挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界の姫さまが空から降ってきたとき 作者:杉乃 葵

第四章 麗美香

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

42/113

第四十一話︰magus

「ポチってストーカーだったんだ。」

 屋上の扉の前の、麗美香の開口一番だった。

「どうやって、わたしの電話番号を調べたの? ニーナちゃんにも教えてないのに。」

 ジト目でこちらを見ている。こいつのストーカー呼ばわりは心外だ。

「いや、そうじゃなくて、おまえに聞きたいことがあったから、その……。」

 なんて言えばいいんだ? あ、そうだ。

「お姫様関係のとある筋から入手した、とだけ言っておこう。」

「おー」

 麗美香は嬉しそうに感動していた。お姫様好きなんだな、おまえ。

「そんなことより、屋上に、人が居るところを見た。おまえは誤魔化したつもりだろうが、危険があるんだろう?」

 返事がないので、肯定だろう。

「ここに鍵が掛けられたままだし、どうやって入ったのかわからないけど、危険を話して屋上から出てもらおうと思う。」

「屋上に人が居るの見て、鍵開けて入ったって思わかなったの? なんで?」

「あれ? ほんとだ。なんでだろう。鍵開けれるの麗美香だけだと思っていた。」

 ほんとだ。なんであの時、そう思ったんだろう。
 頭悪過ぎる。まだまだ駄目だなあ。
 馬鹿にされていると思って麗美香を恐る恐る見ると、彼女は左手を顎にあてて、ふぅぅむと、思案していた。

「ポチって……」

「なんだよ?」

「うううん。何でもない。」

 彼女はそう言って、話を打ち切り、鍵を開け、鎖を解いた。

「ポチ、さっき、わたしのこと、呼び捨てにしたね。」

 ちっ、細けえな。

「ああ、すまん。つい。」

「もういいわ。呼び捨てで。いちいち突っ込むの面倒臭い。」

「ああ、その気持ちは、よぉっくわかるぞ。いい加減、ポチを訂正させる気力が無くなってきたからな。」

「じゃあ、ポチでいいのね。」

「よくねぇ! 訂正させるのが、面倒臭くなっただけだ!」

 けらけらと彼女は笑った。

「さて、ポチを行かせるわけにはいかない。わたしが、行ってくるから、昼と同じで、ここで待機してて。万が一のときは、わたしの事も、屋上に居る人の事もあきらめて。」

「なあ、一体此処に何があるんだ?」

 問い掛けに応える事なく、麗美香は、扉を開けて屋上に出て行った。


   ※※※


 屋上に出るとすぐ、ポチの言っていた何者かが、フェンスの上に器用に立っていた。
 向こうに落ちたら死んじゃうんじゃない?

 深緑のとんがり帽子に全身を覆うような、同じ色のマント。こちらからは、後ろ向き。

 なんて声かけたらいいんだろう。こんな場合。
 やぁ、とか、おーいとかかな?

 散々悩んだ結果、

「ねえ、なにしてんの?」

 まあ、無難かな。

 しかし、突然声を掛けられたとんがり帽子は、振り向こうとしてバランスを崩し、両手を振り回して片足立ちになり、辛うじて屋上側に落下した。

 上手く足から落ちて、そのまましゃがんでいた。

「いっつつつ。」

 3メートルほどの高さから落ちたんだ。そりゃ痛かろうね。痛みに耐えるように、少し呻き、落ちてしまった丸メガネをかけなおすと、ゆっくりとこちらに向かい合った。

「大丈夫?」

 とりあえず、あいさつ代わりに尋ねた。

「ふっ、これぐらい何でもありません。」

 なにごとも無かったかのように云う。そして何故そこでメガネをくいっと指で上げる? さっきかけ直したんじゃないの? そのメガネ。

「そう。なら良かった。ところで、ここで何してんの? ここ立ち入り禁止だよ?」

「ええ、もちろん、知ってますよ。わかってます。」

「それになんでそんな恥ずかしい恰好してんの? ハロウィンにはまだはやいよ?」

 そう。なんで、深緑尽くめの魔女衣装なのか? とても気になって仕方がなかった。何故深緑尽くめなのに、丸メガネの縁はオレンジなのか?

「恥ずかしいですって!? 何てことを云うのあなた! これは、大魔術師メイ・シャルマールの証なのよ!」

「だれ?」

 聞いた事ない。そもそもに、魔術師の事はよく知らない。わたしの叔母は魔術師だけど、っていうか、わたしの魔術の先生なんだけど……。苦手なんだよね。魔術。

「ふふふ、日本にはまだ伝わってないようね。辺境の地は、これだから。」

 とんがり帽子は、左手側のマントをバサッと広げて、

「我こそは、大魔術師メイ・シャルマールなり!」

 そう、大音声でのたまわった。

挿絵(By みてみん)

「あんたのことかい!」

 つい、突っ込みを入れてしまった。外国人だったのか? そういえば、青い眼をしている。背はどの位だろう。ブーツ履いてるし、踵高そうだしよくわからないけど、最終的には低い方じゃないかなあ。

「で、その大魔術師さんは、ここでなにを為さってらしたん?」

「ええ、実は少しばかり、気になる事が御座いまして。それで、少々調べものを。」

 気になる事? まさか、この人も……。

「気になる事って、なんですかぁ?」

 とりあえずここは此方の手の内は見せずに、相手に喋らせるのが上策よね? わたし頭いい!
 とんがり帽子は、左手でショートカットなのに髪をかき上げるような仕草をしながら、見下すように云った。

「ふっ、凡人にはわからない事よ。気にしなくていいわ。」

 イラッ。わたしこいつ嫌い。こうなったら、強制的に排除してやる。

「あなたには、わからないでしょうけど、ここむっちゃ危険なので、強制的に排除しますわぁ〜。(にこ)」

 ハルバードのカバーを外して、切っ先を彼女に向けた。

「あら、わたくしとやり合うおつもり? 蛮勇ね。」

 そう云いながら、とんがり帽子は、こっちに近づいて来た。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ