第三話〜集団合宿と男子のエロトーク〜
毎日が充実してると、時間が経つのって早く感じるよね。
それが1分でも1時間でも1日でも・・・。
もう、吹奏楽部に入部して2ヶ月が経とうとしていた7月のある日、合宿の話になった。
こうやって書くと、なんだか私達が自主的に言い出したみたいだけど
吹奏楽部の合宿とかじゃなくて、私の通ってた高校には【訓練合宿】ってのがあったの。
入学して3ヶ月、そろそろ仲良くなってきてクラスにも馴染んだ私達1年生を宿泊施設のある体育館に電車で移動させて、号令なんかを覚えて整列したり定められた通りに動いたり・・・言うなれば、集団でのゲームだね。
号令に合わせて整列・散開などを行い、間違えれば罰ゲームの全力ダッシュが待っている。
一泊して行うことで、集団生活のマナーやルールを身につけましょうってのが合宿の主旨。
まあ・・・朝も早くから夕方まで訓練は続き、ようやく終わったころには疲れてヘトヘト&汗でベトベトだったよ。でも、ここで一つ問題があった。
なんと、お風呂に入れない。
いや、恥ずかしくて男の子と一緒に入れないとかじゃなくって、その施設にお風呂がないの。
あえてもう一度言うけど、7月よ?7月。問答無用で夏なんだよ?
そんな中、1日走り回らせておきながら風呂が無い。結構な羞恥プレイだよね。
それでもまあ、全員汗臭くなるんだから、フェアっちゃあフェアだけど。
夜は夜で、私は当然男の子達と同じ部屋で寝ることになる。
その事自体は別に良かったんだけど、好みの女の子の話から始まって、やっぱりエロトークに発展するのね。エロトークって言っても、そこは高校1年男子。
興奮する胸の大きさだとかお尻の形だとか、どんなエッチしたいか・・・なんて他愛も無い内容のトークなんだけど、私はイマイチついていけなかった。
女の子がそういう対象じゃなかったんだから、当然そうなるよね。
そんな乗り切れない・・・楽しめない会話の中、私の頭にふとよぎったのは山本君だった。
毎日の下校の時、そんな話にならなかったし・・・
山本君も・・・こんな話をしたりするのかな?
それがとても気になった。なんだか無性に山本君と話したくなった。
だけど、違うクラスの彼とは顔を合わせる事も無く、一泊の合宿は終わる。
もう、自分で思ってた以上に山本君に惹かれてた。
きっと、ここまでで恋に変わってたんだと思う。
訓練合宿から帰って来てからも、山本君と一緒に下校する。最後の別れ際の曲がり角
『じゃあなぁー!』
って言って、顔をクシャッと歪ませて笑う彼をどんどん好きになっていった夏休みの少し前。
吹奏楽をやってたか、今もやってる人は知ってると思うんだけど、7月から8月にかけて
全日本吹奏楽コンクール(地区予選は夏。本選は秋に開催される)
って一大イベントがあるのね。それには、まだ私が1年で出れなかったんだけど、吹奏楽部での合宿が夏休み後半にあると知らされる。その合宿に参加か不参加を確認する為の名簿があって、クラスとフルネームが書いてあるだけなんだけど、それを見た私は知った。
山本勇気
そう、山本君と私は同じ名前だったんだ。
嬉しい気持ちも少しはあった。でも、それ以上に凹んだ。凹んだっていうより男であることに心底、嫌気がさした。
男である以上、山本君の【彼女】にはなれない。部活仲間で、同じパートで、他の人よりほんの少し仲の良い友達。
そこから脱却できないことを思い知らされた気がしたから。
でも、それがきっかけで彼とは今まで以上に距離が近くなった。
もちろん、友達として。
相変わらず、あの笑顔に惹かれていくんだけど・・・それでも彼との短い下校時間は私にとって大切で、心躍る時間になっていた。
合宿も終わり、夏休みも明け、いつもと変わらない毎日を過ごす私の周りに変化が起き始めた。
たしか・・・9月の中頃だったかな?
ナヨナヨして男らしさのカケラもない私に、彼女を作ろうと奮闘する男の子が現れた。
恋愛の対象として女の子に接する事ができないし、なにより山本君がいる。
正直言って、そっとしておいてもらいたかったんだけど・・・そんなことも言えず、親切心からのお節介だから突き放すわけにもいかず・・・結構な長期間、彼の奮闘は続く。
色々と面倒臭い時期だったよ。
面倒臭いながらも色々と悩んで葛藤した。
自分が女で生まれてきてたら
美咲と友達になれてたかな?
山本君と話せてたかな?
同じ名前なんかじゃなくて、部活以外に接点を持てたかな?
彼にこんなに惹かれてたかな?
女の子になりたい、女でいたいと思えたかな?
色んな事を考えて悩んだけど、明確な答えなんて出なくて、行き着く結論は決まって【どうして私は男として生まれたんだろう?】だった。
【もし】って仮定の話をいくらしても、考えても、過去も現在も何一つ変わらない。
高校1年生、15歳の私は・・・そんなことを知らなかったし、そこまで考えるなんて無理だった。
でも、親を恨んだりはしなかったよ。
私にたくさんの愛情を注いで、大切にしてくれたし、現在も善き理解者だもん。
だからこそ、嫌悪の対象が全部自分になっちゃったんだろうね。
そんな私は部活中、気がつくと山本君を視線で追ってる。
もう、どうしようもない程に彼を好きになってるけど言葉にも態度にも出せない。
悶々としたまま季節は冬へと移り、迎えたバレンタイン。当然、チョコを渡すなんてこともなく女子部員からもらった、ほんのり甘い義理チョコをほおばった。
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