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異世界の姫さまが空から降ってきたとき 作者:杉乃 葵

第三章 摩耶

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第二十八話:do something

 ニーナを何とかなだめて、家に戻ることに同意させた。
 この雨の中、学校まで歩いて行くなんて間違いなく自殺行為だ。
 雨は、相変わらず降り続き、二人の全身を濡らしていた。
 とにかく早く戻って風呂に入って温まらないと。これは本格的にやばい。
 ニーナの手を引きながら、家路を急いだ。

 家の前に来たとき、1台のタクシーが目の前に止まった。
 あまりこの辺ではタクシー自体を見ないので珍しいこともあるもんだと思ったら、中から降りてきたのは、摩耶先輩だった。傘を差して、顔を上げたときにこちらと眼が合った。
 摩耶先輩は、あっという感じの表情をした。

「摩耶先輩、この辺でお仕事ですか?」

 タクシーで乗り付けてきたのだ。きっとこの辺で仕事の依頼でもあったのだろう。

「あ、そこに居たのね。手間が省けたわ。あなたに会いに来たのよ。って、なんでずぶ濡れになってるの?!」

 摩耶先輩は、駆け寄って、手にした傘の中に入れてくれた。そして、後ろに居たニーナにようやく気がついた。

「ニーナさんね。あなたにもお会いしたいと思っていました。私、鈴王摩耶と申します。」

 摩耶先輩は、ニーナにも傘に入るように促した。ニーナは、こくんと頷いて、

「家、そこだから大丈夫です。」

 と言って、先に家に入っていった。

「自分に会いに来たって、どうしたんですか?」
「まあ、話は、お家でしましょう? 入れていただけますか?」
「あ、はい。どうぞ。」

 確かに、こんな雨の中である。立ち話には適さない。摩耶先輩を伴って、家に入った。
 母は、ニーナを見て、ひゃーという悲鳴を上げて、すぐにお風呂に入るように即し、自分と摩耶先輩を見てまた驚いて、自分にバスタオルを渡し、摩耶先輩を客間へと案内した。

「お待たせしました。」

 着替えを済ませて、摩耶先輩を案内した客間に入った。
 客間といっても、ただの4畳半の空き部屋だが・・・・・・。何も無い部屋に座布団だけを置いて向かい合う。
 しばし沈黙の後、

「最悪の事態になりました。こちらも知り得る情報を提供します。ご協力をお願いしに参りました。」

 摩耶先輩は深々と頭を下げた。
 頼み事をするためか、言葉使いが敬語になっていた。

「ちょっと、やめて下さい。何があったんですか?」

 さすがに、先輩から敬語は抵抗がある。それでも、摩耶先輩は、そのままの口調で続けた。

「美霧さんは、学校の屋上で探しものをしていました。恐らくそれは、ニーナさんが落ちてきた場所を探していたのだと思います。」
「落ちてきた場所・・・・・・それって」
「異世界と通じている扉です。」

 摩耶先輩は、異世界とはっきり言った。霊視とは、そこまでわかるものなのだろうか?
 正直驚いた。

「ニーナが異世界から来たこと、ご存知なんですね?」

 念押しの為に、一応聞いた。摩耶先輩は、何をどこまで知っているのだろうか。

「はい。ニーナさんを霊視させていただきました。彼女の身に起こったこと、理解しているつもりです。」

 そう言うと、母が持ってきたと思われるお茶を啜った。

「それで、美霧は何のために扉を探していたんですか?」

 意味がわからなかった。美霧が扉を探す必要性。そんなもの探していったい何をしたかったのか?

「彼女は、ニーナさんを元の世界に戻そうとしたんです。」
「え? でも、ニーナの世界は滅んだし、怪物もいるのに。」

 いくらなんでも、それは酷な話だ。ニーナ自身が帰りたいと望んでいるとはいえ・・・・・・

「美霧さんも、その辺は葛藤されたことでしょう。でも、もっと重要なことを心配されたのです。それは、怪物がこちらにやって来る可能性です。」

 摩耶先輩の言葉に、はっとした。
 そうか、美霧は、その事にいち早く気付いていたんだ。

「でも、怪物がやって来るかもしれないってわかっていたのなら、なんでそんな危険なまねを?」

 摩耶先輩は、真剣な顔つきで

「美霧さんは、山依さんの為に、ニーナさんをすぐに帰す訳にはいかなかった。時間を余分に使ったせいで、危険が増したのは自分のせいだと考えたようです。それに、実際、扉があるかどうかの確証は持ってなかったようです。あくまでも可能性として確認しようとしたんです。」

 だからって、そんな。 

「そして、屋上で怪物に襲われて・・・・・・・お亡くなりになりました。」

 摩耶先輩は、そこではっきりと美霧の最後を語った。

「学校側は、屋上を閉鎖し、怪物を屋上に閉じ込めて餓死させようと目論みました。しかし、今日の夜、屋上のフェンスを乗り越えて屋上から逃げ出しました。」

「逃げたって・・・・・・え?」

 人を襲って殺すような怪物が、屋上の外に出た?

「今、怪物の居場所は不明です。学校側は、問題が発生するまでは静観するつもりのようです。」

 怖えよ。学校にそんな怪物が彷徨いてたら、行きたくねえ。
 でも、他の多くの学生や教師は何も知らずに明日も登校するんだよな・・・・・・
 学校の外に出たら、街も危ないし。

「警察とか、自衛隊とかに云わないんですか?」
「怪物が異世界から来ました。退治して下さいって?」

 いや、確かにそうは言えないけど。でも。

「猛獣が学校に居ます。退治して下さい。とは、言えるかもしれませんが。どうでしょうねえ。いろいろと面倒なことになりそうですけど。」
「だからといって、放っておく訳にはいかないでしょう。それは見殺しだ!」

 つい、叫んでしまった。叫んだ後に、すごく恥ずかしくなった。自分に何が出来るわけでもないのに、いったい自分は何を言ってるんだと。
 片膝立ちで握りしめていた右手を、床に落とす。

「山根さん。お気持ちは同じです。」

 その右手にそっと両手を添えて、摩耶先輩は、こちらを見上げた。

「お願いです。ニーナさんと話をさせてもらえませんか? 彼女の力が必要なんです。」
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