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肉じゃが狂騒曲
設定等不明でも読める程度のお話です。

アレックス・スズキ 日本がモデルの国の出身です
ヤン 中国がモデルの国の出身です
マティアス(マット) ドイツがモデルの国の出身です

アレックスさんは実和子さん、スズキさんはピコリさん、ヤン君はあやめさんからお借りしています。
「えええ、またじゃがいもなのかー!?」
「仕方ないでしょ、豊作だったんだから」
「食えないよりましだ、文句いうな」
「だってよお!もう1ヶ月もじゃがいもばっかり食ってるじゃねえか!」


秋。実りの秋。
中立部隊ではじゃがいも祭りが開催されていた。

---

アレックスが並べられた食膳を見て、ぼそっと呟いた。

「とはいえ」
「何です?」
盛り付けをしているマットがその呟きに反応する。

「確かに毎回フライドポテトとふかし芋じゃ、…」
「美味しいですよ」
「美味しいのはわかってるさ。だが…こう…」

「肉じゃがが食いてえなあ」

少し離れた席から、またぼそり、と声がした。スズキだ。

「あー。いいなあ、肉じゃが」
「NIKU JAGA?」
ヤンが反応する。
「ああ、ヤンとマティアスは知らねえよな。スズキさんと俺の国の郷土料理だよ」
「どんな料理なんです?」
「豚肉とじゃがいもと、人参と玉葱と白滝を混ぜて煮たやつでな」
「美味しいんですか」
「そりゃもう。いわゆるお袋の味ってやつでさ」
「へえ」

その会話は、そこで終わり。のはずだった。

---

「なあ、マット。アレックスの言う『肉じゃが』てやつ、作ってみねえか?」
「何か楽しそうですね、ヤンさん…」
「何かさー。血が騒ぐってっか」
そういえばヤンは、実家が料理店と言っていた。知らない料理を聞くと作りたくなるだろうか。
「それに、肉じゃがってんだから肉入れるんだろ肉」
…いや。単に肉が食いたかっただけのようだ。
「ヤンさん、今の部隊の経済状態わかってます?」
「けちくさい事言うなよお。だって毎日なんだぜ?ふかし芋が主食で揚げ芋がおかずとかさあ。何かこうさ、かわいそうだろ、若い奴らとか。1週間に1度くらい肉料理食えれば士気も上がんだろうがよ」
…ああ、そういえばアレックスもそんな事を言っていたような。
「まあ…週に一度くらいなら…」
「だろ、だろ、なあ、作ってみようぜ」
「でもヤンさん、レシピ知ってるんですか?」
「それなんだよな…」
「じゃあ、どうにもならないじゃないですか…いや…」
「ん?」
「サーヤなら知ってるかもしれない」
「サーヤ?」

---

翌日。ヤンとマットは街の一角にあるアパートを訪れた。
「こんにちはー」
マットが声をかける。だが返事はない。
「留守なんじゃねえか?」
「いや、昨日連絡して『わかったー』って言ってましたから大丈夫だと思うんですけどね」
「あ!マットさん、もう来てたんだ!ごめんごめん!」
背後から聞こえた大きな声にヤンが振り向いた。
「うわっ!」
「……今度は何を追跡してたんですか」
「猫!三角な顔をしてて、普通の猫の5倍位大きいの!」
「……それは猫じゃなくてネコ科の何かでは」
「そうかも!」
頭に木の枝をゆわえ、首からカメラをぶら下げた少女が、ぶかぶかの白いシャツとアーミーパンツを泥で汚した恰好で立っていた。
「着替えてくるから待っててね!」
「はい」
少女はそのままの姿でドアの中に入っていった。中から何かが落ちる音が聞こえてくる。
「な、あれなんなの」
ヤンの言葉に、マットは人差し指を口元に当てるジェスチャをし──こういった。
「サーヤ。……スズキさんの妹さんですよ」

---

小夜さやに肉じゃがのレシピを書いてもらい、二人は翌朝、市へ向かった。
「えーと、なになに…じゃがいも、これはあるよな。で、玉ねぎと人参もある…なぁ、このシラタキって何だ」
「俺も初めて聞いたんですよね。細くて麺みたいな形をしてるって聞いたんですが」
「日本でしか売ってないんじゃねえか?」
「そうかもしれませんね…」
「じゃ、雰囲気出すためにそれっぽいものいれとこうぜ」
云うなり、ヤンは雑踏の中に消えた。人の頭の向こうに、売り場の女性と話してるヤンの頭が見える。やがて、ほくほくした顔をして、品物を小脇に抱えマットの元へ戻ってきた。
「…何を買ったんです?」
「ラーメンだよ!違うかもしれないけど、見た感じ、故郷で売ってるやつに似てたんだ」
「…麺みたいな形とは言ってましたが、麺ではないのでは…」
「しょうがねえだろ、ここじゃ売ってないんだから!ようし、どんどん買っていこうぜ!」
ヤンは荷物をマットに渡すと、また違う売り場へと行き、肉屋の売り子と商談を始めた。

---

「へえ」

その晩に出た皿を見て、アレックスが軽い感嘆の声を上げる。

「肉ひさしぶりだなあ」
一人前の皿に炒めた麺、粉ふきになったジャガイモ、炒めた厚切のベーコンと煮えた人参と玉葱、その上から肉汁がかかっている。
「えっへへー」
エプロンをつけた今日の食事当番であるヤンが得意げにやってきてアレックスとスズキの前に仁王立ちした。
「懐かしいだろ!肉じゃが!」

その一声に、食事を口に含んでいたスズキが咳き込む。

「肉…じゃが…?」
「そう。サーヤに教えてもらったんだぜ!」

アレックスはヤンの顔を呆然と見て、横に座るスズキの顔に目を移す。スズキは横に手を振った。
スズキとアレックスの視線がマットを射る。

「…美味しいですよ?」
「うん。美味い。肉とジャガイモも入ってるしな」

---

貧乏なゲリラ部隊の若者には久しぶりの肉料理が好評だったため、ヤンが作った「NIKU JAGA」は週一の特別メニューとなった。

「お、今日は羊肉のNIKU JAGAだってよ。うまそー」
「麺はスパゲティみたいだな」

そんな会話を交わす若い兵卒を見て…アレックスとスズキはため息をついた。

「…肉じゃが、食いたいっすね」
「ああ。ほんとにな」
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