幻想魔蝶 異端録 -魔蝶の女-(17/18)PDFで表示縦書き表示RDF


幻想魔蝶 異端録 -魔蝶の女-
作:ALFRED



11【今宵は、我らが幻想小説をお読みいただき】


11【今宵は、我らが幻想小説をお読みいただき】
 
 我は、王である。
 
 生まれながらに、勇者として、王として、人の上に立つ責務を背負わされた――
 ただの人間の小僧に過ぎぬ。
 
 だが――
 我は、逃げ出した。
 ――王になど、ならぬと。
 
 ただ、好きなように生きようと――
 好きなだけ、好き勝手、好きなことを――
 
 ?
 
 ??
 
 我は、何が好きなのだ?
 
「それは、王――いえ、愛しいアナタ、それを見つけていくことではないでしょうか?」
「楽しいこと、笑えること、嬉しいこと」
「それを見つけ出そうと、あなたは旅立ったのでしょう?」
 
 そうだ、我は、面白おかしく、この生を謳歌したい。王などという身分など、本当はどうでも良い!
 ただ、お前らが――我が友たちが、愛しい妃が――人間ではないからと……
 
 ならば、我が王となろう。
 人も魔も、関係ない――
 
 そう、人と魔と――
「お前は、弱者だ――」
 
 ……人と、魔、と――お前は?

「お前は、敗者だ。敗者はただ、失うだけ――」
 その通りだ。
 それを、俺は何度も味わってきた。
 
 ならば、我が強者となろう、勝者となろう! 王となろう! 誰も、我に逆らうな!
 我が突き進むのは、楽園への道――大いなる王の道筋――!
 
「お前は、理解していない。私は――」
 
「破滅を望んでいる人間なんだぞ。楽園は、私には地獄と同意だ」
 
 
 ……な、ぜ、だ?
 
 アズリエル――お前は、何が望みなのだ! 何を求めておる!
 
 
 何ゆえ、我が妃を殺した!
 
「怖いから、強いから、悲劇だから――お前の女は、私の大切な物を奪える力があって、お前は奪う引き金に違いなかった」
 
 我は、あの小娘を殺そうとはしていない!
 
「だが、妃は違う。お前が望まなくても、私に敗れる前に、人質にはとっていただろう。
 ……私は、嫌なのだよ。お前と同じなんだよ。

 自分の思い通りにならないことが、すこぶる大嫌いなんだ」
 
 
 ……あ
 
 
「お前を、半殺しにした時点で、あの女は、妹を半死半生に変えるだろう、一瞬で。
 私が悲鳴を、上げる、たった一瞬で――
 お前もそうだ――
 私たちは、ただ、コインの表裏のように、勝者と敗者に、分かれた――ただ、それだけだ」
 
 ふざけるな!
 
「そうだ、現実はふざけている。何が二者択一だ――何が勝敗だ。何が【それだけ】だ」
 
 ……貴様が、何を抜かす!
 
「私だからこそ――言うのだ! お前にわかるか?」

「【この世で自分が最も憎い】人間がいることが――」
 
 ならば、自殺でもすればよい! 我の女を殺すいわれにならぬわ!
 
「だからこそ、貴様は――」
 
 
 【餓鬼なんだ】
 
 
 ――――
 
「そうだな――我は――」
 
 背中に刻まれた五本の切り傷が、赤く広がり――表情が苦痛に歪む。
 違う――歪むのは、己の信念が揺らいだ絶望からか――
 
「我は、子供だ。お子様であろう――主ら、オトナの苦しみなど、理解に苦しむ――だがなぁ」
 
「お前らが愚駄愚駄ぐだぐだ抜かす屁理屈、小理屈には、理解と言う行為すら愚考じゃ!
何が復讐じゃ、何が仇じゃ、何が死にたいじゃ、何が使命じゃぁぁぁぁぁ!

 オトナとは、自らの意思、思いのみを率直にぶつければいいのか!
 深い思慮の後の、犠牲と生存の積み重ねの上にある行動を、ただこなせばいいのか! 違う!」
 
 大地を震撼させる、怒声と罵声が――蒼い髪の娘はおろか、倒れるセラフィス、拳銃を持ち震えるアリス、そしてギルガメッシュの部下たちまでもが、身を震わせ――
 
 ギルガメッシュ王は、宣言する。
 
「我は(貴方は)――
王(勇者)である(でしょう?)
――お前ら(私たち)、愚民に――道を指し示す、光である(でありましょう)!」
 
「……ハッ、吼えてろ! 死に損ないッ」 
 ライラの爪が、再び――今度はギルガメッシュ王の肉壁を破らんと、渾身の一撃に――躊躇する。
 王は、右腕が――ない。アズリエルに切り落とされている。
 
 片足を上げて、その爪をはじくが、二連目が喉元にめがけられ、左腕を伸ばし――骨が軋む。
 ただの吸血鬼化だけではなく、身体能力も大幅にあげられる何かを施されているのだろう。
 
 だが――
 
 目を見開いたのは、ライラ――
 
「そうだな、我は何度も、死に損なってきたぞ」
 
 肉が、砕けない。
 喉が、切り裂けない――
 
 こいつは、どこまで? 筋肉だらけなのだ!
 
 
 ぶぉん――
 
 一瞬で終わった。
 
 巨漢の王と、身体能力が高いとはいえ、小柄な娘――決着はあっさりついた。
 王の一薙ぎで、ライラなる小娘は壁まで叩き付けられて――全身からめり込んだ。
 
「が……! あぁ?」
 空気の漏れるのと驚嘆の混じった、喉笛。
 
 
「あ、お――王様?」
 恐る恐る、アリスが訊ね――
「大丈夫だ、娘――我は王である」
 
 片腕の王は無骨な左手で、少女の頭を撫でて、
 
「我が、ただ王として未熟だったに過ぎぬ――」
 
「……ありがとうございます。王ギルガメス」
 腹部を押さえたままのセラフィスに、
「主は喋るな。おい……樹氷の精コフィン、おったな――奴の傷を癒してやれ」
 白磁の白い女性が現れて、その傷口に手を当てると、血液が一瞬で凍結し、生暖かい氷がセラフィスの失った肉に張り付く。
 
「出るまでの応急処置にはなりましょう。または、あなたたちの白魔術で癒しながら養生なさいませ」
「あ、ありがとう、ございます」
 
「否、まだ終わらぬぞ――」
 王は――その場の登場者アクターたちに告げる。
 
 背後には出口――目の前には、瀕死の小娘。そしてライラが鳴らした、最後の――口笛。
 
「……性懲りも無いな、娘」
 そのライラを食らおうと、現れた――
 腕の無いゾンビ、足の無いゾンビ、頭の無い、首の折れた――
 
 ゾンビ、アンデッド、不死者――もう、どう呼んでも良い。
 単なる陳腐なホラーで、単なる雑魚ゾンビたちであって――
 
 復帰した王の敵ではなく――
 ライラにとっての、自滅にして最後の足掻き――

「……大切な、者を、殺された痛みが、わかるなら――」
 
 セラフィスそれ置いていけ――
 
「知るか――」
 ライラの嘆きを、腐敗した髑髏が頭蓋を噛み砕こうとして――王のコブシが、ゾンビを砕く。
 
 驚嘆するライラに、
「図に乗るな、おろかな小娘が。我は王だ――我の許可無く、死ぬのは許されぬわ」
 
 不意に扉が叩き割られ、同時に応戦を始める――

「あ、ローラン!」
「隊長、無事でありましたかッ!」
 
 捜索で行方不明となっていたローラン隊――帰還。
 
「隊長! 命令をッ――」
「決まっている」
 
 全員、無事生き残って帰るんだ――
 
「その小僧の言うとおりだ! 我が従僕たちよ――」
「心得まして候」
 
 と、執事服を破り――硬質の肌と鉄のような翼を広げた魔鳥、コッカトライス、コカトリスと呼ばれるA級魔獣の真の姿が、次々にゾンビたちを睨み――
 
「あ、駄目です――彼らに邪眼が効かないッす!」
「何ぬわ嗚呼!」
「どうも神経系で動いてるんじゃないっぽいです」
 駄目王子と馬鹿執事の名コンビ、復活。
「役立たずぅぅぅ!」
 
『やれやれ――相変わらずですね』
 
 ――?
 
 その囁きは、『王にだけ』ではなく、
 その場の登場者アクターたち全員に、聞こえた。
 
 響いた――
 
 死者の墓標となっていた、王妃の墓――王の漆黒に染まった腕。
 その腕に集まろうとした、ゾンビたちが――黒い渦に、飲まれ――
 
「私がいないと」
 現れたのは、漆黒の、幼女――
 つややかな髪と、丸い瞳――体型は大幅に削られたが――
 
 
「本当、駄目ですね。陛下――」
「ふん、当たり前よ。我は――永遠の王にして、」
 
 永遠の糞ガキであるからな――

「我の許可無く、死ぬことは許されぬぞ! エンキドゥ」
「畏まって候、ゆえにこうして、舞い戻って参りました。
ただ、手違いで――」

 ちょっと人間になってしまったようですけどね?
 
 
「で、陛下? 出来れば助けて欲しいです? 人間バージョンでは、混沌が自在に扱えなくなっているんです」
「あじゃばぁ! ぬぅぅぅおぉぉ〜〜〜!」
 
 王が大慌てでエンキドゥの元へ駆け寄ろうと、群がるゾンビたちを――
 銃声――
 
「お姫様を!」
 ちょっと勘違いしているアリスと、
「ん――」
 
 片腕――そして、『失った腕』に剣を嵌めた、元将軍が大立ち回る。
 
「ん、感謝するぞ――娘、片腕の男よ!――」
 エンキドゥを肩に抱え――全員が、無事を確認すると――
 
「脱出せよ!」
 
 王の号令一つで、この館の幕が下りていく――
 







ネット小説ランキング>異世界FTシリアス部門>「幻想魔蝶異端録」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう