陸橋から国道を見下ろすと集合管から、爆音を撒き散らす単車が走り去った。持っていた紙コップの縁を前歯で噛みながら、顔を空へ向けると炭酸が喉まで流れてくる。小雨が落ちてきた。全て飲み干すと右手でコップを持った。氷の冷たさが指先に伝わる。後方から風を切りながら一台の車がやってくる。赤いスポーツカーに男女が乗っているのが確認できた。車が陸橋に差しかかる。氷を落とすタイミングをはかった。飲み口を真下に向けた。
高い音がボンネットから弾け飛ぶ。タイヤが悲鳴をあげながら蛇行する。車線をはみ出し鋼材が山積する棚へ突っ込んだ。フロントガラスに鋼材が刺さると鈍い音がした。それを見届けると全速力で走った。順子の足は校内で一番の速さだ。制服の上から雨合羽を着ていたので制服で学校がばれることはない。
どれ位の距離を走っただろうか。気がつくと学校の裏門に着いていた。
「くたばれ」
息が上がっているので声にはならない。後ろを振り返ると深呼吸をした。腕時計の針は始業ベルが鳴る十分前であった。息を整えながら裏門から入った。
竜也が他の女と会っているのを目撃したのは先月の末だ。繁華街から一つ入った路地裏に「エメラルド」という名のモーテルがあり、そこに入っていく竜也の赤いポルシェを確認した。偶然ではなく確信があったので「エメラルド」で待ち伏せしていたのだ。
夏休み最後のデートの時。竜也がシャワーを浴びている隙に携帯電話の通信履歴を見ると「サダオ」に頻繁に連絡をとっているのがわかった。女だと直感した。多分「サ」のつく名だろう。サナエ、サダコ、サチエ・・・。財布の中に「エメラルド」の割引券を見つけると見取り図を記憶し、元に戻した。許さない。それから一ヶ月の間、竜也の処刑方法を練った。竜也の行動はワンパターンで、実行の日は朝帰りの時がいいと判断した。
生徒指導室に呼び出されたのは昼食を終えた後だった。食事の後の一服をしていると校内放送で順子の名が呼ばれた。煙を吸うタイミングを誤り、むせてしまった。急いでガムを噛み香水を指とブレザーにかけた後、指導室へ向かった。
生徒指導の青山はすでに畳間に胡坐をかいていた。手をとり匂いを嗅がれた。青山はふんと鼻を鳴らした。バレバレだったかな。順子は苦笑した顔がそのまま固まった。青山は手を放さず、そのままこちらに寄ってきた。
「朝の行動は全て見させてもらったよ」
事故の通報をしたのは自分だと告げた。青山はその場まで行き運転手が即死だったことを確認したようだ。大怪我の同乗者の名は「サチエ」と教えてくれた。事情聴取のときに聞いたのだろう。名前の予想が当たったと喜んでいる状況ではないようだ。青山はズボンを膝まで下ろし順子の顔に自分の股間を当てた。男はどうしてこうなのよ。叫びたいが、喉は (欲棒)に塞がれた。
抵抗を諦めると青山の処刑方法を練った。いいアイデアが浮かぶと順子は舌の動きを早めた。髪の毛と制服を汚さないように注意した。
早くしないと休み時間終わっちゃう。
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