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異世界の姫さまが空から降ってきたとき 作者:杉乃 葵

第三章 摩耶

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第十九話:The beginning of the end 2

 ヤマゲンはニーナの部屋に篭った。
 ヤマゲンをニーナの部屋に案内したとき、一緒に入ろうと思ったんだが、ヤマゲンにやんわりと拒否られた。
 相当にショックを受けていた様子だった。事実は、まだどうなっているのか、わかっていない。霊能者の霊視がいい加減で、実は美霧は生きてましたってことも充分考えられる。しかしだ。やっぱり言われてしまったら気にしてしまう。事実は判明するまでは、ずっと思い悩むことになるだろう。
 まったくなんてことだ。これでは裏目じゃないか。
 部屋の壁、ニーナの部屋とを隔てている側の壁をじっと見つめながら、どうしたらいいか悩んでいた。美霧は本当に死んでしまったのか? ヤマゲンに何て声かけたらいいだろうか? 頭の中は問いだけで、答えが返って来ることは無かった。
 壁の向こうからは、ヤマゲンのものだと思われる鼻を啜る(すする)音が微かに聞こえる。泣いているんだろう。ニーナとの会話はよく聞こえない。まあ、盗み聞きするつもりもないんだけどな。
美霧とは、前に一度みんなで出かけた時と、その後呼び出されたときに会っただけだった。それでも、少しでも会話した相手が、突然居なくなったとか、亡くなったとか聞かされるのは気持ちのよいものではない。どうにも気持ちが塞ぐというものだ。ほんとうにいったい何があったのか? 摩耶先輩は何を視たのだろうか?
 そんなことを考えていたらいつの間にかうとうとしてしまっていたらしい。母親の夕飯に呼ぶ声に、はっと気がついた。時間は、午後7時半。家に着いてから1時間ほど経っていた。
 ニーナとヤマゲンは先に食卓に着いていた。どうやら何度か呼ばれていたようだ。
 四人がけのテーブルに座り黙々と夕食を取る。こういうときは、本来なら自分が率先してヤマゲンと母親の仲を繋ぐように会話を弾ませるべきなんだろうが、そういうの苦手なのである。それに気分も乗らないところでもある。
 うちの母親とヤマゲンは今日が初対面である。帰宅時にひと通りの挨拶は済ませてあったが、こうして同じ食卓を囲んでいる場合、無言では気まずい。ヤマゲンがこちらに眼で助け舟を要求しているのがわかったが、こちらも眼で済まぬ無理と訴えていた。
 が、そこはやっぱり大人の余裕だろうか? 母親がヤマゲンに当たり障りの無いような質問をして場をもたせ始めた。
 「うちの子学校でちゃんとしてる?」とか、「迷惑かけてない?」とか、「いつも適当に済ましちゃうから、注意して上げてね。」とか、なんかいろいろと余計なことを言われている気もするが、まあ、ここは、致し方ない。あえて泥を被ろう。
 ヤマゲンも優等生的な対応で、「全然大丈夫ですよ。」とか、「いつもこっちが迷惑かけてばかりです。」とか、「いろいろ助けてもらって助かります。」だとか、直接聞いたことのない言葉で返事をしていた。
 ニーナはというと、そんなヤマゲンの言葉を興味深く、ウンウンと頷きながら、ときに、へえええ、と関心しながら聞いていた。

 食事が終わると、ヤマゲンは率先して、片付けを手伝っていた。突然お邪魔して夕飯をご馳走になり、さらに泊まっていくというのだから、かなりの気の使いようだ。ニーナもそれを理解しているのか、いつもは一緒に手伝うのだが、今日はヤマゲンに任せてそそくさと2階へ上がっていった。
 ここに居ても仕方がないので、こちらも自分の部屋に戻ることにした。
「おわっ!」
 自分の部屋に入ると、ベッドにちょこんと座ってニーナがこちらを見つめていた。居ると思ってなかったからちょっとびっくりした。
「なんだ? どうかしたか?」
 こくりと頷くニーナ。
 ベッドから立ち上がり、こちらに向かって歩いて来ると
「美霧さんのこと、聞いた。霊能者って何?」
「えっと・・・・・・なんて言えばいいんだろう。霊が見えたり、霊と話したり、守護霊さんが見えたり、それから、他人の状態が視えたりする人の事だよ。」
「ふーうん」
 ニーナはわかったような、わからないような顔をした。まあ、こっちもわかっている訳じゃない。わかってない人間の説明だからわからなくて当然だろう。
「コーイチは何か出来るの?」
ニーナは最近、コーイチと呼ぶようになった。まあ、家の中に居るから、山根とかやまねことか呼びにくいだろうしな。
「何も出来ないよ。普通の人間だよ。」
「普通の人間って何も出来ないの?」
「特殊な能力がある訳では無いって意味な。」
「私達の世界とは違うんだ。」
 え? というと? ニーナの世界ではどうなっているのだ? と問うと
「私達の世界では、みんな何かしら特別な能力を持って生まれてくるの。」
「ああ、ニーナの能力みたいなのがあるってことか?」
「私と同じ能力持っている人にはお目にかかったことないけどね。似てたりする能力もあるけど、みんなたいてい違う能力持ってる。」
 そうなんだ。なんか想像を絶する世界だな。秩序とか崩壊してそうだ。
「あ、同じ能力と言えば・・・・・・」
 ん? 
「なんでもない。」
 ニーナは言い出した言葉を引っ込めた。
「どうしたんだ? 同じ能力がどうした? 誰か同じ能力を持った人が居たのか?」
 ニーナは言い淀みつつ
「美霧さんって、亡くなったんだって?」
「摩耶先輩の霊視ではそうらしい。当たってるかどうかはわからないけどな。」
 ニーナは眼を伏せて何やら思い悩んでいる様子だった。
「前に美霧さんと電話で話したときに、美霧さんが言ったの。」
「何を?」
「美霧さん、私と同じ力持ってるって。」
 ニーナと同じ力? 美霧が? 
「そのことって、今回の事考えるのに、何か足しになる?」
「わからない。けど、ありがとな。ニーナ。」
 ニーナは、その言葉に満足気に頷いた。



     ***


「理事長、事態は緊急を要します。即対処をお願い致します。」

「わかった。君の事は信用している。出来る限りの対処をしよう。しかし、さすがに信じられんな・・・・・・。いや、君の事は先ほど言ったように信用しているんだがね。」

「わかります。私もあまりにも突拍子の無いことなので、自分を信じていいのか悩みました。」

「ただ、やっぱり、そんな話、さすがに君の言でも、誰も信じないだろうな。それ故に、上手く対処ができんかもしれん。」

「私も出来得る限りご協力いたします。」

「ああ、何かわかったことがあったら連絡くれ給え。」

「はい。わかりました。」

 ピッ。携帯の通話終了ボタンを押した摩耶は、ホテルの一室に居た。
 疲労した顔を窓に映しながら、外を眺め、物憂げに、独りつぶやくのだった。

「一体、何が起きているの・・・・・・」
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