Alice『物語の前』
【Alice】
……何をやっているんだか、私は。
――これは、夢だ。
――そうだなぁ、夢、だよなぁ。
――そうだ、兄上。貴方が私の前に現れられる筈がない。
――兄上? ……アレ、俺、お兄ちゃん?
――他に、誰が?
――……嗚呼〜、お袋はもう絶縁っつか生死不明だし。
っつか姉貴はいるが、妹なんて話、初めてなんだが……親父は以下同文。
いや、例え血が繋がっている程度では、俺は『妹』とは呼ばないぜ?
――……では、『陰』とでも……
――決定、なんだい僕の妹――って何で生れ落ちちまったんだ畜生! 何ヘマした俺!
――……やはり、貴方でも理解してくれないか?
――はい? 何が?
――私の、存在理ゆ……
――ハッ、また思春期の若人全開なお悩みで……んなもん簡単じゃん。自分で見つける、これに限る。
――……自分で
――俺の体験談を逐一語ったって、……まぁ俺の妹だったらだいぶ理解してくれんだろけど、所詮他人の物語。
自分に降りかかるなんて保障はねぇ。どう足掻いたって、参考は参考。
手っ取り早いのは自分で探して、自分で手に入れる。これに限る。
まぁ、その式だと自分で考え出したと言う自信ができて、中々思考回路を作り直しにくいんだが……
鬱気味の妹にゃそれぐらいが丁度いいだろう。
――……貴方みたいに、活発にはなれない。
――なれるさ。人間、いや、俺たちは何にでもなれるんだぜ。
空を飛びたきゃ鳥になれ、
大地を踏みしめたかったら人であれ、
海を渡りたければ魚に……
人間ってのは有能で万能で全能であり……故に無能で無能で無能である。
ハッ――ゼロはどんだけプラスしたってゼロ? 違うね。人間は数式じゃない、無限式よ。
俺になりたければ――『俺を超えろ』――
――……無理だ。
――無理とは、『【理】【無】』と書く。
違うね、理由はあるさ、理屈はあるさ、手順も、順路も、手段も、無限式にな。
その台詞はここで使うべきだ。それにこそ『理由は無い』、ただ『有る』のみ
――貴方は、強すぎる。そんなことを堂々と諳んじている時点で、貴方そのものが無限式で、無意味だ。
――違うね、俺こそ世界で最弱さ。最低最弱の弱虫毛虫だから、逃げ出して、最強って殻に逃げ込んだ。
妹よ――お前はどうだい?
――ならば、私も弱々しい翼が欲しい。女々しい羽根が欲しい。悩める心と、葛藤する苦悩――私は――
『私は、私が怖い――』
――ならば、望めよ。妹――お前は、良い女になるぜ
――目が覚めた。
「……変な、夢」
まるで、鏡向こうと話していた気分。
……でも、
「ちょっと無くなったかな。イタイの」
羽根……うんと伸ばす。
……なんか、気分がいい。
アレは……
あの人は……
鏡の向こうであるが故、
それは私の一つの形。
ゆえに、私。
不思議の国であろうと、鏡の国に迷い込もうとも、それは私。
きっと、私と同じ、悩んでいる。
いや、鏡対象で「あべこべ」に成るのだから、私のことなど、もう露のように忘れてしまったのだろうか?
ならば、その反転である私は、貴方を覚えていよう――
貴方に出逢ったそのとき、
もし、忘れていたのなら――
鏡の向こう側に翼を広げ――
貴方を――殺して差し上げましょう。
愛しています。永遠に――
名前 ルルダ 【邂逅時 そう名乗る】
通称 As(アズラエル アズリエル
年齢 御年 0歳(+19
容姿 黒髪黒瞳 漆黒の白衣(!?)に翼のようになびく髪。
属性 姉=妹 長髪 少女 天使=悪魔 戦乙女=首無騎士
特徴 戦場 処刑場 墓所などにふらりと現われてしまう。
As「……好きで現れるわけじゃない」
実際は、聞こえない声に呼ばれて、本能で漂っていると言う。
能力 死者感知 月光蝶 斬技
「ヴァルファラ戦役の折に登場し、数多の兵士を敵味方関係なく葬った、最悪の天女。
蝶の羽根を羽ばたかせ、金色の燐粉を広めては、ひと羽ばたきで百名の騎士達が物言わぬ屍と化した。
これにより、第一級 最悪魔物の指定を受け、全世界に向けて警戒令を発布。
さらに同種として、
フレイ・ヴァンシーなる魔歌なる少女――
ブレイブヴァスターなる魔剣を操る娘を確認。
どちらも、第一級魔物に認定し、対策を講じている」
以上、ザックス・ヴァーンフレア師による、ブルムヘル調停紙から抜粋。
のちに、ヴァーンフレア師は先のヨッツンヘイム魔殿の戦役にて、かのアズリエルに葬られ、
爾来、彼女たちの姿は誰も見ていない。
アルフレッド・ヴァーンフレア…
〜鏡向こうの君〜
「……変な夢を見た」
「そうですか。どんな夢です?」
「女の子が出てくるんだ。俺にそっくり、いや、どっちかっていうと、実妹にかな。
ナミの黒い版」
「ナル姉さんは元から黒いじゃないですか。お腹も」
「上手いこと言うな。いや、でもアッチは垢抜けてと言うか、
スパッとしたような、何かこう……空気みたいな、スカッとした感じがあるじゃん。
肉親の復讐をあっさり諦める、みたいな。
あぁいうのは、【蒼さ】な気がするんだ」
「青さ……」
「いや、未熟の青じゃなくて、【蒼さ】
――蒼穹(空)のように、懐が深く大らか過ぎて、誰も掴めない深遠みたいな、
でも【大らか】なんだ。
だが【黒さ】ってのは、アレだ。今言った、深海の奥底のような、堕ちる様な、【深遠】なんだよ」
「黒、深遠?」
「黒はすべての色を混ぜた、なんて台詞があるが、ありゃ間違いだ。
黒は『光色』の前では、かすんで灰になって、はいさようならだ。
黒の真の意味は、【無変】――何も変わらず、何も起こらず、ただ【停止】を意味するだけだ。
その黒に触れると、飲み込まれると言うよりは【感染】るんだ」
「うつる?」
「黒ってのは正負あれど、強大な力だからね。
……不思議の国のアリスってさ、アレ、見方によっちゃ、それだよね」
「アリスが?」
「だって、俺デズニー版が印象深いンだけど、女王に喧嘩売って、キノコ食って大きくなるだろう?
その辺――黒いぜ。少女の腹黒さというよりは、正義感から反転した、黒さって所か」
「兄さん、アリス嫌いなんですか?」
「いいや、大好きさ。俺、腹黒い女の子は好みだ。大抵、頭がいいから」
「そっちが理由ですか」
「純粋な子だって嫌いじゃない。そんな娘はたいてい、優しすぎる。
完全に純粋無垢で無邪気ってのは、普通に最悪なんだけどな」
「最悪なんですか」
「嗚呼、自分の過ちに気付かないし、下手をすると周囲も気付かない。いや気付けない。
でも着実に小さな世界を滅ぼしていく……
また話それたが、夢の中の娘は、そんな感じ――まさしく、アリスだった」
「アリス、金髪だったんですか?」
「いいや、翼が金色の燐粉してた。髪は黒――ハッ、翼は俺と対照的で『蝶の羽根』だったがな」
「……アレ? たしか――」
「そう、天使の翼は基本は、鳥類――羽根、羽毛で覆われたアレだが、あの娘のは『翅』だった」
「……兄さん、何ぼ〜っと?」
「いや、【翼】ってのは自由とか飛行とか――そう言う意味を持つけど、
裏意味には【逃避】ってのがあるんだ。何かから抜け出したい、投げ捨てたい欲求。
過去の俺はそれそのものだったんだけど――蝶の翼ってのは、何を意味してンだろうなぁ」
Alice & Alice
Till two Alice meets……She will play the chief character……A mirror
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