『流星群に捧ぐ――』
黒い夜空に、光の線が走る。
――あ、あそこ。流れた。
――あっちあっち。あ、また。
子供達のざわめきは、しかし意外に小さい。
闇の帳に遮音されてしまったかのよう。
<流星群てね>
<彗星の置き土産なんだろ?>
さっき聞いたし、プラネタリウムの人だってそう言ってた。
少しむくれた声は、けれど初めて会ったときほど敵対的ではない。
今日一日で、ぼくたちはずいぶん馴染んだ。
まるで友達みたいに。
<じゃあこの流星群の母彗星の名前は覚えているかい?>
<ええと……アサト……ヨル!>
<違うよ>
思わず笑ってしまう。
<安里・堀田彗星。日本人二人が見つけた彗星だ>
<お前って、変なヤツ>
<変かな。何が>
<えらそう……っていうか>
そうだ、この間テレビで見た名探偵みたいだ。
いいね、名探偵。
<じゃあ君がワトソンだ>
<なんかつまんねー>
<助手は必要条件だよ、名探偵の。事件と同じくらい重要だ>
おしゃべりをしている間にも、星は流れる。
あんなに流れたら、空の星がなくなってしまう。
って、仕組みを知っていてもつい思う。
<いつかまた>
それはどちらが発した言葉か。
<またこうやって並んで流れ星を見たいね>
――目が、覚めた。
いや、眠っていなかったのかもしれない。
寝床に横になり、目を閉じていても、それは眠りではなく。
むしろ、死に近い。
そっと身を起こし、窓辺による。
カーテンを開ける。
住宅街、外灯の光。
それでも見える、流星雨。
ああ、今年も降る。
スピカの方角から、≪穀物の雨≫が――。
冷えた手で、目を覆う。
まぶたと掌の向こうに、流れ星が透けて見える……。