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異世界の姫さまが空から降ってきたとき 作者:杉乃 葵

第一章 ニーナ

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第五話 『分離不安』 (Separation anxiety)

 ニーナはヤマゲンの寮部屋に匿うことにした。ヤマゲンの部屋は二人部屋。彼女のルームメイトは、琴之葉ことのは 美霧みきり。クラスは違うが同学年である。話したことは一度もない。

 二人部屋にすでに二人居るのにどうするんだ? とヤマゲンに言うと、ヤマゲンは

「二人も三人も変わんないって」

 と、さらっと言いやがる。

「とりあえず数日ね。その後のことは追々考えようよ」

「ああ、そうだな」

 つまり、何も考えてなかったのか。

「ルームメイトには何て言うつもりなんだ」

「友達が遊びに来たのでしばらく泊めてあげてって言う」

「それで大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょ」

 不安しか無い。しかし対案が無い今、ヤマゲンの云うその可能性に縋るしか無い。

 放課後になってからヤマゲンが寮に戻って取ってきた制服をニーナに着せる。これでだいぶ目立たなくなるはずだ。少々胸の辺がきつそうだけど、大丈夫だろうっと言ったらヤマゲンに怒られた。

 結局午後の授業は全部欠席になった。言い訳がめんどうだなあ。

 帰りのバスの時間があるので、自分は引き上げるしかなく、後はヤマゲンに任せるしかなくなった。少々、いや、かなり心配である。

「大丈夫なんだろうな? ヤマゲン」

「まっかせなさーい!」

 ドンっと胸を叩き親指を立てて見せるヤマゲン。その脳天気な仕草に、ますます不安が増大する。

 とはいえ、一緒に寮に行くわけにもいかない。行きたいけどね。いや、ニーナが心配っていう意味だよ? 他意は無い。( ー`дー´)キリッ

 大きな不安を抱えながら、停留所でヤマゲンとニーナに見送られ、バスに乗り込む。軽く手を振って二人とお別れ。バスが走り出すと、いつもとは違う一番後ろの席に座り、二人が居た場所を眺めた。

 二人は見えなくなるまで、ずっとこちらを見続けていた。



 夜9時ぐらいになると、そわそわしてきた。

 ニーナは大丈夫か?
 ヤマゲンはちゃんとやってるのか?
 ルームメイトはちゃんと承諾したのか?

 自宅の部屋でベッドの上で悶々としていた。

 ルームメイトについては最悪、ニーナの、アレでなんとかしてしまえるから。いいといえばいいんだけど、やっぱり出来る限り使って欲しくない。やっぱりそういう人を超えた力を使われると、恐怖を感じる。ニーナは良い子っぽいけど、だからといって絶対変なことをしないとは言えない。

 我慢の限界だった。

 携帯を取り出して、ヤマゲンに電話をする。ヤマゲンの携帯番号を初めから知っていた訳ではない。今日、ニーナを預けるので、何かあったときのために、お互いの携帯の番号とメールを交換しておいたのだ。自分の携帯に登録される初めての異性がヤマゲンになるとは………素直に喜べない。あ、母親は別な。ヤマゲンはヤマゲンで、こういった事情があったせいか、特になんの感傷も無く素直に交換に応じてたしな。多少の照れとかあるとまた良かったんだけど。良かったってなんだ。まあ、いいや。

「はい?」

 ええっと・・・ヤマゲンだよな。電話に出てるの。なんか初めての電話って緊張するよな。面と向かって話すのはなんでもないのに。

「お、おう、山根だ。そっちどんな感じだ? ルームメイトは大丈夫だったのか?」

「あーうん。ダイジョウブダイジョウブ」

 なんか軽い返事だな。本当に大丈夫なのか?

「ニーナはどうしてる?」

「あんた保護者みたいね」

 ヤマゲンは楽しそうに、くすっと笑った。

「ニーナは寝てるよ。よっぽど疲れてたんだねえ」

「そっか」

 そうだよな。大変だったみたいだし。なんとなくイメージで見せられてるけど、実体験とはまた違うだろうしな。

「お風呂に入れてから寝てもらおうと思ったんだけど、ニーナさん、ぱったりと倒れこむように寝ちゃって」

「そっか」

「やまねこ、なんかお父さんみたい」

 ヤマゲンは、今度はゲラゲラと笑った。お父さんって。せめてお兄さんとお云いって、違うか。まあ、ニーナが心配で仕方がないことは事実だ。なんでかわからないけど。頼られた以上は、ちゃんとなんとかしてあげたいというか。こういうのを保護欲と云うのだろうか。

 ルームメイトの話をしないのは、意図的か、それとも素で忘れているのか? 聞くのが怖くなってきた。それとも、さっきのダイジョウブってことで完結したということだろうか?

「そろそろ切るね。美霧が寂しそうにしているから☆」

「おう。わかった。じゃあな」

 プープープー

 明日はどうなるだろうか。自分に何が出来るだろうか。そして、何が一番いい選択なのだろうか。

 今の自分には、まったくわからなかった。
 
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