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異世界の姫さまが空から降ってきたとき 作者:杉乃 葵

第八章 句由比華澄

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第百七話 『パンドラの箱』

 やはり此処なのね。
 怪しいとは思っていたのよね。
 今までこの場所の存在をわたしは知らされていない。
 機会を見つけてはこの屋敷を探検していたけれど、どうしても

 なんか悪の秘密結社のアジトっぽい。お爺様そんな趣味あったのかしら。わたしも嫌いじゃないけど。

 はああ……

 部屋中が荒らされまくっている。これみよがしに荒らしましたぁって主張しているかの様に。
 引き出しという引き出しは開け放させている。

 もう完全に荒らされた後ね。どんな物が此処に有ったんだろう?
 それが解らないとどう対処したもんだか。
 それに、nullって人は何者?
 政府関係者かしら? それとも何か別の組織?

 そもそもに、お爺様が何をしていたのかさえよく解ってない。
 タマから訊いた情報はそれ程多くない。
 ただタマが本当はnullって人の手先だとしたら、全ての情報をわたしに送っているとは限らない。渡しても問題ない情報だけ選別しているかも知れない。間違いなくそうだろう。

 何が有ったのかは、後でお爺様をとっちめるとして、荒らし犯は何処に行ったのか? もう用が住んで帰っちゃったか?

 まったく無駄足だった。
 これからの身の振り方を考えないと。この先、神鏡家がどうなるか解らないし。もう少し時間が欲しかったけど。こうなっては仕方がない。

 だけどお爺様も大した事ないな。こうも簡単にやられるとは。らしくない。うん。とってもらしくない……

 らしくなさ過ぎる。
 おかしい。

 ダミー? もしかしてこの研究所はダミー?

 有り得る。あのお爺様ならやりかねない。

 じゃあ、nullとかいう人はまんまと騙されたって訳ね。

 それならそれで良しか。

 ん? なんだこれ?

 足下に一枚の白い紙が落ちていた。持ち去る時に落としたのかな?

 拾い上げると、それは何かの書類だった。

 『遺伝子操作における人類進化実験検証報告書』と表題に書かれている。
 要約すれば、受精卵の遺伝子に対してどの部分にどんな要素を加えればどんな効果が得られるかの実験結果の報告書の様だった。

 『遺伝子操作の効果の確認については長い経過確認が必要の為、その仕組みの早急な構築が望まれる』

 なんか難しい事書いてあるなあ。こういう報告書ってやつ、もっと解りやすくならないもんかなあ。
 わたしはこれでも青年実業家である。実業家っていっても、少年少女の書いた文集等を収集して出版する様な会社の経営をしてるだけだけど。
 それなりの儲けは出てるけど、将来の為の訓練的な意味合いで、この事業で大儲けとか考えている訳じゃない。それはまた別の事業でしようと思っている。何をするかはまだ考えいないけど。
 まあそんな事で、報告書とかもよく目にするんだけど、まるで都合の悪い事を隠す為に小難しく書いてんじゃないの? って思う様なものばかりだ。保身に走る気持ちも解るけど、経営の為には真実を伝えて欲しいなあっていつも云ってるんだけど、年齢が高い人程この傾向が強いんだよねえ。

 手にしていた書類を棄てようとして日付が眼に止まった。

 16年前? 今から16年前に書かれた書類。

 16年前にこの実験が行われたって事?

 そしてこの書類を信じるならば、経過観察が何処かでされている。
 それってまさか……



   ※※※   ※※※   ※※※


 麗美香の後をついて行こうとしたらニーナに止められた。
 ニーナによれば、秘密の場所に私達を案内する気は無いでしょうとの事で、凄く当然な話であった。

 それならば、我々は此処で何をするべきなのだろうか?

 ニーナは黙って此方の答えを待っている。彼女は一度決断すれば後先構わず突っ走る傾向がある。その事は今までの経験で把握した。今の様に此方の決断を待っているのは、彼女自身で判断できる領域を越えている場合なのだろう。この世界の事がまだまだ彼女にはわからない。まあ、この世界の人間だって全てをわかっている訳ではないが、彼女にしてみればどのぐらい理解出来れば充分なのかすら判別する事は難しいのだろう。

 麗美香を追いかけるのは危険な感じがするので除外するとして、他には……他には……

 ニーナの碧い瞳が此方を熱視している。その瞳は、期待を裏切りたくないと思わせるものだ。

 多少危険が伴うかもしれないが、やってみるか。




   ※※※   ※※※   ※※※




「ここが本命だ。視ろ。私が予想した通りじゃないか」

 打ち捨てられた古代の遺跡のような場所。太古の巨大神殿跡の様な、崩れ落ちた石壁や石柱が野晒しになっている一角に、地下に降りる石階段が隠されていた。

「いや~庭に遺跡が在るとかびっくりですにゃ。もうなんか訳がわかりませんにゃ。それにしてもnullさま、なんでここが解ったっすか? わたしがお渡しした資料にゃー無かったっすよねえ?」

「ああ、無かったさ。先程の研究所は、あからさまに怪しい場所。それは誘導する為のフェイクだと直ぐに解ったさ。まあ、後は他に怪しそうな場所を探せば良いだけさ。簡単なお仕事だよ」

「またまたぁ~お人が悪いぃ。まっ、わたしが気にする事じゃ~無いっすけどねえ。ホントはちゃんと情報掴んでらしたんでしょー。ホントに怖いお人ですにゃー。わたしの存在意義が揺らぎますにゃ」

「ふふふ……。まあ、そう拗ねるな。お前はお前で色々頼りにしてるさ。これからも頼むよ。音戸」

「へへい。仰せのままにぃ。まあ、それはそれといたしまして~。ここには何があるんでやんすか?」

「ここか? そうだなぁ。ここに在るのは」

「在るのは?」

「パンドラの箱だよ」



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