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鶴の恩返しの世界感をブチ壊されてはたまらない。と思う人は避難してください。すいません
思い込みの果てに
作:八十四歳まで生きる


むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがすんでいました。

お爺さんは、見渡すかぎり白い雪の積もる林のなかを進んでいた。
そこで、獲物は何とは言わないが、狩りをしているわけだ。
毎日、林の中で狩りをしていると、時々不思議な光景を目にすることがある。
今回に限っては、鶴だ。
鶴が何者かが仕掛けたのであろう、罠にかかっていた。
鶴は足と羽根を痛めており、身動きが取れなくなってしまっていた。
それを哀れに思ったお爺さんは、鶴の手当てを根気よく、数日の間行ったのである。
いつしか鶴は回復し、元気よく空へと飛び立って行った。

それからほんの数日がたったある日の夜、お爺さんとお婆さんの家に、鶴子と名乗る、それは美しい女が訪ねてきた。

女は、なにも言わずに織物をさせてくれ、といったそうだ。
お爺さんとお婆さんは、こんな雪の降る寒い季節に、若い女を一人追い返すのも可哀相だと、女の頼みを承諾した。

女はこうもいう。
織物をしているときの姿を見られるのは恥ずかしい。
だから、終わるまで部屋の中は覗かないでほしい。
それなら別に構わないが、と老夫婦。

日が昇り、目を覚ましたお爺さんは、カッタンコットンカッタンコットン・・・、という音を聞いていた。
鶴子は夜通し織物をしていたのだろうか?

そんななか、お婆さんは少しだけ不気味に感じていた。
そんなお婆さんの不安を感じ取ったのか、お爺さんがこんなことを言い出した。

もしかしたら先日の鶴の恩返しかもしれない。
名前も鶴子と鶴がつく。手当てのお礼にと織物をくれるのかもしれないよ。

もちろんお爺さんは冗談のつもりだった。
そうかもしれないわね。とお婆さんも言う。
とにかく朝飯だと、鶴子をしょうじを開けずに呼んでみた。
はい。と細く透き通る、美しい声が聞こえた。

朝飯の最中、お爺さんは鶴子に、何故私の家で織物をしているのか聞いてみた。
お爺さんは、今になってそんなことが気になった。
鶴子は恥ずかしそうに、裾を口元にあてながら、言った。

それは言えません。

一言残して、鶴子はまた部屋へと入っていった。
お爺さんとお婆さんは、しばらく鶴子の部屋のしょうじを見ていた。
どちらともなく声をかけ、二人顔を見合わせ、何故言えぬのかと話した。
理由はあるだろう。言えないのだから。
二人は様々な憶測を互いに言い合った。鶴子に聞こえぬ程度の声で。

だんなに家を追い出されでもしたのか、それとも借金でもあり逃げ出してきたのか、そもそも家族はいるのだろうか。
いくつかの可能性、だがやはり、二人は鶴の恩返しなのではないかと、どこかで思っていた。
馬鹿な話ではあるが、可能性がないわけではなかった。

お爺さんは、狩りに出掛けた。お爺さんが戻ってくるまでお婆さんは、あの不気味な女と一つ屋根の下二人きり。不安でないはずがない。
お人好しのお爺さんは大丈夫というが、お婆さんは違う。
むしろ鶴の恩返しのほうが怖いのである。
何故か、化け物だからだ。
鶴とはいえ、人に化けるいじょうは例外なく化け物である。
それならばむしろ、罪人流人のほうがマシであった。何故なら人間だからだ。
お婆さんは気が気でならなくなり、鶴子の部屋の前に立っていた。
織物をするカッタンコットンという音だけが響く。
その音はなにかを迫っているようであり、思い止まらせようとするものでもある。
お婆さんはただじっと、しょうじを見つめる。
開ける気など、まったくもってない。
そして数分、お婆さんにとってはもっと長いが、経った頃にふと、カッタンコットン、音がやんだ。
お婆さんはハッとした。その瞬間、しょうじを少し滑らせ、

お婆さん、どうかされましたか。

鶴子が言う。
鶴子はしょうじの隙間から、お婆さんを見るのである。鶴子の顔の半分が覗く。綺麗な顔をしている鶴子だが、お婆さんは不気味で仕方がなかった。
なんでもない、とお婆さんは言い、洗濯に向かった。

この日の晩である。
お爺さんが狩りから帰ると、カッタンコットン、音が聞こえてくる。
鶴子が不気味でしょうがない。
晩飯の後、鶴子が部屋に戻ったのを見計らい、お婆さんはお爺さんにきりだした。
お爺さんは平気だと言うが、お婆さんはダメなものはダメなのだ。

お婆さんは寝付けなかった。お爺さんはただの冗談だと言っていた。
人に化けるのは狐か狸ぐらいなもの、鶴は人になんか化けはしない。
そうはいうものの、嫌な汗がとまらなかった。
冷えているのに。
未だ、カッタンコットンと聞こえている。
そのときだ、鳥の鳴き声のような、甲高い音が聞こえた。
お婆さんは驚きのあまり、一瞬だけ呼吸ができなかった。
お婆さんはお爺さんを起こすと、今の聞いた音のことを話したが、聞き間違いと言うだけで取り合おうとしない。
そのときだ、また同じような音が聞こえた。
お爺さんは目を丸くし、お婆さんの方をみた。

二人はそーっと、音をたてないように、廊下をすすみ、鶴子の部屋の前まで来た。
カッタンコットン、まだ音は続いている。
鶴子が甲高い音を出したわけではなかろう、鶴が人に化けることはない、そう思っていても、気になるのが人間だ。
お爺さんはしょうじを少し開け、中を覗いてみた。
すると目が合った。
鶴子とお爺さんは、ちょうど鉢合わせた。
驚きのあまり後ろへひっくり返るお爺さん。
お婆さんは声も出せないようだ。
そんな二人を見ていた鶴子が言った。

見ないと約束をしたのに、なぜ見たのですか。

今までとは違い、低く唸るような声だった。
そのことにも驚いた二人は、床に頭をつけながら謝った。
それを見た鶴子は続けた。

なら、詫びに少しばかり銭を。

これはえらいことになったとお爺さん。お婆さんに銭を持って来させ、そのすべてを鶴子に手渡した。
しばらくして、恐る恐る頭をあげた。
だが、そこにはもう鶴子の姿はなかった。



この話を聞いたとき、なにを馬鹿な、と思った。青年は言う。

まず第一に、鶴は恩返しなどしない。
ましてや銭を要求するなど・・・馬鹿馬鹿しいにも程がある。
恩を仇で返したようなものではないか。
それに、女は自分を鶴の化身だとは一言も言っていない。爺婆の思い過ごしだ。
そう考えると、この話は一番大事に思える部分が抜けている。
何故織物をしている所を鶴子は見せなかったのだ。
見せたくない理由はなんだったのだ。

青年の話はもっともである。隣にいる女がいう。

知りたいのですか、あなた様は。

ああ、知りたいね。と青年は言う。
女はクスと笑うと、いいですよ。と部屋へ行き、戻って来た。

あなた様はこんなものがみたいのですか。

ん、どんなものだ。

酒がまわってきたであろう青年の頬は赤い。

あの爺婆は幸せだったのですよ。なにも知らず、ただ騙されただけのお人好し。
でも聞こえては居たんですよ。鶴がどうのこうのと。
だから利用しただけのこと。確かに私はなにもそれらしいことを言ってはおりませんが。

女は続ける。

鶴子は自分の荷物を見せたくなかったのですよ。なにも、着のみ着のままで雪山をさまよっていたわけではありませんからね。

ならなぜ、話のときにそう言わんのだ。

申し訳ありません。私もなにぶん口下手なもので。

かまわんさ。いいから、その見られたくない荷物とは、一体なんだ。

そう、青年が言うと、女は青年の背中にピタリとくっついてきた。
青年も年頃である、少し口元が緩む。
だが、次の一瞬、青年の頬に冷たいものが当てられた。
包丁である。

あなた様がみたいのなら仕方がありません。
これは既に何十という人間の血を吸っているのでございます。
人の好奇心というものは、本当に難儀なものでございます。


書き上げてから、いろいろと修正してたらつじつまがあわなくなった。最後の最後まで違和感が残り、納得できない感じ。まだまだ力が足りません。鶴子の事をもう少し書いたらよかったのかな、と。とりあえずこの話の基本である、人の色んな欲が、時には災いになるってことが伝われば幸いです。













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