呪をもらって魔法学園生活!!(18/22)PDFで表示縦書き表示RDF


呪をもらって魔法学園生活!!
作:久澄望



第四:小さな鬼と書いて許婚と読む!! part6


 葉は試すように笑いながら、その書物を見せびらかしてくる。 それを目に、葉月は自分の中にらしくない何かが浮かび上がるのを感じた。
 その名は『憤怒』。 
 いつも回りのことに強い関心を持たない葉月にとって、それは本当に彼らしくない感情だ。 だが、今目の前にある光景は、自分にとってのこと。 だからその感情は生まれた。
 怒りのあまり、葉月はほぼ飛びつくように葉の手中にある書物を奪い取る。 しかし、触れることはできなかった。 葉月の手が、葉の持つ書物を通り抜けたのだ。 つまり、今のは映像。
 葉月はそのまま勢いあまってベッドに突っ込んでしまい、葉はその無様な葉月の動作を満足気に眺めながら、手に持つ書物を一瞬で消した。
 葉月は弾く様にベッドから離れ、振り向き様に葉の胸倉を掴んで、彼の身を自分に近づける。

「いつ盗んだ!」

 叫びながらの問いに、葉は一瞬だけ、だけど間違いなく苛立った嫌悪の表情を浮かべ、手を横に振るだけで葉月の腕を弾いて払いのけた。
 軽い動作とは裏腹に、弾かれた衝動は思ったよりも重く、魔力を使っているのだとすぐに判断できた。

「何を言っているんだい? 盗んだんじゃない、取り戻したんだ」
「……なに……?」

 一瞬、葉がなんて自分に言ったのか理解できなかった。 葉月は必死に葉の言葉と自分の知っている現実を整理する。

「何言っているんだお前……あれは、僕が入学祝いとして、『役に立つだろうから』って親父からもらったものだ!」
「確かに役立つだろうね……それは魔法の中でも最高位クラスの魔法ばかりを載せた『破掟禁書(フォビドゥンインデックス)』っていう魔導書なんだから、役に立って当然だ。 だけど、君の父親が入学祝にそれをくれたなんて事は、ありえないよ」
「なんだと…………」
「『破掟禁書』は、この学園が誇る最高の監査施設の深部に保管してあったんだ。 でも何故か無くなっていた。 この意味、わかる?」
「盗まれたってことか?」

 しかしそれはありえない。 
 葉月の父親は一般人だ。 魔法のことなんか詳しく知るはずが無いし、そんな貴重な魔導書を盗む必要はどこにも無い。 盗んだところで、父に何か得があるわけもない。 だとすれば、何故あれは父の手に渡った? そもそも、外見だけならそこらの本とほとんど変わらない魔導書を、何故父が『役に立つ』なんて言いきれた?
 この二重にも三重にも重なる矛盾。 葉月はわけが解らなくなった。

「なんなんだ……本当に……」
「こっちも同じ気持ちなんだけどね……過剰過ぎないかって思ってた位の警備があっさりと破られちゃうなんてさ……。 あ、魔導書はこっちが預かっておくよ? いいね?」
「!? ふざけんな!!」

 そうは行かないと、葉月は葉に再び掴みかかるが、彼は葉月の伸びてきた腕を一瞬で掴み、拒むように弾いた。 彼はそのまま葉月の真紅の瞳をまっすぐに見据える。

「悪いけど、今のは命令だよ。 応えは聞くけど、答えは聞かない」
「………………」

 葉月は今、彼の(ほんとう)の姿を見たような気がした。
 今まで葉月は葉のことを、ただ自分が楽しければ良いような、幼児性の子供みたいなやつだと思っていた。 今でもそれに変わりはない。 だけどそれだけじゃなかったのだ。 今の彼は、誰もどうすることができない、本物の化け物へと変わっている。
 今の葉月には、その命令に従う以外の行動を許されてはいなかった。

「返してほしかったら、生徒委員会。 風紀委員会。 どちらかに遊びに行っておいで。 お宝探しのヒントになるだろうから」

 その言葉を最後に、彼は姿を消した。 風のようにとかではなく、霞のように。 それを最後までただ呆然と見送ると、急に鉛のように重くなった体をベッドに沈ませ、必死に考えた。

(生徒委員会……。 風紀委員会……。 アイツから取り戻すのは不可能。 だとしたら、そこからやるしかないか…………)

 そう。 自分があの化け物から宝を手に入れようとするなんて無理だ。 虎穴に入らずんば虎児を得ず、そんなレベルじゃない。 だとしたら、アイツからあの本を取り戻す方法はひとつ。 アイツの言うとおり、生徒委員会か風紀委員会からヒントを得る他無い。
 しかし、それらの委員会に入れるチャンスを得るのは定期試験の成績が発表されるまで。 委員会には、成績優秀な数名だけが入れるのだ。

(それまでは準備期間だな……)

 いまは諦めるしかない。 そう、自分に言い聞かさなければ、暴走してしまう。 それに、

「「葉月!!」」

 保健室に飛び込むような勢いで入ってくる少女が二人。 一人は自分と瓜二つだが、自分とは違い、活発さが伺える少女。 もう片方は、もはや360度どこから見ても小学校低学年にしか見えない、幼く小柄な少女。
 二人とも、息を荒げながらこちらを心配そうに見ている。

「…………うるさいぞ二人とも」
「うみゅ……ご、ごめんなさい…………」
「ん、ごめ〜ん♪」

 強く言ったつもりはなかったのに深く反省したように俯いてしまう美久と、それとは反対に全然気にしてなさそうな愛海。 一瞬ぶん殴ろうかと思ったが、気が乗らず、止めようと結果が出た。

(こいつらのお世話をしなきゃな

 体の力が抜けてきた。 ベッドに身を預け、ゆっくりと息を吐く。

(それでも、今だけは休みたいな…………)

 二人の女の子の口論を聞きながら、自分の意識が薄れていくのを葉月はめいっぱい感じて、目を閉じた。
 あぁ、こんなにも心地よい………………。


お久しぶりです! ずいぶんと長い間投稿できないですいませんでした。 しかし、またしばらくは投稿できないかもしれません。 本当にゴメンなさい。
でも、頑張ります。 こんな小説でも、好きって言ってくれた人がいたから。 マジで頑張ります!

では、感想、評価、アドバイス等等、お待ちしております!






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