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第六十九話 イジメ
商店街に入る前で突然流が足を止めた。
「?……どうした?」
「…………」
不審に思ったヨウが話しかけても、流は何も答えずに商店街の手前の細い道をずっと見ている。
「流……?」
「なあ、ヨウ。ちょっと俺、会っておきたい奴がいるから先に帰っててくれないか?」
その細い道を見たまま流は呟いた。
「………分かった」
少し間をおいてから、ヨウが頷く。
「悪いな。勝手言って」
「なに。いつものことだ。私は気にしない」
「そうか」
それだけ言うと流はヨウにポケットから出した鍵を渡して、その細い道の方に歩いていった。


時は放課後に遡り、1年A組のクラスの中。
長い髪をサイドに一つにまとめている少女、久澄林は特に急ぐ様子もなくゆっくりとマイペースで帰りの支度をしていた。
誰とも一緒に帰らないのであれば、急ぐ必要はない。
「久澄さん……」
後ろから誰かに呼びかけられ、無表情のままそちらに振り返る。
「あ……えっと、い…一緒に帰らない?」
戸惑いながらも誘ってくる少女、真形香まがたかおりは毎日、こうして林を誘ってくる。
「いい。一人で帰る」
そして林もいつものように冷たく断る。
「で……でも…」
「香ー、もう良いよそんな奴」
「そうそうそんなぶっきらぼうな奴と一緒に帰ったって面白くないんだしさ」
「帰ろ帰ろ」
そしていつものような周りからの罵声。
やがて香は周りの女の子達に手を引っ張られ、連れていかれてしまう。
「あ……ま、またね。久澄さん………」
「……………」
香の挨拶には答えず、再び帰りの支度をし始める林。
しかし、途中で肩をぶつけられてしまい、それも中断させられてしまう。
鞄が大きな音を立てて床に転げ落ち、中が床に四散する。
「おお、悪いな。前が見えなかったもんでよ」
男子生徒が全く悪びれた様子もなく謝る。
「あははは。お前それはひでぇんじゃねえの?」
「いや、まあ良いんじゃないか?あいつだし」
「あ、それ俺も賛成」
周りの者が林を笑い者にする。
これもいつものこと。
「……………」
林はそれらをすべて無視し、四散した中身を拾い始めた。
「チッ………いくぞ!」
ぶつかってきた男子が舌打ちしてそう言うと、周りの男子も林の周りから去って行った。
林は最後に落ちていた自分のノートを拾おうとしたが、途中で手を止めた。
落ちた反動で開かれたノートには一面落書き。
おそらくその落書きは最後のページまで書かれていることだろう。
林は一つため息をつくと、それを閉じ、鞄の中にしまった。


商店街で新しいノートを買い、林はいつもの人通りの少ない細い道に入っていく。
そしてしばらく進んだところで川と土手が視界に広がる。
そんないつもの風景。
土手を上り、いつものきれいな風景を高いところから眺める。
しかし、そんな中にいつもとは違う風景が混ざっていた。
「…………川瀬?」
呼びかけると、土手に寝ころんでいた流がゴロリと転がって林の方に顔を向けた。


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