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第八話 夜会の衝撃

あばばばお気に入り件数が900件を超えた記念に思わずハーゲンダッツを買ってしまいました。やばいリッチ!←


本当にありがとうございます。

夜会当日の夕方、後宮は荒れに荒れていた。


少しでも王の側室になる可能性のあるものはみな、ほかの女よりも目立つもの、高級なものをと殺気をとばす勢いでアクセサリーやドレスに力を入れていた。


逆に気合をいれすぎているものもあったが、みなさすがは大国の姫というべきか、後宮内を夜会用のドレスをきて闊歩する様子は大変華がある。


赤、群青色、黄色に桃色と目がチカチカしそうななかで、私のドレスは若草色で印象が薄くなるようにつくられていた。


自分としては、目立たずに王をみることができればいいため、ベストなドレスなのだが、ほかの姫君たちは気に入らなかったらしい。


「あなたをみた最初から思っていたけれど、貧乏貴族は貧乏貴族なりに、もう少しドレスの修正でもしていらしたらどう?あなたの衣装で側室候補みんな地味だなんて思われては恥になりますわ。」


「あなた一人いるせいで、一気にまわりの景色の華やかさが損なわれてしまいますわ。どうせ、側室として名前を呼ばれることはないでしょうし、さっさとかえられたらいかがかしら。」


この二人は、最初にこそこそと嫌みをいってきた二人でもある。


キィール国のアシュレイ・サウンダリットとベゾラン国のサリー・リンストン。


アシュレイは赤茶色の長い髪をウェーブさせており、少しキツめな顔の美人で、サリーはすこしくすんだ金色の髪をお団子のように頭の上におさめている可愛い系だ。



どうやらこの二人に目をつけられているらしい。


アシュレイはふん!と鼻で笑うと、さっそうと華やかな方へと歩いていく。


サリーはニコニコと笑いながら


「はやく帰り支度をしてきたら?」


と毒をはいて、アシュレイのあとを追っていった。



正直、下級貴族はここまで差別をうけていたのか、と驚く。


なぜ人々は階級で人のランクを決めつけてしまうのだろうか。


そしてなぜ簡単に人を見下すことができるのか、私にはまだわかりかねていた。


上に立つものとして情けない限りだ。






なにはともあれ、夜会は開かれる。


壮大なる音楽と共に人々は優雅に踊る。


しかし私はそれとなく混雑する場所をさけ、見事壁の花になることに成功。


笑顔でこの国の大臣たちと踊る側室候補たち。


しかし、それが作り物の笑顔であり、最後のチャンスまでのがさないという捕食者のように、目が輝いていたのを私はしっかり確認した。


側室候補の人たちは全員大広間の中にいるし、すでに大臣たちもそろって各自飲み食いなどしているようだった。


だが、肝心の主役であるレンゲルド様はまだこられていないようだった。


いつも一緒にいる宰相様もいない。ちなみに、八年前レンゲルド様のお付きをしていたのは彼だったらしい。


その二人がいないことは、さすがに変だ。


夜会はもうはじまっているのに・・・。




そういえば、今日だれか呼ばれていると、数日前にほかの側室候補が話していたのだが、だれだったろうか。


その人物のせいで遅れているのか?












と不安になった途端に、大きな音と共に開かれるドア。



あまりの勢いに貴族や側室候補たちは動きを止めて、大きく開かれたドアをみる。









そこにいたのは、息をみだらせ、息苦しそうに呼吸を繰り返すレンゲルド様の姿があった。











思わず胸がきゅっと縮まる。


ああ、ますます胸が高鳴っていく。


初めて見た時よりも、八年ぶりに彼を見たときよりも、さらに大きく、苦しみをともなって。



これは、恋なのだろうか?


いや、もう恋という名ではおさまらない。


もう、彼を考えるだけじゃ満足できないのだと、今潔く認める。


彼を見つめるだけではもうダメなのだ。


もっと。もっと・・と思考は、今現在彼を見つめることで貪欲にレンゲルド様を求めていく・・。







しかし、一方のレンゲルド様は夜会を楽しむ様子もなく、慌ただしく側室候補の顔を見て回っている。


ここまで必死な様子は大臣たちも初めてだったのであろう、口をあんぐりとあげながら目を見開いて、レンゲルド様の意味不明な行動を見つめている。




しかし、私は、彼の必死な様子を直視できなくなってしまった。








彼は誰かをさがしている。






ずくっと、胸が張り裂けそうに痛くなる。


そう、彼にはもともと想い続けている人がいるとの噂があった。


だからこそ、私は彼に会うだけで十分だった。


・・・・十分なはずだった。






どうやら、彼の最愛の人は、側室候補の中にいたのだろう。


でなければ、普段冷静沈着、冷えきった王として名高い彼が汗を流しながら人をさがすだなんてありえない。




自分の恋心の深さを気づいた瞬間に失恋とはなんとまあ滑稽なことだろうか。


彼をみるだけで満足できるなどと、よく叔父にいえたものだ。


今の彼の姿をみるだけで、顔もわからない彼の最愛の人にほの暗い気持ちを感じてしまうのに。







もう、そんな彼を見続けるのは、あまりにきつかった。





大広間にいるすべての人たちが彼をみる中、私一人だけそっと背中をむけ、大広間をぬける廊下へと歩いていく。


誰もそんな私を気にもとめない。




そう、これでいい。


今までどおりの生活にもどるだけだと私は私を説得する。




「あ、ごめんなさい。」



前をよくみてなかったおかげで、人だかりにぶつかり、体が大幅によろめく。


視界に彼が見えそうになるのを、ぐっとおさえて、ゆっくりと歩きだした。








が、その瞬間激しいほどの力で後ろから掻き抱くように抱きしめられる。

余りにも突然の抱擁にびくりと固まる体。

はぁという艷やかな安堵のため息が自分の耳のすぐそばをくすぐる。



なにが・・・起こったのだろうか?




状況の把握もできないなか、今度は体を横抱き、つまりお姫様だっこをするようにもちあげられ、足が宙にうく。


悲鳴がでそうになるのをおさえて、こんなことをする不届きものはだれだと、顔を確認した瞬間、思わずピシリと体が固まった。





「ルドヴィリー王弟殿下、これで約束を果たしていただけますね!!!!」





これは夢だろうか。


きらきらと光が舞う。


目の前にあるのは、幼き日にみた、キラキラの笑顔。


眩しくもあり、ずっと欲しかった笑顔が、いま目の前にある。



そう、私を抱き上げ、ルドヴィリー王弟殿下・・・・私の叔父に何かを宣言しているのは、私の初恋の相手であるレンゲルド様だった。








混乱する頭の中で、叔父のニコニコとした笑顔が妙に印象的だった。













次からはレンゲルド編です。

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