学校の昼休み。
校舎の端にある非常階段に、オレたち仲良し五人組は、いつもたむろっている。
非常階段は校舎内の階段より幅が狭いため、そこを通る他の生徒の事を考えて、前の段に二人、後ろの段に三人という形で座る。
だが、非常階段とは名ばかりで、食堂から一番近いこの場所は、頻繁に利用されている。
そんな所にオレたちがわざわざ居座るのには、ちゃんとした理由があった。
オレたちの前を通り過ぎ、階段を登って行く、女生徒が一人…
「ピンク!」
「青の水玉!」
「赤のレース付き!」
「純白の白!服部、お前は!?」
「黒やな」
それぞれが女生徒を見て、色を予想し、通り過ぎたところで、下からスカートを覗き込む。
「黒や!!」
結果は黒。
オレの隣に座っている服部が、得意気な笑みを見せている。
「お前らはホンッマ予想が当たらんなぁ。同情するわ」
「何が同情じゃ!あの顔はどー見ても純白顔やんけ!」
予想がはずれた悔しさと、いい気になっとる服部に軽くイラついて、オレはキレた口調で言い返した。
オレと服部は、小学生ん時から仲良しで、ずっとこんな事をして遊んでいた。
世間で言う、悪友ってヤツや。
中学に入ってからは、オレと服部の後ろに座っとる三人が加わって、この遊びは、オレらの中でスポーツ的な扱いをされるようになった。
競技人口五人。
この五人で競うのが、ホンマにおもろいんや。
…まぁ、一人だけずば抜けて才能を発揮しよる空気読まんアホが、オレの隣におるけどな。
踊場から、女生徒らしき影が見える。
二回戦突入や!
「あんたら、ホンマ飽きひんなぁ…」
めっちゃ嫌みったらしく、呆れた顔、口調で、踊場からオレたちを見上げる一人の女生徒。
オレの心臓は瞬間的に高鳴る。
「何やねん和葉?ほっとけや!」
服部はすかさず言い返す。
「ホンッマあんたらは中学ん時から成長せえへんなぁ」
「そんな事ないで?中学ん時より選球眼良うなったし、打率も上がったで!」
オレの後ろのヤツが、誇らし気に鼻を鳴らした。
「なにが打率や選球眼や!野球と一緒にしなや!」
「やいやいうっさいねん!これも立派な男のスポーツや!」
オレが口を割り込ましたら、睨みを利かした目ぇがオレに向けられた。
「あんたらにスカートん中見られる女の子がかわいそうやんか!」
遠山は、あくまでも女の味方らしい。
オレと服部が小学生ん時から仲良しやから、遠山ともある程度仲は良かった。
おんなじクラスにはなった事なかったけど、服部の家で遊んでたら遠山が遊びに来る事が多々あって、そんで一緒に遊んだりしてた。
今でも時々、オレと遠山と服部で、服部んチで喋ったりする。
でも、それは全部最初から約束してたモンやなくて、遠山がアポなしでやって来てたからやった。
そんな頻繁に、幼なじみと言えど男の家に、しかも両家の親公認で出入りしているの事に、ちょっと妬いてしまう。
オレと服部の座っている間に出来たわずかな隙間に、遠山が自分の尻をねじ込んで来た。
その尻はそのままオレと服部の間に落ち着いた。
つまり、かなり至近距離に遠山がおる状態で…
「ちょ!止めろや和葉!」
「ホンマや遠山!そんなでっかい尻…!」
遠山の肩がオレの肩に当たっている。
もちろん服部もそうやろう。
「なんやてぇ!?あんたらがアホせえへんようにアタシが見張ってんやんか!」
少し照れくさくなって、遠山も男にぴったり挟まれた状態やったら気分悪い思て、ゆったり座れるくらいの間隔を開けたったのに、遠山は相変わらず服部にくっついたまんまで…
階段の端に座っていた服部は、遠山から離れる事は不可能で…
…ただ単に、オレだけが遠山から離れたというだけの結果になってしまった。
「どっか行けや和葉!」
「嫌や!平次のお姉さんとして、ちゃあんと見張らしてもらいます!」
オレが小さい後悔をしていると、隣で痴話喧嘩ともとれる言い合いが始まった。
「なにがお姉さんや!こんなブスな姉ちゃんごめんや!」
「なんやとお!?カス探偵!」
聞いてるこっちは、めっちゃほのぼのしてまう。
でもオレは、それと同時にやきもきしてまう。
遠山が誰の事好きかくらい、態度を見てたら分かる。
今だって、オレが隙間を作ったのに、一人の男にくっついて…
結構積極的にアピールしてると思うんやけど、それに全く気付かないカス探偵。
そのカスも、自分ではまだ気付いてないみたいやけど、遠山の事をただの幼なじみやとは思ってないはずや。
「高校生にもなって、恥ずかしくないん!?」
遠山がオレたち五人を見回しながら、眉間にシワを寄せながら言った。
「恥ずかしいも何も、こればっかりは男の習性やし?」
「そうそう」
後ろのヤツらが交互に言葉を続ける。
「アホくさ」
しかし、遠山の一言で、オレたち男の夢は潰された。
「あんたら五人が揃ったらヤラシイ事しか考えてへんねやね」
今度は半目で睨みを利かしながら、オレに話をふって来た。
もちろん服部にくっついたまんま…
「遠山、オレたち五人組をナメたアカンぞ。浪花のスマップとはオレたちの事やぞ」
オレの言葉に、四人は歓声を上げた。
しかし遠山は呆れ顔で…
「誰がナニワや!ハニワみたいな顔して」
…オレは結構繊細やったりする。
でも、こうやって遠山に思った事をズバズバ言われるというのは、オレに気を使ってないって事やから、落ち込むどころか、嬉しくなってしまう。
お察しの通り、オレは遠山に惚れてたりする…
でも、オレはハニワみたいな顔やないって事だけは言うとく。
|