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第七話 下校
「で?どうだった?」
帰りのHRホームルームを終え、下校するため教室から生徒が出て行く中、突然並川洋平がそんなことを訊いてきた。
「何が?」
特に心当たりの無い流は自分の記憶を探りながら訊き返す。
「編入生をナンパしに行ったんだろう?」
「何だ、起きていたのか」
あの時、洋平は机に突っ伏して寝ていたはずである。
その時の情景を思い出しながら、流が洋平の顔を見る。
「ああ、かろうじてだけどな。お前と晴樹の会話が聞こえてきたんだ」
「なるほど……」
納得したように流が頷く。
「で?成功か?」
「いや……」
流が言葉を濁した。
「どちらとも言えんな」
そう言ってポケットに入れていた女物のハンカチを取り出す流。
そしてB組に言ったときのことをすべて洋平に話した。
その話を聞いて洋平が思わず顔をしかめる。
「マジか……」
「ああ、マジだ。下手に関わらない方が良かったかもしれない」
「お前にしては珍しい失敗だな」
「そうだな。今日は微妙に調子が悪い」
流が難しい顔をしながら考えている。
「おっと、じゃあ俺はここでな」
ある交差点まで来ると洋平が流が行く道とは別の道を指しながら言った。
「ああ、また明日な」
そう言って洋平と分かれた後、流は再び歩き出した。

しばらく歩くといつもの見慣れた商店街に入った。
「さてと……」
そう言いながら流が辺りを見回す。
あちこちで店が出ていて中々の賑やかさだ。
もちろん流の通っている高校、蔵町くらまち高校の生徒もたくさんいる。
一通り見渡すと、流は一番近くにいる女の子に声を掛けた。
「ねえ」
「うん?」
少女が振り返る。
容姿はそこそこ、スタイルも普通の女の子だ。
「ちょっとそこら辺で食事でもしない?」
笑顔で話す流。
少女は一瞬戸惑ったようだが、すぐに笑顔を作ると
「すみません、急いでいるので」
と、それだけ言って駆け足で流から離れていった。
もちろん嘘だろう。
しかし流は追いかける素振りもせず、次の標的を探していた。
「ねえ、そこの君。一緒にお茶でも……ってありゃ?水月?」
「流じゃない、何やってるの?」
流に声を掛けられ、振り向いた水月が訊く。
「ん?ああ、いつものだよ」
「ナンパ?」
「そうだよ。……まあ、ここで会ったのも何かの縁だ。どっかで食事でも?」
「ううん。残念でした。これから予定があるのよ」
「そっか……」
「うん、折角だけど私真っ直ぐ帰るから……じゃあね!」
笑顔で手を挙げて水月はその場を立ち去った。
「はあ……」
一つ、大きなため息をつくと流は再び辺りを見回し、標的を探し始めた。


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