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女神の箱庭I =カサナルセカイ= 作者:山吹 十

間章 覗く日常とそれぞれの思い

愛の秘薬 -Hidden Story-11-

「ふふふ、ついにできた……」

学園の図書室の禁書棚で発見した怪しい魔導書にあった魔法薬の精製に成功したクロエは一人で歓喜していた。
異様な程に鮮やかな桜色の液体が、ガラス瓶に詰められて30本ほど並んでいた。

「後は、これの効能を試すだけか」

材料や製法を書き連ねたメモを厳重に封印し、失敗作を全て焼却した。以前、失敗作を全てキクロに売ったことがあったのだが、その時は研究棟が半分吹き飛んだ。それ以来、キクロには渡らないようにしっかり処分している。

普段あまり街中を歩くことのない彼女だが、今日は目的地に向かって歩いている。それは、他人からすればスキップをしているようにも見えるかもしれない。
一般市民から恐れられている(主にキクロのせいで)ローブを風にたなびかせながら、彼女がやってきたのはギルド。

中に入るとまっすぐに金融窓口に向かった。

「(シェリーさん、ちょっと相談したいことが)」

シェリーに顔を近づけささやく。

「何?私に利益ある?」

クロエは頷く。

「ちょっと待ってね、カウンターの代理呼ぶから」

シェリーがこちらで雇った金融部の人間がやってくると二人で奥の部屋に入る。

「で、何?」

「ちょっと、実験をお願いしたくて」

「実験?」

「もちろんかなりもうけになる御思いますよ?」

「詳しく聞かせてもらうわ」

クロエは先ほど作り上げた液体を手渡す。

「何これ?ポーション?」

「ただのポーションではありません惚れ薬(ラヴ・ポーション)です」

「んんん?お金の匂いがするわね」

「効果は試してないのでわかりませんが、それなりの値段で売れるかと」

「なるほど、売って様子を見たいと」

「これを飲んだ男が、目の前にいた愛する女に告白した、みたいな内容が描かれてたので、たぶん目の前の相手に惚れる類かと」

「わかった、任せて。いくつ出せるの?」

「25ほどでいいですか?」

「充分よ」

動きがあったのは3日後だった。
動きというレベルではなかった。混乱だった。
その日クロエはいつもの会議室に呼び出された。

「シェリーが売ってた惚れ薬だけど、そのせいで街中でかなりやばいことになってます」

「あー、あのピンクのポーションそれだったのかー。1000ぐらい複製しちゃったよ」

カナデの言葉に固まる一同。

「……まあ1割はヨウが買って行ったらしいからいいとして、効果は2時間ほどで、『愛している相手に魅了状態になる』だったかな」

思った通りの効果でなかったので少し落ち込むクロエ。

「で、作ったのはクロエさんだね」

「え?はい、そうですけど。私がシェリーに渡したのは25本ですよ?」

「シェリーに渡すから……」

「で、ここにシェリーから没収した30本がある。ちなみに、いま、エンマが飲んでいるコーヒーに混ぜておいた」

「ごふっ!?」

コーヒーを吹き出すエンマ。

「ちなみ即効性らしいぞ」

「……シズネ」

エンマが魅了状態に入った。それはカナデの《解析》でも確認できた。

「確かに……効果ありそうだね」

「タロウがそれ自分に使ってシルヴィアに告白成功させてたけど」

「マジかよ」

「マジだよ」

ハルトもコーヒーに口をつける。

「あ、言い忘れてたけどハルトのとこにも入れたから」

「ぶふっ!?」

「なんだよ吹き出すなよきたねーな」

「何してくれんだよ、全く」

「あれ?あんまり変わんないな」

「ハルトの好きな人は?」

「そんなのスズネに決まっているだろう。それよりはやく会議を続けるぞ」

「「「「「「「「………………」」」」」」」」

一同沈黙。

「………ん?あれ!?」

動揺するハルト。

「偶然録音してしまった……」

「コラ!ヨウジ!その魔法珠をこっちに渡せ!」

「それではそれを水晶貨10枚で買いますね」

「あ、了解」

スズネから水晶貨を受け取り、魔法珠を手渡すヨウジ。

「って、なんでここにいるの!?」

「さて、なぜでしょう」

「でも、魅了状態でも普通に喋れるもんなのか」

「ハルトさんがおかしいんじゃないですか?」

「あ、そうそう言い忘れてたけど、全員のコーヒーに仕込んだから」

「「「「「お前いい加減にしろよ!」」」」」

全員から怒鳴られたが、笑っているエイダイ。

「で、カナデの好きな人は?オレか?」

「ん?私《魅了無効》持ってるから効かないよ?」

「そりゃ残念だ……シズネとクロエは放っておいて……お前らなんで効いてないんだ」

「たぶん現在進行形で好きな人いないからかと」

「ヨウジ、今気になってる子は?」

「いやーウチの部のトモミちゃんとかかわいいよね。刀好きだし……はっ!?」

「ヨウジには効いてると……あとは、いいや」

「自分からやっておいて、それはないでしょう」

「いや、キクロ(オマエ)の奴、聞くの怖いし。変な事言い出したらそれはそれで嫌だし、普通にカナデが好きとか言い出してもなんか嫌だし」

「私の扱いひどくないですか」

「あー、そういえばシオンにも飲ましたんだけど、アイツもいつもと変わらなかったぞ。カナデの話しかしなかった」

「シオンに勝手に変なもの飲まさないでくれる?」

カナデに殴られうずくまるエイダイ。
カナデ以外ほぼ使い物にならなくなったので、この事件は自然収束に任せることにしたという。
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