第三回。お使いの帰り
タキは、偶然にもポケモンに出会うことなくトキワシティに着き、お使いを済ませた。
「ふう。終わった終わった。ショウのせいで無駄に疲れたよ全く」
タキはまだショウに対して怒っており、愚痴をこぼしながらマサラタウンへ向けて歩いていた。
そのときだ。草陰からタキの前に見たこともない生物が現れた。タキは、その生物を見た途端に勘づいた。今、自分の目の前にいる生物はポケモンなんじゃないかと。
タキはすかさずポケモン図鑑を取り出し、その生物を調べた。
タキの勘は当たっていた。その生物はコラッタというねずみポケモンで、身長は0,3m。体重は3,5kgとのこと。
「ねずみポケモン……そのまんまだけどこの世界にもねずみって言葉があるんだなぁ。不思議〜」
そんな言葉を思わず言ってしまったタキだが、コラッタが戦闘態勢に入ったのを見ると、ハッと我に返りこちらもポケモンをだす。
「そんなこと言ってる場合じゃないや! ポケモンにはポケモンで勝負だったよね。いけ! ヒーロ!」
タキはヒーロをだし、攻撃するよう命令した。しかし、ヒーロは戦おうとせず、タキの命令を無視している。
「どうしたヒーロ! ひっかいて弱らせるんだ!」
しつこく命令するタキにイライラしたのか、ヒーロはコラッタではなく、タキの顔をひっかいた。
「痛たたた! 何するんだよヒーロ! 僕じゃなくてあっち!」
コラッタを指差すタキだが、ヒーロは知らんぷりをしてタキの指差す方向を見ようともしない。
タキとヒーロがそんなやりとりをしていると、近くにある木の後ろから笑い声が響き渡った。
「誰だ!」
タキが笑い声がする方向を見る。
すると、木の後ろからヤンチャそうな男が現れた。
「おもしれえなぁ。トレーナーの命令も聞けない馬鹿なポケモンと、そのポケモンをコントロールすることも出来ない駄目トレーナーのコンビとは。なぁ。俺のコラッタにそこの馬鹿ポケモンを傷つけて欲しくなけりゃ、金を置いて今すぐ逃げな。駄目トレーナーでも、それくらいは出来るだろ?」
男のこの言葉に、タキが男を睨みつけた。
ヒーロの尻尾の先の炎が激しく燃え上がっている。きっと怒っているのだろう。
「残念だね。僕は金はおろか、どんな通貨単位かも知らないんだ。だから無理だと返答するね!」
「ふ〜ん。じゃあ、こらしめてやるしかないよなぁ。コラッタ! あの馬鹿ポケモンをボッコボコにしてやれ!」
男がコラッタに命令を下す。
「ヒーロ! 僕の命令を聞いてくれないなら、僕は命令なんてしない。ヒーロが抱いている怒りをそのままぶつけてくるんだ!」
タキがヒーロに声をかけると、ヒーロはタキの方を見て静かにコクリと頷き、コラッタに向かって突進していった。
突進してくるヒーロに向かってコラッタが飛び掛り、鋭い前歯から繰り出される噛みつきを仕掛ける。それをヒーロが振り払い、体当たりでコラッタを吹っ飛ばした。
体当たりで吹っ飛ばされたコラッタは体勢を立て直すも、衝撃でグラッとゆらつく。
そこを勝機と見たヒーロは、口の中にためた火の粉を吐き出し、コラッタにぶつけた。
これにはコラッタも耐えきれずその場に倒れた。勝負ありである。
「やった! 強いぞヒーロ!」
タキが拍手しながら喜ぶ。
「ちっ……覚えてろよ! コラッタが弱すぎたんだ。俺の負けじゃねえ!」
男はそう悪態をつくと、足早に逃げていった。
「あれが、駄目なトレーナーの見本だな。よく覚えとこう……それにしてもよくやったよヒーロ! お手柄お手柄!」
タキが笑顔でヒーロを迎える。ヒーロも「カゲェ」と元気よく鳴き、尻尾を揺らしながら笑顔でタキに近づいた。
しばらくの間、さっきまでのやりとりは嘘のように楽しそうにしていたタキとヒーロだが、ハッと我に返ったヒーロが、まだ認めたわけじゃないといった感じでムスッとする。
しかしタキは急に態度が変わったヒーロを見て、怒る様子も驚く様子もなく、ハハハと笑っている。
「いきなり仲良くなろうなんて都合よすぎるよね。でも、絶対に仲良くなってやるからな! さっきのヒーロの笑い顔、もう一回見たいしさ!」
タキは、ニッコリとヒーロに微笑みながらモンスターボールを取り出し「お疲れ様。ゆっくりお休み」と言うと、ヒーロをモンスターボールの中に戻した。
タキはモンスターボールの中にヒーロを戻した後、ショウやさっきの男に対し怒っていた姿が嘘のように、ルンルン気分でマサラタウンへと足を進めた。
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