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異世界の姫さまが空から降ってきたとき 作者:杉乃 葵

第五章 観季

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第六十話:tempestuous

 よくよく考えてみれば、観季とはまだほとんど会話をしていないことに気が付いた。この間、目の前で倒れたときに声をかけたぐらいだ。シャンプーの良い香りがしたのを憶えている。小柄な身体にか細い声。黒髪ショートの女の子。知っている事はこの位だ。後は、赤部と同じクラスであり、つまりは、隣のクラスだという事だ。
 さて、どうしたものか……

 ついさっきの事だか、ニーナが顔に触れた。その事で、どうやらこちらの考えている事が伝わってしまったようだ。本来ならば、ニーナが意図しない限り、触れるだけで伝わる事は無いらしい。ニーナにしてみれば、不慮の事故だそうだ。勝手に伝わってしまう位、強く想っていたのではないですか? というのが、ニーナの見解である。
 何が伝わったのかというと、観季と赤部の件で自分に何か出来ないか悩んでいる事らしい。変に誤解されても面倒なので、一部始終を話して聞かせたところ、私も手伝うと言い出した。なんでお前がと制止しようとしたら、じゃあなんでコーイチが? と痛いところをつかれた。よくよく考えたら、自分が関わらなければならない理由は特に無い。強いて云うならば、事情を知ってしまったから。そう云うと、ニーナは、じゃあ、私も事情知ってしまったから、手伝わないとね。と云い出したのだった。

 そんなこんなで、昼休みも終わろうかというのに、隣の教室の前に居る。

 一体どう切り出せと?

 ニーナの奴、せっかちだったんだな。放課後にしようと云ったのに、善は急げだよ、と云って教室の前まで走ってってしまってこの有様だ。ニーナの顔を見遣ると、早くしなさいと顔に書いてあった。
 とはいえ、まったく考えがない訳では無い。ニーナの発案だが、今は、それに頼ろうと思うのだ。思うのだが……

「観季って人の、その能力をコントロール出来る様にすればいいと思うんです。」
 ニーナの居た世界では、皆それぞれ何かしらの特殊な能力を持っているらしく、若いうちにその能力を巧くコントロールする訓練をするのだそうだ。そんなこと云われても、この世界では、そんな特殊な能力を持っている人間なんて居ないぞ。観季が特別なんだ。と思ってすぐ違和感があった。なんだこの違和感。まあ、いいか。ともかく、訓練って云ったって、どうするんだ? そんなカリキュラムは、この世界にはねえよ。ニーナのやつは、こっちでもたぶん一緒、って云ってやがったが。

 ガラッ

 扉が突然開いた。

 ツカツカと、ニーナが教室に入って行く。
 そうか、扉を開けたのはニーナか。こいつ、もたついている自分に業を煮やして扉開けやがった。まったく、せっかちな奴だ。ニーナってそうだよな。いつも考え無しに飛び出して行って……。しょうがない奴だなあっと、孫を見遣るこうこう爺のような面持ちで、ずんずん中に進んで行くニーナを観ていた。振り返ったニーナのキツイ眼は、早く来なさいと云っていた。

 仕方無く教室に入る。

 異物の侵入を警戒する周囲の視線に晒されながら、ニーナの元に辿り着く。
「で? どの娘?」
 こころなし怒気を含んでいる様に感じるのは気のせいですか? そして、どうやらビジュアルは伝わって無かった様だ。
 周囲を見渡し、観季を探す。途中、赤部と目が合ったが、慌てて視線を逸らしやがった。コノヤロウ、覚えとけよ。何もあからさまに逸らさんでも。
 教室の隅っこ。まさに観季にびったりな感じの場所に、彼女はちょこんと座っていた。取り敢えず鼻息の荒そうなニーナを置いておき、観季の席に近付いた。彼女は、こちらに気付いていないのか、じっと前を見て座っていた。
「よう! 元気か?」
 云ってみて、なんとも間の抜けた挨拶をしてしまったと思った。観季は、気怠そうにこちらを振り向き、なに? と小さく呟いた。なにって、云われてもなあ。何なんだろう。自分でも解らない。なんでこんな事になったんだろうなぁと嘆いていると、ニーナの奴が、ちょっと話があるの、と話し始めた。
「もう、授業始まるから。」
 そりゃそうだよなぁ。いまから話なんて無理だろう。放課後に出直そうぜと云うと、あなたは自分の力をコントロールしないといけない、といきなり切り出しやがった。
 今日のニーナは、とにかくおかしい。行動が強引過ぎる。どうしやがったんだいったい。まあ、そんなに付き合いが長い訳じゃないけど。えーと、どのぐらいだったかな? 半年位か? 長いのか短いのか解らなかった。もしかすると、今のニーナが本来の姿なのかもしれない。その可能性は捨てきれない。今までは慣れない環境の為大人しくしていたって事かもしれない。それならば、その事は喜ばしい事だろう。こっちに害が及ばない限り……
 ニーナのいきなりな暴露に観季は驚き、立ち上がった弾みで椅子をひっくり返した。椅子の倒れる音が教室内に響いた。そもそもに注目を浴びていたところに更に注目を浴びる結果になってしまった。飽き始めて注目しなくなっていた者も音に反応している。そんな注目に気付いた観季は後退り、教室の後ろの隅っこまで行ってしまった。
 ふと、赤部に助けを求めようと視線を向けたが、赤部は今にもこちらに殴りかかるのではないかという形相で睨んでいた。

 やばい まじで やばい

 乱暴にニーナの腕を掴むと逃げる様に教室を後にした。ニーナは、何やら文句を云っていたが知るもんか。

 さてはて

 いったい、どうしたものか……
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