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きみの手をとる物語  作者: 百賀ゆずは
序章
1/42

『流星群に捧ぐ――』

 黒い夜空に、光の線が走る。


 ――あ、あそこ。流れた。

 ――あっちあっち。あ、また。


 子供達のざわめきは、しかし意外に小さい。

 闇の帳に遮音されてしまったかのよう。


<流星群てね>

<彗星の置き土産なんだろ?>


 さっき聞いたし、プラネタリウムの人だってそう言ってた。

 少しむくれた声は、けれど初めて会ったときほど敵対的ではない。

 今日一日で、ぼくたちはずいぶん馴染んだ。

 まるで友達みたいに。


<じゃあこの流星群の母彗星の名前は覚えているかい?>

<ええと……アサト……ヨル!>

<違うよ>

 思わず笑ってしまう。

<安里・堀田彗星。日本人二人が見つけた彗星だ>

<お前って、変なヤツ>

<変かな。何が>

<えらそう……っていうか>


 そうだ、この間テレビで見た名探偵みたいだ。


 いいね、名探偵。


<じゃあ君がワトソンだ>

<なんかつまんねー>

<助手は必要条件だよ、名探偵の。事件と同じくらい重要だ>


 おしゃべりをしている間にも、星は流れる。

 あんなに流れたら、空の星がなくなってしまう。

 って、仕組みを知っていてもつい思う。


<いつかまた>

 それはどちらが発した言葉か。

<またこうやって並んで流れ星を見たいね>






 ――目が、覚めた。

 いや、眠っていなかったのかもしれない。

 寝床に横になり、目を閉じていても、それは眠りではなく。

 むしろ、死に近い。


 そっと身を起こし、窓辺による。

 カーテンを開ける。

 住宅街、外灯の光。

 それでも見える、流星雨。


 ああ、今年も降る。

 スピカの方角から、≪穀物の雨≫が――。


 冷えた手で、目を覆う。


 まぶたと掌の向こうに、流れ星が透けて見える……。

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