるよ。」


 俺の心が生み出したただの偶像。

 しょせん、俺がすがりついているだけの、生きてる可能性のあったifでしかないものだ。


 クスクス、とリンダは笑っている。


「私は待ってますからね。」

「あぁ、必ず生き還すよ。」

「それと、私はいつでもあなたのそばにいますよ。」


 リンダが俺の左のスボンのポケットをポンポンと叩く。

 そこを探ってみると6歳の誕生日プレゼントにもらった赤いヘアピンがあった。


「リンダ…。」

「そろそろ時間ですよ。」


 遠くに見えていたはずの景色が目の前にあった。


「ツカサくん、今は一旦のお別れです。」


 笑ったリンダを白い部屋に置いて、俺は景色の中に溶け込んでいった。



 ◆



「ツ…、…カサ、ツカサ!」


 目の前に涙で濡れたフィルアの顔があった。


「ツカサ!大丈夫!?」

「大丈夫だよ、フィルア。ただ疲れただけだから。」

「でも、1週間も寝てたんだよ!?」

「1週間!? あいつは、あいつは来てないよな!?」

「あいつって孤児院に突然来たあの男?来てないよ。それより聞いてよツカサ!その男……。」


 あぁ、良かった。

 あいつ、シンジはこっちには来てないんだな。

 かなり遠くに飛ばされたな。


「聞いてる!?」

「ん?あぁ、聞いてるよ。」


 安心感から途中でフィルアの話は聞こえていなかったが、生返事で返してしまった。


「それで、ツカサ。院長先生はどこに行ったの?」


 やっぱり、その質問が来てしまった。

 多分、正直に言えばフィルアも宝玉探しに参加するんだろうな。

 でも、それはダメだ。


「フィルア、その質問にはみんなの前で答えたい。」

「どうすればいいの?」

「みんなを集めてくれ。子供達も従業員も全員。俺からも声かけるから。」

「どこに集まればいいの?」

「学校の校庭に集めてくれ。」

「わかった!行ってくる!」


 フィルアは走って扉から出て行った。

 それと入れ替わりように白衣を着た女の人が入ってくる。

 どうやら、医者のようで、俺に体の調子はどうか、と聞いてくる。

 大丈夫だ、と答えると退院しても良いと言われる。

 さっそく退院しようとしたら、お体にお気をつけてください魔王様、と深々と頭を下げてくる。


「なぜ、魔王だとわかった?」

「魔族の者は皆わかります。」


 端的にそう答える。

 どうやら、魔族は魔王とは切れない縁にあるらしい。

 そして、これでフィルアも俺のことが魔王だってわかっていたことになる。

 そうなると、リンダのことも見当が付いているのだろうか。

 俺が魔王になった原因をわかっているのだろうか。


 病院から出て、学校にむかうことにする。

 なんとなくだけど、もう集まっているような気がしたからだ。

 これも、魔王と魔族の縁なのだろうか。

 そして、学校に着くと案の定かなりの人数が校庭に集まっている。


「ツカサ!全員集めたよ!」

「あぁ、ありがとな。」

「当たり前じゃん!だって、未来の奥さんだよ!」


 そうだったな。

 でも、その未来の奥さんに対して俺はとんでもなく酷いことをするんだよ。


「フィルア、好きだよ。」


 フィルアを抱きしめる。

 強く強く抱きしめる。


「ちょっと、ツカサやめてよ。嬉しいけど、みんないるから。それにまだ院長先生とも話してないし。」

「フィルア、好きなのは絶対だから信じてくれ。」

「ツカサどうしたの?さっきから様子がおかしいよ?」

「信じてくれ。」

「信じてるし大好きだよ。でも、本当にどうしたの?」


 フィルアから聞き出せた言葉に安心感が得られ、フィルアの体に回していた腕を離す。

 そして、心配してくるフィルアに笑みをむけ朝礼台の上に引っ張っていく。


 朝礼台の上に立つと一斉にこちらに視線が集まる。


「皆集まってくれてありがとう!」

「「「「「はっ!魔王様!」」」」」


 チラッと、フィルアを見る。

 目を輝かせて俺を見ている。


 やめてくれ。

 魔王になんてリンダがいればならなかったんだから。

 だが、なってしまった。


「俺の名前はツカサだ。おそらく大多数が知っていると思うが俺は大魔国建設と大魔国農林と大魔国学校を立ち上げた1人だ。」


 やはり知っているようで、驚きの表情はせず、頷いて返事をしている。


「そして、会長だったリンダも立ち上げた1人だ。」


 それも知っているようだ。


「さて、ここでリンダが行方不明になっているのは知っているだろう。」


 従業員よりも子供達の方が食いつきがいい。

 なぜ行方不明になってるのか早く教えろと言わんばかりに睨みつけてくる。


「リンダは今、安全な場所にかくまってもらっている。」


 孤児院が勇者に襲撃されたことを、その勇者がリンダを狙ったこと伝える。

 しばらくすれば帰ってこれることも伝える。


「あれ、勇者だったんだ…。よくも院長先生を!」


 隣にいるフィルアが怒りの表情を浮かべる。

 子供達も同じような表情をしている。

 時折、殺してやるみたいな声が聞こえるが、それをやるのは俺だ。


「まず、勇者の襲撃を受けたことを考慮して、結界魔法を使える人達でこの魔国の首都『スラガ』を魔族以外が通ることのできないようにしてほしい。」

「「「「「はっ!」」」」」


 結界ができればさすがの勇者も通ることはできないだろう。


「そして、かくまっているせいで、現在、会長職が空いていることになる。そこで、その席には俺の隣にいるフィルアに就いてもらおうと思っている。」

「えっ?」

「それと同時に新たに『大魔国電力』を立ち上げる。その社長には同じくフィルアを就けようと思う。」

「ちょっと、待っ…。」

「これに異議があるやつはいるか?」

「「「「「異議なし!」」」」」


 黒いオーラ、【覇気】を噴き出しながら皆に問いかけると誰も反対する人はいない。

 魔王の力を使って脅迫するみたいになってしまったがこうでもしないとフィルアは連いてきてしまうから外堀から埋めることにする。


「では、会長をフィルアとし、これからもこの魔国の発展に努めてくれ!」

「「「「「はっ!」」」」」

「では、解散してくれ。」


 俺の言葉に魔族達は速やかに従い、学校から出て行く。

 魔族は魔王に従順なんだな。

 誰一人として拒否をしたり、疑問を抱く様子が見えない。

 こんなガキに従うのは不安にならないのだろうか。


「ツカサ、私こんな話きいてないよ!」


 ようやく、不満を言えるようになったフィルアが食ってかかってくる。


「言ってないもんな。でも、フィルアならできるだろ?」

「確かにツカサからいろいろ教わったからできる。けど、ツカサがやれば良いじゃん!」

「俺は、やることがあるから…。だから、フィルアがやってくれ。頼む。」


 真摯に頭を下げる。


「ツカサ、どこか行くの?」


 フィルアが縋るように聞いてくる。

 俺は優しくさとすように答える。


「俺はこの国を出るんだ。」

「どうして?」

「新しい技術と素材を見つけてくるよ。」

「それはツカサがやるべきこと?」

「俺がやるべきことなんだ。」


 少し突き放すように言葉が口から出てくる。

 それで、フィルアは何も言わなくなった。

 だが、最後にきいてくる。


「本当に院長先生は安全な場所にいるんだよね?」

「そうだよ。ちゃんと安全な場所にいるよ。」


 俺は好きな人に平気で嘘をつく。

 そんな自分に虫唾が走るが、フィルアにまで死なれてしまったら、俺は……。


「…わかった。」


 ーチュ


 フィルアの幼い柔らかな唇が俺の頬にほんのわずかな赤みを残す。


「ツカサ、頑張ってね!」

「おう!頑張るよ!」



 ◆



 フィルアから激励をもらった俺は、結界魔法が使える人達と共にスラガに結界をはる。

 これで魔族以外の種族は入ることができない。

 魔国は平和に技術発展が続いていくはずだ。

 会長と社長職に就かせたフィルアはそうそうスラガから出ることはできないだろう。

 何年後に戻ってこれるかはわからないが、さっさとリンダを生き還して2人と暮らしていきたい。



 ◆



 ダメージを少し軽減して機動力に優れて、さらに魔族のツノを隠すためにフードが付いている黒いレザーマント。

 腰にお金やポーションなどを入れるために魔法で容量が拡張されたマジックポーチ。

 左腰に前の魔王が使っていた鞘に収まった真っ黒い刀。


 結界をはって数日後、俺はこれらの装備で身を固め、新しく建設された門にいた。

 ここから一歩出れば、魔国の外だ。


「始めてこの国から出るな。神殿だって一応魔国の中だったからな。……行くか。」


 俺は1人、魔国の外に一歩を踏み出した。


「ツカサーー!!」


 フィルアの声だ。

 俺は忙しそうにしていたフィルアに一声かけただけで旅立ちをしようとしていたのだ。


「行ってらっしゃーーい!!」


 後ろを振り返ると、フィルアが手を振っていた。


「行ってきまーーす!!」


 俺も大声でフィルアの言葉に返事をする。

 その後俺の姿が見えなくなるまでフィルアは手を振り続けていた。

 フィルアの姿が完全に見えなくなった俺はポーチから赤いヘアピンを前髪につける。


 《可愛いです。よく似合ってますよ。》


 リンダの声が聞こえる。

 リンダの姿が隣に見える。


「てっきりあの白い部屋でだけでしか会えないと思ってた。」

 《私はツカサくんのそばにいますから、いつでも会えますよ。そんなことより本当に似合ってますね。》

「仕方なくつけてやるんだからな。」

 《わかってますよ。》


 微笑んで俺を見る。


 《ところで、これからどこに行くんですか?》

「とりあえず宝玉についてきくために他種族の街に行くよ。魔国じゃ全然わからなかったからな。」

 《しょうがないですよ。実質、鎖国みたいで外からほとんど情報なんて入ってこないんですから。》


 外からの情報といえば魔族の冒険者達がもたらしてくれるものしかない。


 そういえば、魔族の冒険者って外に出ても魔族だってバレたりしないのだろうか。

 あの人たちはしっかりツノだってあったし。

 外では認識阻害の魔法でも使っているのだろうか。

 会ったらきいてみよう。


 《あっ、スライムですよ。ツカサくん。》

「本当だ。」


 1人考えていたら青いスライムが前方に現れた。


「初めての魔物だ。」

 《魔国から出ないとそうなりますよね。》


  俺は左腰から刀を抜刀し速やかにスライムを切りつける。


「よわっ!」


 切った瞬間、カランッ、と魔石が落ちドロドロと溶け出す。


「スライムってやっぱり、最弱なのかね。【ステータス】」


 ツカサ 13歳 男 レベル:21

 種族:魔族(魔王)

 筋力:420

 体力:420

 耐性:420

 敏捷:420

 魔力:420

 魔耐:420

 技能:限界突破・経験値取得倍加・全属性魔法・全属性耐性・魔力自動回復・複合魔法・対勇者・痛分・覇気・刀術・身体強化


「あ、レベルがあがってる。さっきよりは体が軽くなったかも。」


 魔石をポーチに放り込み、再び歩く。


 この後、魔物はスライムしか出てこなかった。

 しかし【経験値取得倍加】のためか、どんどんレベルが上がっていく。

 そして、【身体強化】を使いながら走ること数時間。

 日が沈みかけ野宿を考え始めた時、人間と獣人が街に入るための門に列を成しているのを見つけた。

あぁ、次話ぁぁあああ!

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