第五十一回。エース対決
ヒーロVSキッコー。二体のライバルは、進化を経て再戦する。
両者睨み合い、ジッと相手を見つめる。微塵たりとも目線は離さない。気合でも負けてられないのだ。
そして、その気合はトレーナーであるタキとショウにも伝わる。
もう、我慢しきれない。二人のトレーナーは、スッと人差し指を互いのポケモンに向け、言葉を発する。
「ヒーロ! 火炎放射!!」
「キッコー。ハイドロポンプ」
重なる二人の声。
そして、その声は……その命令は……きちんと互いのポケモンに伝わり、同時に技を放つ。
互いに譲らない技のぶつかり合い。いつまで経っても決着のつくことの無いその技のぶつかり合いは相殺。しかし、相性のことも考えると、単純な技の威力はヒーロが勝っているようだ。
「まだ終わりじゃないよ! 体当たりだヒーロ!」
間合いを詰めるのはヒーロの得意技。相殺した爆風に身を隠し、圧倒的な反射速度で体当たりを繰り出す。
「いやいや甘いね。全く甘い。間合い詰めに自惚れちゃいかんぜ。間合いを詰められたら、その間合い詰めを打ち落としてやればいい。キッコー。メガトンパンチで応戦だ」
ヒーロの繰り出す体当たりを、メガトンパンチで応戦するキッコー。
いくら間合いを詰められても、いくら爆風で身を隠しても、いくら勢いのある攻撃だったとしても、打ち落としてしまえば意味が無い。キッコーなら全然余裕で出来る。ショウがそう信じているからこそのこの命令。そして、それは見事に当たる。
ヒーロの体当たりの勢いを増してでも打ち負けるキッコーのメガトンパンチ。身体的パワーではキッコーが勝る。
どちらも譲らぬ攻防戦。魂と魂のぶつかり合いに、会場は一番の盛り上がりを見せる。
「やっぱりショウは凄いや! 見事に打ち返されちゃった!」
「へっ。んなこと言ってる場合でも無かろうに」
ショウの冷静な判断から繰り出される命令に興奮するタキ。常に熱く勢いで命令するタキがショウのような冷静な命令に憧れるのは意外である。
「だね。でも、次はギャフンと言わせて見せる! ヒーロ! 翼を羽ばたかせ風起こし!」
フィールドに風を集め、突風を吹かせるヒーロ。しかし、キッコーは動じない。
「おいおい。俺のキッコーはそんな風じゃ……っておい! 打ち消せキッコー!」
ショウが初めて動じた。なんと、ヒーロは上に向かって火炎放射を吐いたのだ。
そして、その火炎放射は風によって散らばり、雨のようにフィールドに炎が降る。
それは、ヒーロにもダメージがあるように思えるが、多少の炎など、ヒーロにはビクともしない。これは意外と効果的な攻撃である……いや、攻撃ではないのかもしれない……
炎の雨を打ち消そうとするキッコー。だが、それこそがタキの狙い。
「よし! キッコーに体当たりだヒーロ!」
「なっ……これは不味いんじゃないか……」
炎の雨に気を取られるキッコーは隙だらけ。これはチャンスだとヒーロにもう一度体当たりを命令するタキ。
今なら距離も近く、隙がある。更に、持ち前の間合い詰めもある。その全てが揃った今。ヒーロの体当たりがクリーンヒット!
大きな体をしたキッコーが石の様に吹き飛ぶ。
「間合い詰めも役立つときは役立つでしょ?」
ニヤリとした顔でショウに言葉を放つタキ。
「まったく……タキがこんな効率いい攻撃してくるとは予想外だったぜ……予想以上の成長だな」
今のタキの攻撃を高く評価し、驚いているが、とても嬉しそうなショウ。
「うん。僕は僕のポケモンと共に成長してるよ。ポケモンが僕を成長させてくれる」
「お前らしい回答をどうもありがとう。さて、次は俺のターンといこうか!」
ショウはそう言うと、キッコーに甲羅へ閉じこもるようにと命令。そして、これは何処かで見た光景である。
「さて、俺は今から甲羅アタックをするぞ。ちゃんとかわせよ」
ショウは次の攻撃を宣言した上で、本当に甲羅アタックを仕掛けてきた。
「あまりなめない方がいいよ! かわせヒーロ!」
楽々とかわすヒーロ。
それを見て、ショウは満足顔。
「そりゃそうだな。なら、これはどうする」
甲羅に閉じこもったキッコーが回転を始めた。
そして、その回転の勢いで大きな体のキッコーが浮かぶ。そして、そのままの勢いで甲羅アタック。いや、スピンアタックでも言うべきであろうか。浮力により、浮いた甲羅が地面につく瞬間。甲羅は不規則にバウンドする。これを見切るのは難しい。
だが、反射神経に優れたヒーロ。かろうじてこれをかわす。
「これをかわすか! いいねえ。でも、こいつは無理だろうよ!」
ショウの自信も頷ける。
なんと、キッコーの隠れた甲羅の間から水が噴射されているのだ。回転しながら水が噴射。これはもともとのポテンシャルも高くないと出来ない。まさに、唯一無二の芸当である。
「さぁ、いくぜ。キッコー! 激流葬!」
これは流石のヒーロもかわすとが出来ない。攻撃がクリーンヒットする。
「よし! さっきの借りは返したぜタキ。でも、俺の攻撃は止まらねえけどな!」
また、激流葬の準備を始めるキッコー。
確かに、これに対する攻略法は全く浮かんでこない。だが、タキもヒーロにしか出来ない唯一無二の技があることを理解している。そして、それは今ここで使うべきだとも理解している。
「確かに凄い攻撃だよ。でも、僕は……ヒーロはそれでも負けない。諦めない! いくよ。キッコーの攻撃を止めてみせる!」
「はっ! やってみなタキ。タキが何をやろうとしてるかはまぁ分かる。でも、だからってここで引くのはタキに失礼だ。ヒーロに失礼だ。キッコーに失礼だ。そして、俺にも失礼だ」
キッコーの激流葬がヒーロを襲う。この唯一無二な攻撃に、ヒーロは耐える。水を受けても引かない。甲羅が近づくにつれ、水の勢いも増す。だが、それでも引かない。そして、甲羅がヒーロに触れるその瞬間。力強く甲羅を受け止めた。スピンの勢いも耐え殺し、名の通り、受け止めたのだ。
そう。これぞヒーロの唯一無二の技。その根性は、どのポケモンにも負けない。
「いいねえ……でも、まだあるんだろ? 見せてみろよヒーロの全てを!」
興奮状態のショウ。その顔は喜びつつもゾクッとしており、正にバトルに酔っている。
「うん。見せるよ。奥の奥まで出し切る! ヒーロ! 地球投げ!」
高い高い上空に飛び去るヒーロ。そして、地球を描き、急降下する。もう、見慣れたこの光景だが、初めて見た観客も、もう、何度も見た観客も、同じようにその美しい光景に目を奪われる。
だが、ショウはそんな美しい技を黙って見つめる。今のショウの心にはキッコーしかない。
「キッコー。やっぱりお前は最高だ。いいぜ」
ショウがそう呟くと同時に、ヒーロの地球投げが炸裂した。
会場はフィニッシュの瞬間を見たかのような大盛り上がりを見せる。
だが、ショウは自信満々な顔をしてタキに語りかけるのだ。
「なぁタキ。次の手は考えてるか? 俺は考えてる」
ショウの質問に驚いたタキが言葉を返そうと口を開いたその時だ。
「えっ……そんな!」
タキがショウの質問以上に驚く光景を目にした。なんと、地球投げを受けたはずのキッコーが立ち、仕掛けたはずのヒーロが沈んでいるのだ。
「そうか。出し切ったんだなヒーロ。いいぜ。お前の意地も俺にガツンと伝わった」
「ヒーロ……」
そう。ヒーロは全てを出し切ったのだ。そして、技を放った時点で力尽きた。
だが、そのヒーロの全てをキッコーが上回った。それが全てである。
そして、この結果を受けて、ジッとヒーロを見つめているタキ。
これにショウが話しかける。
「なんだタキ。ヒーロが心配か?」
しかし、タキは、心地良さそうな顔で首を横に振る。そして、ヒーロを見つめながら返事を返す。
「見てよヒーロの顔。とってもいい顔してる。こんな満足した顔のヒーロは初めて見たよ。楽しかったんだね。ヒーロは凄く楽しかったんだ。きっと、キッコーにありがとう。次は倒すからなって言ってるんだ。トレーナーとしてこれ程嬉しいことはないよね」
これにはショウの顔も緩み、まだバトル自体は終わっていないというのに、ガバッと肩を組む。
「やっぱりお前はタキだ。そして、俺のライバルだ。任せとけ。また次を作ってやる。次はあれだ。ポケモンマスター決定戦で決着だ。最高の舞台で最高のバトル。いいねえ。完璧だ」
既に今後を見つめているショウ。
それに対しタキは、元気良く首を縦に振った。
「リザードン戦闘不能!」
ヒーロとキッコーのエース対決。次はきっと、ポケモンマスター決定戦で……
最近、ヒーロの戦い方が同じになっているような気がする。マンネリにならなければいいのだが(汗)
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